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第四章 3
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ミカの革手袋に共通するのは、その美しい手の形を際立たせるようなすっきりとした型だ。そして、彼は決して連日で同じものを着用しない。始めこそ、その数と、微妙に違う色や控えめでもいちいち繊細な装飾に驚いていたアストリットだが、その多彩なコレクションにも慣れた頃だった。
それと同じくに昼食後――それはミカにとって朝食――に唐突に発せられた「散歩に行く」という言葉にも慌てること無く、瞬時に殿下のその”思いつき”に最適な段取りを立てることをすっかり心得ていた。
とうに食事を終えていたアストリットは顔を上げると、食堂の隅に直立していた憲兵の一人に合図した。彼はこの敷地内を特によく知り尽くしていたので、自分と彼とでミカの供をしようと思った。しかし、その気配を先に読んだのか、ミカは自分たちの方へ歩みかけた憲兵を眼差しだけで制してアストリットに向き直り、「供はおまえだけだ」と短く言った。
久々に自分に向けられた凛とした瞳とその声に、アストリットは一瞬自分を見失い、狼狽えたが、やっと「はい……」と不器用に頷いた時には、ミカは既に席を立っていた。
珍しく風のない暑い午後だった。
湖のほとりを歩いていた二人は水浴びをしている三羽の白鳥に近づいた。
ミカはしばらくそこに佇んでいた。彼の今日の姿は、白麻のシャツと渋みのある杏色の細ズボンで、手袋は深い燕脂《えんじ》色である。
その隣のアストリットは、乳白色の薄い生地が何層にも重なった軽やかなスカートに、胸下で切り替えの入ったシンプルなドレス、その上に丈の短い透かし編みの黒の上着を合わせていた。白鳥が水面に顔を出す度に背に弾け、つるつると転がり落ちる水玉が宝石のようだ。
やがて二人はそこを離れると、木陰を選びながらりんご園に入り、木々の間の小道を進んで行った。
深緑の葉の合間にまだ残った白い花が覗いており、微かに甘い香りを漂わせている。緑の絨毯の上にはところどころにモグラの作った塚が連なり、熱心に絹の短靴の先でそれを一つずつ踏み固めていたミカは、そのうちふと顔を上げて言った。
「モグラのやつ、『うわ、道が無くなってる』なんて思うかもしれないな」
王子には珍しい、その少年のように可愛らしい物言いに思わずアストリットは微笑んだ。
「そうですね。掘られた穴は通り道と同時に食料捕獲の罠ですから、餌を得るためにまた掘らなくてはいけません。モグラにとっては重労働でしょう……」
ふと、彼女の脳裏に土に鍬を入れる小作人の姿がよぎった。
「なんだ、モグラの生態に詳しいな」
アストリットの言葉に罪の意識が芽生えたかはわからないが、ミカは柄を壊すのを止め、再び並んで歩き始めた。
「巡回の途中で、畑から帰って来た小作人から聞いたのです。彼らもまた、少しでも多く食べるために毎日畑を耕し続けるのです……」
勘のいいミカは、彼女がもはやモグラについて話したいのではないことを悟り、もともとのんびりとした足取りはさらに緩やかになった。
「そして、他の者のためにも身を削って耕し続けなければいけないのです」
殿下と、二人きり――アストリットはずっと気にしていたことをついに口にしてみた。慎重に。今度は口を封じられないように。
「殿下に伺いたいことがあるのですが」
「なんだ」
ミカは横目でアストリットを見下ろした。
「殿下に同伴した楽団や舞踏家たちには、もちろん報酬がもたらされるわけですが……」
アストリットは、時折梢に隠れてはまた現れる、小道の先を睨んだまま続けた。
