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第三章 2
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アリアス卿は媚を乗せた含み笑いをしながら近づいて来た。それを迎えるためにアストリットも立ち上がる。
殿方には手を差し出すのが由緒正しい令嬢の礼儀だ、というのを姉のフリーダから聞いた気がし、それを試してみた。
すると彼は大袈裟に身を屈め、宝石だらけでそれぞれの関節が一つずつ増えた手で、伸ばされた手を取ると、それを唇に持って行った。
アストリットは令嬢ぶったことを一瞬後悔し、男が手を放すまでじっと耐えた。
ギヨーム・アリアスの父は元老院の議長席に鎮座し、一部の高級政務官職を独占して自分の椅子を守っている男である。
『繁栄の恩恵は戦にあり』と議会で発言し、彼の政権独占に反発する民衆派議員たちの反撃を受けたことも過去にあった。それでもまだ悠々とその座についているのは、彼が没落農民から買い取った土地の生む財が、執務官たちに影響しているからだ。
その父を後ろ盾に息子ギヨーム自身も元老院に出入りしていたが、その傍若無人ぶりは父に勝るとも劣らないと有名だった。護衛の騎士の目つきが悪いとその顔に唾を吐きかけたり、風に舞った帽子を拾った騎士に『汚れた手で触るな』と鞭でその手を打ったという話もアストリットの耳に届いている。艶のある黒髪に、灰色の瞳は嵐の前の雲さながらに鈍く光を帯びていた。美男に入るほうであったが、素人よりも玄人の女を相手にしている方が多かった。
そんな狭量な男とミカが懇意にしていることが、どうにも解せない。
手を握られている時間が必要以上に長いと思われた頃、やっとアリアスは身を起こした。
「大尉殿が姫役とは、また今日は面白いことになりそうですな」
「姫……? それはどういう……」
「ああ、アリアス卿。すでにお出ででしたか。急な呼び出しでも時間通りにいらっしゃるとは。やはり闘志漲る、と言ったところですかな。久々の野戦ですからね。おお、これが噂の姫ですな」
アストリットの言葉は、続いて部屋に入って来たダフナート卿の快活な声に遮られた。彼はこの国一の貿易商の長男であった。商人特有の、人好きのしそうな仮面をいつも顔に乗せている男だ。ダフナートもアリアスと同じように手の甲にキスをして、二言三言世辞を並べてから、男友達と世間の噂話しを始めた。
続いてラモン卿が入室する。この男は農林省の官職に就いていた。先の二人よりもずっと大柄で、温和な目をしていた。挨拶のためにアストリットの手を取ったラモンのそれは、肉厚でごつごつと骨張っていたが、温かくさらりと乾いていた。
アストリットは、実直が滲み出るラモンの四角い体に、今頃きっと部下たちと剣の手合せをしているだろうレヴァンを思い出し、再び寂しさに襲われた。ラモンは他の二人の話に混ざらず、腕を胸の前で組み、彼らから近い壁に寄りかかってた。
それからさほど待たずにリューベンスブルグの未来の君主が姿を現すと、紳士三人は貴族らしく膝を折ってそれぞれ敬愛を表し、お決まりの愛想を並べた。ミカは唇の端を上げてそれを受け、アストリットに向かって短く言った。
「大尉殿、その修道女のようなひっつめ髪は解いたほうがいい。ラモン、手を貸してやれ」
「失礼致します」
拒否はミカの前に許されない。アストリットの後ろに回るラモンと一瞬視線が交わった。そこにある憐れみの色を彼女は拾った。琥珀色の髪がふわりと背に落ちる。
「さあ、我が戦士諸君。いざ戦場へ!」
ミカは声を張り、威勢良く革手袋の手をパンと合わせた。
腰に剣を下げたミカ、アリアス、ダフナート、ラモン、そして銃を肩に掛けた王室警備隊の馬に続き、アストリットを乗せた二輪馬車が、そして一番後ろには遠路を旅するような頑丈で粗末な箱馬車が付いて森の奥へ入って行く。
風のない暖かな昼下がりで、絶好の行楽日和だった。しかし、ミカの『戦場』と言う言葉がずっとアストリットの顔を曇らせていた。