「それは国費から支払われるのですよね」
「もちろんそうだ」
「それらの支出を抑えることで、下層階級の人々の暮らしが少しでも楽になるとお考えにはなりませんか」
「私の散財によって彼らが飢えることになる、と言う意味か」
「いえ……、そ、そのような……。殿下の行為そのものというより、今の憲法が上層階級を太らせているだけだと……。今の憲法には秩序と誠意が欠けております……」
「犬に金の御殿を与えたところで犬は犬だ」
「それはどういう意味ですか」
「頭のよい大尉殿なら私が説明せずともお分かりでは」
アストリットは正面から振り下ろされた剣を避けるのではなく、真っ向から受けるタイプであった。そして相手が振りかざす剣を止めない限り、彼女も攻撃の手を緩めずに返し続けるのが礼儀だと思っていた。
彼女は拳をぎり、と握りしめた。そして声を出来るだけ抑えて言った。
「憲法が新しくなったところで彼らの生活が変わることは決してない、ということですか」
「さらに付け加えさせてもらうと、犬は一日二度も食事にありつければ贅沢だ。飢えには慣れている。そして、やつらには『主人』が必要なのだよ」
アストリットは自分の足下の氷が溶け始め、細かい亀裂が入っていることに気がつかなければいけなかった。自分の言葉の礫がさらに亀裂を増やしていたことに。
「その主人とは、貴族階級の者と?」
「彼らが金をばらまくのではないか」
「それはもともとはと言えば、農民たちのものです。農民たちから搾り取ったものを少しばかり市場に流し、それで誤摩化しているのです。しかしそれだけでは十分とは言えません!」
「土壌は国のものだ。そこで作物を作り、金に替え、領主に収め、領主は国に収める。それが理にかなっていないとでもいうのか」
「はぐらかさないでください! 殿下は私の言わんとすることが十分お分かりのはず。王族は真実から目を背けるのですか。国民を守れない国に繁栄などありえません!」
ミカは足を止めると、アストリットに向き直った。その顔は薄く笑ってさえ見えた。そしてその瞬間、アストリットは今までのミカの応対は自分を罠に陥れるためのものだったと気がついた。だが、すでに遅かった。気がつけば、足下の氷は割れていた。
「随分な言葉だな。しかし、それは自分の墓碑にでも刻むことだ、アストリット・ローゼナウ。わからないようなら教えてやる。戦にてお前たち騎士団を先導するのは誰だ。国王と私と、ヨシュアだ。万万が一、敵が戦場から我が国への道を我々の兵の血で染め上げ侵略しよう時、誰がリューベンスブルグを救える。国王と私と、ヨシュアの首だ。おまえに一体何が出来ると言うのだ。おまえの首で誰が救える。おまえの首を誰が欲しがる。大地の肥やしになっても、それ以上の価値はない。そのことを普段から肝に銘じ、黙って税を払う国民の方がおまえより遥かにも賢しい。犬は主人を知っている。しかし、帝国騎士団のおまえの口からそんなことを聞くとはな……おまえは犬以下だ。恥を知れ!」
激しい剣幕に気圧され、彼女は今来た道を一歩二歩と後ずさった。一方のミカは、またしてもアストリットに罰則を課す権利を手に入れたことに満足し、心中でほくそ笑みながら彼女の方へ一歩近づいた。
その時、アストリットは目の端にミカの背後、さほど遠くない木の陰にきらりと小さな光を捕らえた。
やにわに彼女は、今作ったミカとの距離を再び縮め――ほとんど体に隙間が無くなるほど――両手でミカの右手を取ると、自分の胸に押し付けた。
「殿下、先導を行く殿下の横に並ぶのは私です。私がこの命をかけて殿下のお命をお守り致します。殿下を敵の手に渡すことなど致しません」