一行が目的地に着くと、アストリットはラモンの付き添いで、空き地に立たされた。
そこは木を伐採されたあとの空間で、空き地を囲むようにぐるりと木々が立ち並び、丘の中腹にぽつんと森番小屋が建っている。
ラモンはそこで待つようにアストリットに言うと、少し離れた、ミカたちの待つ空き地の入り口へ戻ってしまう。彼女はミカの方を見るが、その顔は無表情だった。
「さあ、姫が逃げたぞ! 姫を捕らえるのだ! そして我々の剣から逃げ切れた者の命は助けてやろう!」
アリアスの声が森に響いた途端、馬車の扉が開かれ、粗末な服の男たちが次々と外に出て来た。その数は七人だった。彼らは自分たちがどこにいるのか伺うようにそれぞれに辺りを見回していたが、少し離れたところにいるアストリットを認めると、身を低くしてにじり寄って来た。そして突然、「おおおーー」と声を上げると、鉄砲水のごとく向かって来た。
彼女は自分の置かれた状況に混乱しながらも、自分に攻め寄る危険から逃れるために身を翻し、必死に走った。片手でスカートをたくし上げるが、柔らかな生地は脚に纏わり、思うように走れない。振り向いている余裕は無く、恐怖に追われてひたすら脚を動かし続けた。男たちの野卑な声は重なり、彼女の背に肉迫していた。
その時、脇の方から蹄を轟かせ、ミカの鹿毛がアストリットと男たちを遮るように割り込んで来た。
「手を! 早く!」
馬上から伸ばされたたミカの手を取ると、強い力で引き上げられた。アストリットがうまく横向きに鞍に収まると同時に、ミカは丘を目指して馬を走らせる。あっという間にその差は開き、丘の森番小屋に着いた時には、すでに追うことを諦めた男たちが肩で息をしながら立ち尽くしているのが高見から見えた。
「殿下、お見事でございました。無事に姫を救出されて何よりです」
小屋の影から一人の警備隊士が姿を現した。
「いや、まだ戦いはこれからだ。君の役目はわかっているな」
「おまかせください」
憲兵は肩の銃をかちゃりと音を立てて掛け直す。そしてミカはアストリットを一瞥すると、「それでは姫、あなたの戦士たちの活躍ぶりをとくとご覧ください!」声を張り、来たときと同じ勢いで丘を駆け下りて行った。
眼下では、アリアス卿が男たちの方へ麻袋を放り投げたところだった。その中から取り出した剣を全員が手にしたのを確認すると、アストリットの横にいた兵士が空に向かって一発放った。
「逃げろ! 逃げないとお前たちの命は無いぞ!」
アリアス卿が奇声を上げ、馬の手綱を強く引くと馬は後足で立ち上がった。今度は男たちが追われる番だった。
ばらばらと森の中へ男たちが逃げて行くのを見ながら、四人の戦士はしばらく空き地で円を描いて馬を走らせていた。
「何が始まるのですか」
胸騒ぎを抑えるように手を胸に当てて隣の憲兵に尋ねた。
「ご覧の通り、戦士と野人の戦いですよ。あなたは野人に捕らえられましたが、隙を見て逃げ出したのです。そこに王子様が助けに来た、という筋書きです。私は生き残った数少ない兵士で、追跡の野人から姫を守る役を仰せつかっております。これから野人と戦士の打ち合いが始まりますよ」
「それでは諸君、出陣だ!」
ミカが腰の剣を抜き、森の奥へ振りかざすと同時に一斉に四頭の馬が男たちを追って森の中へ飛び込んで行った。
森は静かになった。――時折聞こえてくる、アリアス卿とダフナートの高い歓声を除いては。
アストリットは落ち着かず、胸に手を当てたまま、ミカの消えた森の奥をじっと見おろしていた。
そして、しばらくすると男の一人が茂みから空地に飛び出した。続いてミカを乗せた鹿毛が。
馬が男に追いつくと、嘲笑するかのようにその周りをくるくる回った。男はいつでも攻撃出来るように剣を構え、体を低くしながら馬の動きに爪先を合わせていた。その頃には三人の戦士たちも森から出て来て、馬を止め、血に曇った剣を片手にその一騎打ちを見守っていた。
ふとミカの馬の足が止まる。男はその隙をついて再び逃げ出した。それを見たアストリットは思わず右手を伸ばし、一歩踏み出していた。
――いけない! 背中を見せては……!
男の最期だと直感した。ミカが馬上で薄く笑ったのが見えた気がした。男との距離を見ていたミカは、やがて馬の腹を蹴った。鬣《たてがみ》が風に踊り、上着の裾がはためく。その距離はみるみる縮まり、やがて通り過ぎ様に男の上に振りかざした剣が陽光に一瞬煌めいた。刃は地面に向かって斜めに空を切る。
その瞬間、眼下を望んでいたアストリットは目の端に、森の中から馬上に弓を構える男の動きを捉えた。弓の先はまっすぐミカの背に向けられている。誰もがミカに注目し、刺客に気がつく者はいない。
「殿下……」
彼女は素早く地面に座っている憲兵から銃を奪うと、刺客に狙いを定めて引き金を引いた。乾いた音が森に響き、木々の間から鳥が飛び立った。
――空砲!
幸運にも一命を取り留めた刺客は、未だ自分に向けられている銃口に気がつくと、ぱっと馬の首を返して逃げ出し、その姿は木の陰に消えた。
アストリットは、刺客を逃した悔しさからぞんざいに銃を憲兵に押し付けた。そして空地に再び目をやると、草の上には男がうつ伏せに倒れていた。
「勇敢な姫だ! ご自身参戦されるとは!」
ダフナートの言葉に、他二人の戦士がアストリットを讃えるように仰ぎ見て二度三度、血塗れた剣を空に突き上げた。ただ一人、ミカだけは刺客が逃げた森の奥を見ていたが、馬に拍車を入れ、アストリットのいる小屋まで駆け上って来た。
彼はすらりと馬から下りると、ゆっくりと近づいて来た。目の前に立つミカは、戦の興奮から頬をほんのり紅潮させ、軽く息を乱している。目をすがめると、おもむろに彼女の手を取った。
「姫、ご無事で何よりです」
「殿下、一体これはどういうことです! 私は姫などではありませんし、あの者たちの命を奪って……たとえ一国の王子と言えど許される行為ではありません! 立派な殺人ではありませんか!」
アストリットは手を引き抜き、振り払った。
「本気で臨まぬ遊びほど、無駄なものは無い」
アストリットを冷ややかに見下ろし、ミカは言い捨てた。
「遊び……、人の命をそのように……」
愕然と開かれた瞳が怒りで揺れる。激しい感情が喉に詰まり、アストリットが先を続けられずにいると、見上げたミカの顔が険しく歪んだ。
「愚か者! あれは囚人だ! ロレンツォの屋敷を襲った野盗どもだ。おまえが自ら捕らえたのをもう忘れたか! あやつらの悪事はロレンツォの件が初めてではないことくらいおまえも知っているだろう! おまえたち騎士団の裏をかいては何度も殺人と強奪を繰り返していた悪党だ!」
彼女は自分の耳を疑いながらも、ミカの脇から眼下に視線を移した。森から集められた男たちの死体は既に馬車に収められ、丘から下りた憲兵によって扉が閉められていた。そして、戦闘後の興奮に包まれた騎士たちが揚々と空地を引き上げて、木々の間に消えて行くところだった。アストリットは再び王子に鋭い眼差しを向ける。
「しかし、あの者たちはまず法廷にて裁かれるべきです!」
「この国の誰があのような者たちのために命乞いをするというのだ? 親ですら、あの野蛮人の血統が私の手で絶たれたことに感謝するだろう。裁判長が紙きれ一枚に死刑の判決を下すのも、私がここで手を下すも同じことだ」
「しかし、人の命はあのように……」
「アストリット・ローゼナウ」
ミカの声は鋭く、ぴしりと空《くう》を打った。
「おまえは誰に向かってそんな口を聞いているのか承知しているのだろうな」
我に返ったアストリットの顔は、小屋の前に咲いているスズランよりも白くなった。
ミカは彼女の腰に手を回し、抱き込むと顎を掴んで上を向かせた。
「この礼儀知らずの口は封じられるべきだ」