アストリットの言葉と自分を見上げるその真摯な眼差しに、ミカは一瞬、瞬きを忘れた。
そして、さらにアストリットが視線を外すこと無く左手を自分の方へ伸ばし、首に絡み付けた時、その瞳は驚きで見開いた。
今まで背中の毛を逆立て、小さな牙を剥いていた子猫が怯て離れて行ったかと思えば、突然喉を鳴らし始める。そしてあろうことか陳腐な女の媚で懐柔しようと体をすりつけている。
しかし、ミカの驚愕はそこで終わりではなかった。彼女は身をさらに擦り寄せ、耳の下でこうも囁いた。
「殿下……スカートの中に手を忍ばせてください……右腿に触れて……おねがい……します」
ミカの喉がこくりと鳴る。乳房を収めた手に、跳ねる鼓動が伝わった。彼はその手で、今すぐ自分とアストリットを隔てる邪魔な衣装を引き裂きたい衝動を抑えながらも言葉に従い、下ろしていく。そして、ゆっくりとスカートをたくし上げると器用にその中へ、魅惑の園へ向かって手を潜り込ませた。
右手は依然胸の上でアストリットの手に包まれていたが、すでに乳房には、その形を変えるか変えないかのたおやかな愛撫が加えられていた。その動きのいちいちに、無意識にアストリットは悩ましげな吐息を零していた。
形のよい鼻の先がアストリットの首筋を上下に往復し、くすぐるのと、途絶えることの無い胸への愛撫、想像以上の巧みさで肌をじわじわと行きつ戻りつ、腿を這い上がって来た手の動きに、彼女は細かく全身を震わせた。
手が短剣の上を過ぎ、その先の微かな毛にあわや手袋の先がかすった時、アストリットの喘ぎに混じった甘い声がミカの耳たぶを撫でた。刹那、思わず彼は乳房を弄る指に力を込めた。重なったアストリットの指が甲に食い込む。
「ぁんっ…………、で……殿……下、行き過ぎ、です……。短剣を……抜いて、私にください……。体の影に、なるように……」
何か聞き間違えたのでは、とでもいうようにミカの全ての動きがぴたりと止まる。
「短剣?」
「っ……あ、はい……」
ミカの呟く唇が彼女の首筋を撫でると、何かに耐えるように彼女は息を殺して額を彼の胸に押し当てた。王子の戸惑いを感じたのか、アストリットは真横にある顔を覗き込み、「早く……」と囁いた。
その目元のほんのりと染まった潤んだ瞳に見つめられたとたん、ミカの全身の血液が体の中心に一気に集まるようであった。それでも促されるままに彼は器用に短剣を鞘から抜き、自分の手に添えられていた彼女の右手近くへ滑らせた。
それをミカの手から奪い、彼の盾になるようにアストリットがひらりと身を翻したのと、短剣を放った一連の動きはほぼ同時であった。
剣はゆうに木を四本は過ぎ、五本目の幹に突き刺さった。
「殿下はこの場に」
アストリットは通る声で短く言い残して短剣の刺さった木まで走って行くと、武器を抜いてから辺りを仔細に調べ始めた。
「確かに、何かが光ったのを見た気がしたのに……」
口の中でひとりごち、彼女は短剣を鞘に納めた。その時、後ろから近づいて来たミカの声が届いた。
「おまえの早とちりか? しかし唯一の武器を手放して本当に刺客がいれば、どうするつもりだったのだ?」
半ば呆れ顔の主人に、彼女は自信ありげに口角を上げた。
「応援を呼ぶつもりでした。口笛を吹けば馬に乗った憲兵たちがすぐに駆けつけてくることになっております。その間は、落ちた枝でも、石でも武器になります。私は、自分で言うのもなんですが、東方の伝統武術にも心得がありますので」
「それは頼もしい」
ミカの白けた声にも気がつかない様子で、アストリットはまだ木の後ろを覗いている。
「しかし、私が目にしたのはなんだったのでしょう……」
梢を仰ぎ見ながら、一歩踏み出したアストリットが「あっ」と小さく叫んだ瞬間、その姿がミカの前からこつ然と消えた。――と思えば、すぐに足下から声が上がる。
「な……、なんだってこんなところに穴が……」
胸まですっかり穴に隠れたアストリットは明らかに腑に落ちない様子できょろきょろと周りを見回している。有能な護衛のその慌てぶりを見たミカは、笑いを隠し得ない。朗らかにははは、と声を上げて笑った後、やや落ち着きを取り戻して言った。
「散々この辺りを視察された大尉殿がこの穴の存在に気がつかれなかったと? それとも、それは私を退屈させないための、体を張ったご冗談か」
「体を張って殿下のお命を守りしますが、冗談で体を張るほど気の利いた護衛ではありません!」
「なるほど」
妙に納得しながら二度三度と頷くミカを見上げ、アストリットは頬を染めて懇願した。
「あの……、申し訳ありませんが、お手を貸していただけないでしょうか。この深さでは一人で出るには無理がありまして……」
「ああ、すまない。そこが大尉殿には居心地がいいのかと思ってしまった」
そんなふうに決して思っていないのは、まだ収まらぬ低い笑いで震える声で明白だった。それでも彼は優美な長い体をやや屈め、伸ばされたアストリットの手を取ると、護衛の体を軽々と穴から引っ張り出した。土壁を蹴った勢いもあり、彼女の体はミカの胸に自然と飛び込む形になった。
ミカは相手の腰にしっかりと片手を回し、もう片方を枝の方へ伸ばした。
「おまえが見たのは、これに反射した光だ」
アストリットも背を逸らすように緑葉の間を仰ぎ、その指先に捕らえられたものを見た。それは細い糸の先に巻き付けられたガラスの破片だった。
「これは一体?」
「狩りの供をするおまえが知らんのか? これはイノシシや鹿の罠だ。ここに獲物が落ちれば一発で息の根を止められる。弾の節約になるだろう。まだ幾つかあるが、穴の場所に人が落ちぬようにガラスを枝からぶら下げて印にしているのだ。しかし……あまり意味がなかったようだが……」
くっくと忍び笑いが再びミカの喉元で湧く。
「そんな……! 森の中でしたらまだしも、まさか私有地に罠があるとは……」
アストリットはミカの腕の中で恥ずかしさに身を縮込ませて言い訳をしたが、彼は罠にかかった獲物に夢中で彼女の声など耳に入らないようだった。
「しかし……。今日はまた珍しいイノシシが罠にかかった」
「え? どこですか」
拘束されたまま肩越しに後ろを振り返り、右へ左へ目を泳がせ”獲物”を探す。しかし、そこには梢の間から射し込む幾筋かの光と、葉擦れの音さえしない静寂が漂うだけだ。
「肉付きも申し分無いようだ……匂いもいい」
喉元に顔を埋めながら尻を揉み始めたミカの手つきで、その”獲物”が自分であることにやっと気がつく。アストリットは慌ててもがき始めた。
「で……、殿下! 私はイノシシではありません!」
「きーきーうるさいぞイノシシ。食われないための最後のあがきだな」
「殿下! ご冗談はお止め……お離しください……! それに、私など……美味しくありません!!」
抱かれたまま一歩また一歩と押し寄られ、背が木の固い皮に触れる。ミカの胸を押し返していた両手首を片手で簡単に取られ、頭上で幹に縫い付けられる。
「味見は何度かしたが、非常に美味だった。その点は保証しよう」
今にも舌なめずりをしそうな妖しい笑みを浮かべてミカに見据えられると、抵抗する気持ちが一気に削がれ、代わりに淡い期待がふつふつと胸をくすぐる。どうしてそうなるのかわからない。それでも、掴まれた手首が拾う手袋の感触が、既に肌の上を這い回っているのだ。
「そもそもおまえが私を煽ったのではないか。誘った女に恥をかかせるほど私は野暮な男ではないつもりだ」
「ご、誤解です……! 私は刺客を油断させようと……」