見開く目に、ミカの顔が映る。唇を重ねられると同時に、下唇をやや強く噛まれた小さな痛みで開いた唇の間から素早く潜り込んだミカの舌に、歯茎をなぞられ、舌を荒々しく絡められた。
顎の手は今や頬に添えられ、顔を背けることを許されなかった。またしても初めて侵される領域でアストリットの舌は怯え、ミカを避けるように逃げるが、それはすぐに捕まり、巻き取られ、歯を立てられる。
「んっ……んふ……」
強く抱きしめられている上、激しいキスに息苦しくなったアストリットは、思わず必死でミカの胸を押し返していた。その、恥じらいにしては異常なほどの抵抗に気がついたミカは、顔を離すと欲望に輝いた目でアストリットを見下ろした。そして、呼吸を整えながらこわごわと上げたエメラルドクリーンの眼差しに浮かんだものを読むと、すぐに口元を綻ばせた。
「そうか、初めてか。……おまえの父は随分過保護なのだな」
後ろ髪をすくわれるようにして再び引き寄せられると、唇が柔らかく押し付けられる。先の、ねじ伏せるようなキスとはまるで違ってそれはゆっくりと、優しい。上下の唇を交互に軽く食みながら舌先で輪郭をなぞる。緊張と理性ががゆるゆると解けて行く。
優しく押し付けられた唇が、何度も角度を変えてそっとアストリットを吸い上げる。舌は唇を潤す程度に触れ、長いこと繰り返された。激しく貪られた時にはその勢いにおののいたが、このような優しいキスが長く続くと、なぜかそれが物足りなく思える。物欲しいという気持ちが募り、うっとりと瞼を閉じたアストリットはミカの上着の胸を掴んだ。
もっと殿下に触れたい。触れられたい……。
そう思うと、おずおずと舌を差し出していた。そして、それがミカのに触れたとたん、相手のキスが一変した。
唇をこじ開けるようにして入って来た舌は獰猛にアストリットを捕らえ、ざらついた表面を強く擦り合わせた。ぞわりとうなじに淡い快感が駆け上がる。
初めて知る男の一部。こんなにも温かく、柔らかく、濡れている……。そしてその攻めるような動きは荒くともどこか切ない。
ミカは、アストリットの差し出した舌を擦る合間に、甘噛みし、唇で挟んで強く吸い、その甘いぬめりを味わい続けた。二つの舌は熱く、激しく、まるでそれ自体に意志があるかのようにお互いを求めて絡まり合った。アストリットは逆上せたように全身を火照らせながら、ミカの舌と唇の動きにただ陶酔した。
「ん……っふ……ぅ」
濡れた口内を掻き回される度に、アストリットは甘く鳴き、後頭部の髪を揉みながら、背中から尻を撫で這い回るミカの手の動きに吐息を漏らした。
「なかなか……上達するものだな」
やっと専属護衛を解放したミカもやはりほんのりと頬を染めながら、探るように瞳を覗き込んだ。
初めてだと言うのに、声まで出して求めてしまうなんて……殿下は私をふしだらな女だと呆れられたに違いない。
あまりの恥ずかしさから相手の視線を避けつつ、ふと頭に浮かんだ小さな反撃を試みた。
「さすがに殿下の乗馬ほどではありませんが……」
「なんだ、そんなくだらんことをまだ覚えていたのか」
ミカの、感情を押し殺したような声を聞くと、彼女は自分の発言を後悔すると同時に胸の内でミカに答えていた。
――忘れたことなど一度もありません。ただの一度も……。忘れることなど……。
そして、体に回されたミカの腕の力が今一度強まったのは、朝食の席と同様、うっかり漏らした側近らしからぬ発言への咎めだと理解した。
殿方には手を差し出すのが由緒正しい令嬢の礼儀だ、というのを姉のフリーダから聞いた気がし、それを試してみた。
すると彼は大袈裟に身を屈め、宝石だらけでそれぞれの関節が一つずつ増えた手で、伸ばされた手を取ると、それを唇に持って行った。
アストリットは令嬢ぶったことを一瞬後悔し、男が手を放すまでじっと耐えた。