必死で真意を訴えても、相手の方はそんなことに全く頓着する様子は無く、さらにぐいっと体を密着させてくる。
「まあ、それはどうでもよい。そうだな、捕まったイノシシはどうなるか知っているか……まず皮を剥いで……」
ミカが片手だけで器用に上着のレースのくるみ釦を外し始めるとアストリットは身悶え、指の動きを阻害するのに胸を左右に揺らした。
「どうか……お願いです、せめて……どこか人目に忍ぶ場所で……ここではいつ誰が来るとも……」
ついに諦め、間近にあるミカのやや濃さを増した薄青の瞳を見つめた。
ミカの革手袋に共通するのは、その美しい手の形を際立たせるようなすっきりとした型だ。そして、彼は決して連日で同じものを着用しない。始めこそ、その数と、微妙に違う色や控えめでもいちいち繊細な装飾に驚いていたアストリットだが、その多彩なコレクションにも慣れた頃だった。
それと同じくに昼食後――それはミカにとって朝食――に唐突に発せられた「散歩に行く」という言葉にも慌てること無く、瞬時に殿下のその”思いつき”に最適な段取りを立てることをすっかり心得ていた。
とうに食事を終えていたアストリットは顔を上げると、食堂の隅に直立していた憲兵の一人に合図した。彼はこの敷地内を特によく知り尽くしていたので、自分と彼とでミカの供をしようと思った。しかし、その気配を先に読んだのか、ミカは自分たちの方へ歩みかけた憲兵を眼差しだけで制してアストリットに向き直り、「供はおまえだけだ」と短く言った。
久々に自分に向けられた凛とした瞳とその声に、アストリットは一瞬自分を見失い、狼狽えたが、やっと「はい……」と不器用に頷いた時には、ミカは既に席を立っていた。
珍しく風のない暑い午後だった。
湖のほとりを歩いていた二人は水浴びをしている三羽の白鳥に近づいた。
ミカはしばらくそこに佇んでいた。彼の今日の姿は、白麻のシャツと渋みのある杏色の細ズボンで、手袋は深い燕脂《えんじ》色である。
その隣のアストリットは、乳白色の薄い生地が何層にも重なった軽やかなスカートに、胸下で切り替えの入ったシンプルなドレス、その上に丈の短い透かし編みの黒の上着を合わせていた。白鳥が水面に顔を出す度に背に弾け、つるつると転がり落ちる水玉が宝石のようだ。
やがて二人はそこを離れると、木陰を選びながらりんご園に入り、木々の間の小道を進んで行った。
深緑の葉の合間にまだ残った白い花が覗いており、微かに甘い香りを漂わせている。緑の絨毯の上にはところどころにモグラの作った塚が連なり、熱心に絹の短靴の先でそれを一つずつ踏み固めていたミカは、そのうちふと顔を上げて言った。
「モグラのやつ、『うわ、道が無くなってる』なんて思うかもしれないな」
王子には珍しい、その少年のように可愛らしい物言いに思わずアストリットは微笑んだ。
「そうですね。掘られた穴は通り道と同時に食料捕獲の罠ですから、餌を得るためにまた掘らなくてはいけません。モグラにとっては重労働でしょう……」
ふと、彼女の脳裏に土に鍬を入れる小作人の姿がよぎった。
「なんだ、モグラの生態に詳しいな」
アストリットの言葉に罪の意識が芽生えたかはわからないが、ミカは柄を壊すのを止め、再び並んで歩き始めた。
「巡回の途中で、畑から帰って来た小作人から聞いたのです。彼らもまた、少しでも多く食べるために毎日畑を耕し続けるのです……」
勘のいいミカは、彼女がもはやモグラについて話したいのではないことを悟り、もともとのんびりとした足取りはさらに緩やかになった。
「そして、他の者のためにも身を削って耕し続けなければいけないのです」
殿下と、二人きり――アストリットはずっと気にしていたことをついに口にしてみた。慎重に。今度は口を封じられないように。
「殿下に伺いたいことがあるのですが」
「なんだ」
ミカは横目でアストリットを見下ろした。
「殿下に同伴した楽団や舞踏家たちには、もちろん報酬がもたらされるわけですが……」
アストリットは、時折梢に隠れてはまた現れる、小道の先を睨んだまま続けた。
「それは国費から支払われるのですよね」
「もちろんそうだ」
「それらの支出を抑えることで、下層階級の人々の暮らしが少しでも楽になるとお考えにはなりませんか」
「私の散財によって彼らが飢えることになる、と言う意味か」
「いえ……、そ、そのような……。殿下の行為そのものというより、今の憲法が上層階級を太らせているだけだと……。今の憲法には秩序と誠意が欠けております……」
「犬に金の御殿を与えたところで犬は犬だ」
「それはどういう意味ですか」
「頭のよい大尉殿なら私が説明せずともお分かりでは」
アストリットは正面から振り下ろされた剣を避けるのではなく、真っ向から受けるタイプであった。そして相手が振りかざす剣を止めない限り、彼女も攻撃の手を緩めずに返し続けるのが礼儀だと思っていた。
彼女は拳をぎり、と握りしめた。そして声を出来るだけ抑えて言った。
「憲法が新しくなったところで彼らの生活が変わることは決してない、ということですか」
「さらに付け加えさせてもらうと、犬は一日二度も食事にありつければ贅沢だ。飢えには慣れている。そして、やつらには『主人』が必要なのだよ」
アストリットは自分の足下の氷が溶け始め、細かい亀裂が入っていることに気がつかなければいけなかった。自分の言葉の礫がさらに亀裂を増やしていたことに。
「その主人とは、貴族階級の者と?」
「彼らが金をばらまくのではないか」
「それはもともとはと言えば、農民たちのものです。農民たちから搾り取ったものを少しばかり市場に流し、それで誤摩化しているのです。しかしそれだけでは十分とは言えません!」
「土壌は国のものだ。そこで作物を作り、金に替え、領主に収め、領主は国に収める。それが理にかなっていないとでもいうのか」
「はぐらかさないでください! 殿下は私の言わんとすることが十分お分かりのはず。王族は真実から目を背けるのですか。国民を守れない国に繁栄などありえません!」
ミカは足を止めると、アストリットに向き直った。その顔は薄く笑ってさえ見えた。そしてその瞬間、アストリットは今までのミカの応対は自分を罠に陥れるためのものだったと気がついた。だが、すでに遅かった。気がつけば、足下の氷は割れていた。
「随分な言葉だな。しかし、それは自分の墓碑にでも刻むことだ、アストリット・ローゼナウ。わからないようなら教えてやる。戦にてお前たち騎士団を先導するのは誰だ。国王と私と、ヨシュアだ。万万が一、敵が戦場から我が国への道を我々の兵の血で染め上げ侵略しよう時、誰がリューベンスブルグを救える。国王と私と、ヨシュアの首だ。おまえに一体何が出来ると言うのだ。おまえの首で誰が救える。おまえの首を誰が欲しがる。大地の肥やしになっても、それ以上の価値はない。そのことを普段から肝に銘じ、黙って税を払う国民の方がおまえより遥かにも賢しい。犬は主人を知っている。しかし、帝国騎士団のおまえの口からそんなことを聞くとはな……おまえは犬以下だ。恥を知れ!」
激しい剣幕に気圧され、彼女は今来た道を一歩二歩と後ずさった。一方のミカは、またしてもアストリットに罰則を課す権利を手に入れたことに満足し、心中でほくそ笑みながら彼女の方へ一歩近づいた。
その時、アストリットは目の端にミカの背後、さほど遠くない木の陰にきらりと小さな光を捕らえた。