ギヨーム・アリアスの父は元老院の議長席に鎮座し、一部の高級政務官職を独占して自分の椅子を守っている男である。
『繁栄の恩恵は戦にあり』と議会で発言し、彼の政権独占に反発する民衆派議員たちの反撃を受けたことも過去にあった。それでもまだ悠々とその座についているのは、彼が没落農民から買い取った土地の生む財が、執務官たちに影響しているからだ。
その父を後ろ盾に息子ギヨーム自身も元老院に出入りしていたが、その傍若無人ぶりは父に勝るとも劣らないと有名だった。護衛の騎士の目つきが悪いとその顔に唾を吐きかけたり、風に舞った帽子を拾った騎士に『汚れた手で触るな』と鞭でその手を打ったという話もアストリットの耳に届いている。艶のある黒髪に、灰色の瞳は嵐の前の雲さながらに鈍く光を帯びていた。美男に入るほうであったが、素人よりも玄人の女を相手にしている方が多かった。
そんな狭量な男とミカが懇意にしていることが、どうにも解せない。
手を握られている時間が必要以上に長いと思われた頃、やっとアリアスは身を起こした。
「大尉殿が姫役とは、また今日は面白いことになりそうですな」
「姫……? それはどういう……」
「ああ、アリアス卿。すでにお出ででしたか。急な呼び出しでも時間通りにいらっしゃるとは。やはり闘志漲る、と言ったところですかな。久々の野戦ですからね。おお、これが噂の姫ですな」
アストリットの言葉は、続いて部屋に入って来たダフナート卿の快活な声に遮られた。彼はこの国一の貿易商の長男であった。商人特有の、人好きのしそうな仮面をいつも顔に乗せている男だ。ダフナートもアリアスと同じように手の甲にキスをして、二言三言世辞を並べてから、男友達と世間の噂話しを始めた。
続いてラモン卿が入室する。この男は農林省の官職に就いていた。先の二人よりもずっと大柄で、温和な目をしていた。挨拶のためにアストリットの手を取ったラモンのそれは、肉厚でごつごつと骨張っていたが、温かくさらりと乾いていた。
アストリットは、実直が滲み出るラモンの四角い体に、今頃きっと部下たちと剣の手合せをしているだろうレヴァンを思い出し、再び寂しさに襲われた。ラモンは他の二人の話に混ざらず、腕を胸の前で組み、彼らから近い壁に寄りかかってた。
それからさほど待たずにリューベンスブルグの未来の君主が姿を現すと、紳士三人は貴族らしく膝を折ってそれぞれ敬愛を表し、お決まりの愛想を並べた。ミカは唇の端を上げてそれを受け、アストリットに向かって短く言った。
「大尉殿、その修道女のようなひっつめ髪は解いたほうがいい。ラモン、手を貸してやれ」
「失礼致します」
拒否はミカの前に許されない。アストリットの後ろに回るラモンと一瞬視線が交わった。そこにある憐れみの色を彼女は拾った。琥珀色の髪がふわりと背に落ちる。
「さあ、我が戦士諸君。いざ戦場へ!」
ミカは声を張り、威勢良く革手袋の手をパンと合わせた。
腰に剣を下げたミカ、アリアス、ダフナート、ラモン、そして銃を肩に掛けた王室警備隊の馬に続き、アストリットを乗せた二輪馬車が、そして一番後ろには遠路を旅するような頑丈で粗末な箱馬車が付いて森の奥へ入って行く。
風のない暖かな昼下がりで、絶好の行楽日和だった。しかし、ミカの『戦場』と言う言葉がずっとアストリットの顔を曇らせていた。
一行が目的地に着くと、アストリットはラモンの付き添いで、空き地に立たされた。
そこは木を伐採されたあとの空間で、空き地を囲むようにぐるりと木々が立ち並び、丘の中腹にぽつんと森番小屋が建っている。
ラモンはそこで待つようにアストリットに言うと、少し離れた、ミカたちの待つ空き地の入り口へ戻ってしまう。彼女はミカの方を見るが、その顔は無表情だった。
「さあ、姫が逃げたぞ! 姫を捕らえるのだ! そして我々の剣から逃げ切れた者の命は助けてやろう!」
アリアスの声が森に響いた途端、馬車の扉が開かれ、粗末な服の男たちが次々と外に出て来た。その数は七人だった。彼らは自分たちがどこにいるのか伺うようにそれぞれに辺りを見回していたが、少し離れたところにいるアストリットを認めると、身を低くしてにじり寄って来た。そして突然、「おおおーー」と声を上げると、鉄砲水のごとく向かって来た。
彼女は自分の置かれた状況に混乱しながらも、自分に攻め寄る危険から逃れるために身を翻し、必死に走った。片手でスカートをたくし上げるが、柔らかな生地は脚に纏わり、思うように走れない。振り向いている余裕は無く、恐怖に追われてひたすら脚を動かし続けた。男たちの野卑な声は重なり、彼女の背に肉迫していた。
その時、脇の方から蹄を轟かせ、ミカの鹿毛がアストリットと男たちを遮るように割り込んで来た。
「手を! 早く!」
馬上から伸ばされたたミカの手を取ると、強い力で引き上げられた。アストリットがうまく横向きに鞍に収まると同時に、ミカは丘を目指して馬を走らせる。あっという間にその差は開き、丘の森番小屋に着いた時には、すでに追うことを諦めた男たちが肩で息をしながら立ち尽くしているのが高見から見えた。
「殿下、お見事でございました。無事に姫を救出されて何よりです」
小屋の影から一人の警備隊士が姿を現した。
「いや、まだ戦いはこれからだ。君の役目はわかっているな」
「おまかせください」
憲兵は肩の銃をかちゃりと音を立てて掛け直す。そしてミカはアストリットを一瞥すると、「それでは姫、あなたの戦士たちの活躍ぶりをとくとご覧ください!」声を張り、来たときと同じ勢いで丘を駆け下りて行った。
眼下では、アリアス卿が男たちの方へ麻袋を放り投げたところだった。その中から取り出した剣を全員が手にしたのを確認すると、アストリットの横にいた兵士が空に向かって一発放った。
「逃げろ! 逃げないとお前たちの命は無いぞ!」
アリアス卿が奇声を上げ、馬の手綱を強く引くと馬は後足で立ち上がった。今度は男たちが追われる番だった。
ばらばらと森の中へ男たちが逃げて行くのを見ながら、四人の戦士はしばらく空き地で円を描いて馬を走らせていた。
「何が始まるのですか」
胸騒ぎを抑えるように手を胸に当てて隣の憲兵に尋ねた。
「ご覧の通り、戦士と野人の戦いですよ。あなたは野人に捕らえられましたが、隙を見て逃げ出したのです。そこに王子様が助けに来た、という筋書きです。私は生き残った数少ない兵士で、追跡の野人から姫を守る役を仰せつかっております。これから野人と戦士の打ち合いが始まりますよ」
「それでは諸君、出陣だ!」
ミカが腰の剣を抜き、森の奥へ振りかざすと同時に一斉に四頭の馬が男たちを追って森の中へ飛び込んで行った。
森は静かになった。――時折聞こえてくる、アリアス卿とダフナートの高い歓声を除いては。
アストリットは落ち着かず、胸に手を当てたまま、ミカの消えた森の奥をじっと見おろしていた。
そして、しばらくすると男の一人が茂みから空地に飛び出した。続いてミカを乗せた鹿毛が。
馬が男に追いつくと、嘲笑するかのようにその周りをくるくる回った。男はいつでも攻撃出来るように剣を構え、体を低くしながら馬の動きに爪先を合わせていた。その頃には三人の戦士たちも森から出て来て、馬を止め、血に曇った剣を片手にその一騎打ちを見守っていた。
ふとミカの馬の足が止まる。男はその隙をついて再び逃げ出した。それを見たアストリットは思わず右手を伸ばし、一歩踏み出していた。
――いけない! 背中を見せては……!
男の最期だと直感した。ミカが馬上で薄く笑ったのが見えた気がした。男との距離を見ていたミカは、やがて馬の腹を蹴った。鬣《たてがみ》が風に踊り、上着の裾がはためく。その距離はみるみる縮まり、やがて通り過ぎ様に男の上に振りかざした剣が陽光に一瞬煌めいた。刃は地面に向かって斜めに空を切る。
その瞬間、眼下を望んでいたアストリットは目の端に、森の中から馬上に弓を構える男の動きを捉えた。弓の先はまっすぐミカの背に向けられている。誰もがミカに注目し、刺客に気がつく者はいない。
「殿下……」
彼女は素早く地面に座っている憲兵から銃を奪うと、刺客に狙いを定めて引き金を引いた。乾いた音が森に響き、木々の間から鳥が飛び立った。
――空砲!
幸運にも一命を取り留めた刺客は、未だ自分に向けられている銃口に気がつくと、ぱっと馬の首を返して逃げ出し、その姿は木の陰に消えた。
アストリットは、刺客を逃した悔しさからぞんざいに銃を憲兵に押し付けた。そして空地に再び目をやると、草の上には男がうつ伏せに倒れていた。
「勇敢な姫だ! ご自身参戦されるとは!」
ダフナートの言葉に、他二人の戦士がアストリットを讃えるように仰ぎ見て二度三度、血塗れた剣を空に突き上げた。ただ一人、ミカだけは刺客が逃げた森の奥を見ていたが、馬に拍車を入れ、アストリットのいる小屋まで駆け上って来た。
彼はすらりと馬から下りると、ゆっくりと近づいて来た。目の前に立つミカは、戦の興奮から頬をほんのり紅潮させ、軽く息を乱している。目をすがめると、おもむろに彼女の手を取った。
「姫、ご無事で何よりです」
「殿下、一体これはどういうことです! 私は姫などではありませんし、あの者たちの命を奪って……たとえ一国の王子と言えど許される行為ではありません! 立派な殺人ではありませんか!」
アストリットは手を引き抜き、振り払った。
「本気で臨まぬ遊びほど、無駄なものは無い」
アストリットを冷ややかに見下ろし、ミカは言い捨てた。
「遊び……、人の命をそのように……」
愕然と開かれた瞳が怒りで揺れる。激しい感情が喉に詰まり、アストリットが先を続けられずにいると、見上げたミカの顔が険しく歪んだ。
「愚か者! あれは囚人だ! ロレンツォの屋敷を襲った野盗どもだ。おまえが自ら捕らえたのをもう忘れたか! あやつらの悪事はロレンツォの件が初めてではないことくらいおまえも知っているだろう! おまえたち騎士団の裏をかいては何度も殺人と強奪を繰り返していた悪党だ!」
彼女は自分の耳を疑いながらも、ミカの脇から眼下に視線を移した。森から集められた男たちの死体は既に馬車に収められ、丘から下りた憲兵によって扉が閉められていた。そして、戦闘後の興奮に包まれた騎士たちが揚々と空地を引き上げて、木々の間に消えて行くところだった。アストリットは再び王子に鋭い眼差しを向ける。
「しかし、あの者たちはまず法廷にて裁かれるべきです!」
「この国の誰があのような者たちのために命乞いをするというのだ? 親ですら、あの野蛮人の血統が私の手で絶たれたことに感謝するだろう。裁判長が紙きれ一枚に死刑の判決を下すのも、私がここで手を下すも同じことだ」
「しかし、人の命はあのように……」
「アストリット・ローゼナウ」
ミカの声は鋭く、ぴしりと空《くう》を打った。
「おまえは誰に向かってそんな口を聞いているのか承知しているのだろうな」
我に返ったアストリットの顔は、小屋の前に咲いているスズランよりも白くなった。
ミカは彼女の腰に手を回し、抱き込むと顎を掴んで上を向かせた。
「この礼儀知らずの口は封じられるべきだ」
見開く目に、ミカの顔が映る。唇を重ねられると同時に、下唇をやや強く噛まれた小さな痛みで開いた唇の間から素早く潜り込んだミカの舌に、歯茎をなぞられ、舌を荒々しく絡められた。
顎の手は今や頬に添えられ、顔を背けることを許されなかった。またしても初めて侵される領域でアストリットの舌は怯え、ミカを避けるように逃げるが、それはすぐに捕まり、巻き取られ、歯を立てられる。
「んっ……んふ……」
強く抱きしめられている上、激しいキスに息苦しくなったアストリットは、思わず必死でミカの胸を押し返していた。その、恥じらいにしては異常なほどの抵抗に気がついたミカは、顔を離すと欲望に輝いた目でアストリットを見下ろした。そして、呼吸を整えながらこわごわと上げたエメラルドクリーンの眼差しに浮かんだものを読むと、すぐに口元を綻ばせた。
「そうか、初めてか。……おまえの父は随分過保護なのだな」
後ろ髪をすくわれるようにして再び引き寄せられると、唇が柔らかく押し付けられる。先の、ねじ伏せるようなキスとはまるで違ってそれはゆっくりと、優しい。上下の唇を交互に軽く食みながら舌先で輪郭をなぞる。緊張と理性ががゆるゆると解けて行く。
優しく押し付けられた唇が、何度も角度を変えてそっとアストリットを吸い上げる。舌は唇を潤す程度に触れ、長いこと繰り返された。激しく貪られた時にはその勢いにおののいたが、このような優しいキスが長く続くと、なぜかそれが物足りなく思える。物欲しいという気持ちが募り、うっとりと瞼を閉じたアストリットはミカの上着の胸を掴んだ。
もっと殿下に触れたい。触れられたい……。
そう思うと、おずおずと舌を差し出していた。そして、それがミカのに触れたとたん、相手のキスが一変した。
唇をこじ開けるようにして入って来た舌は獰猛にアストリットを捕らえ、ざらついた表面を強く擦り合わせた。ぞわりとうなじに淡い快感が駆け上がる。
初めて知る男の一部。こんなにも温かく、柔らかく、濡れている……。そしてその攻めるような動きは荒くともどこか切ない。
ミカは、アストリットの差し出した舌を擦る合間に、甘噛みし、唇で挟んで強く吸い、その甘いぬめりを味わい続けた。二つの舌は熱く、激しく、まるでそれ自体に意志があるかのようにお互いを求めて絡まり合った。アストリットは逆上せたように全身を火照らせながら、ミカの舌と唇の動きにただ陶酔した。
「ん……っふ……ぅ」
濡れた口内を掻き回される度に、アストリットは甘く鳴き、後頭部の髪を揉みながら、背中から尻を撫で這い回るミカの手の動きに吐息を漏らした。
「なかなか……上達するものだな」
やっと専属護衛を解放したミカもやはりほんのりと頬を染めながら、探るように瞳を覗き込んだ。
初めてだと言うのに、声まで出して求めてしまうなんて……殿下は私をふしだらな女だと呆れられたに違いない。
あまりの恥ずかしさから相手の視線を避けつつ、ふと頭に浮かんだ小さな反撃を試みた。
「さすがに殿下の乗馬ほどではありませんが……」
「なんだ、そんなくだらんことをまだ覚えていたのか」
ミカの、感情を押し殺したような声を聞くと、彼女は自分の発言を後悔すると同時に胸の内でミカに答えていた。
――忘れたことなど一度もありません。ただの一度も……。忘れることなど……。
そして、体に回されたミカの腕の力が今一度強まったのは、朝食の席と同様、うっかり漏らした側近らしからぬ発言への咎めだと理解した。
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