やにわに彼女は、今作ったミカとの距離を再び縮め――ほとんど体に隙間が無くなるほど――両手でミカの右手を取ると、自分の胸に押し付けた。
「殿下、先導を行く殿下の横に並ぶのは私です。私がこの命をかけて殿下のお命をお守り致します。殿下を敵の手に渡すことなど致しません」
アストリットの言葉と自分を見上げるその真摯な眼差しに、ミカは一瞬、瞬きを忘れた。
そして、さらにアストリットが視線を外すこと無く左手を自分の方へ伸ばし、首に絡み付けた時、その瞳は驚きで見開いた。
今まで背中の毛を逆立て、小さな牙を剥いていた子猫が怯て離れて行ったかと思えば、突然喉を鳴らし始める。そしてあろうことか陳腐な女の媚で懐柔しようと体をすりつけている。
しかし、ミカの驚愕はそこで終わりではなかった。彼女は身をさらに擦り寄せ、耳の下でこうも囁いた。
「殿下……スカートの中に手を忍ばせてください……右腿に触れて……おねがい……します」
ミカの喉がこくりと鳴る。乳房を収めた手に、跳ねる鼓動が伝わった。彼はその手で、今すぐ自分とアストリットを隔てる邪魔な衣装を引き裂きたい衝動を抑えながらも言葉に従い、下ろしていく。そして、ゆっくりとスカートをたくし上げると器用にその中へ、魅惑の園へ向かって手を潜り込ませた。
右手は依然胸の上でアストリットの手に包まれていたが、すでに乳房には、その形を変えるか変えないかのたおやかな愛撫が加えられていた。その動きのいちいちに、無意識にアストリットは悩ましげな吐息を零していた。
形のよい鼻の先がアストリットの首筋を上下に往復し、くすぐるのと、途絶えることの無い胸への愛撫、想像以上の巧みさで肌をじわじわと行きつ戻りつ、腿を這い上がって来た手の動きに、彼女は細かく全身を震わせた。
手が短剣の上を過ぎ、その先の微かな毛にあわや手袋の先がかすった時、アストリットの喘ぎに混じった甘い声がミカの耳たぶを撫でた。刹那、思わず彼は乳房を弄る指に力を込めた。重なったアストリットの指が甲に食い込む。
「ぁんっ…………、で……殿……下、行き過ぎ、です……。短剣を……抜いて、私にください……。体の影に、なるように……」
何か聞き間違えたのでは、とでもいうようにミカの全ての動きがぴたりと止まる。
「短剣?」
「っ……あ、はい……」
ミカの呟く唇が彼女の首筋を撫でると、何かに耐えるように彼女は息を殺して額を彼の胸に押し当てた。王子の戸惑いを感じたのか、アストリットは真横にある顔を覗き込み、「早く……」と囁いた。
その目元のほんのりと染まった潤んだ瞳に見つめられたとたん、ミカの全身の血液が体の中心に一気に集まるようであった。それでも促されるままに彼は器用に短剣を鞘から抜き、自分の手に添えられていた彼女の右手近くへ滑らせた。
それをミカの手から奪い、彼の盾になるようにアストリットがひらりと身を翻したのと、短剣を放った一連の動きはほぼ同時であった。
剣はゆうに木を四本は過ぎ、五本目の幹に突き刺さった。
「殿下はこの場に」
アストリットは通る声で短く言い残して短剣の刺さった木まで走って行くと、武器を抜いてから辺りを仔細に調べ始めた。
「確かに、何かが光ったのを見た気がしたのに……」
口の中でひとりごち、彼女は短剣を鞘に納めた。その時、後ろから近づいて来たミカの声が届いた。
「おまえの早とちりか? しかし唯一の武器を手放して本当に刺客がいれば、どうするつもりだったのだ?」
半ば呆れ顔の主人に、彼女は自信ありげに口角を上げた。
「応援を呼ぶつもりでした。口笛を吹けば馬に乗った憲兵たちがすぐに駆けつけてくることになっております。その間は、落ちた枝でも、石でも武器になります。私は、自分で言うのもなんですが、東方の伝統武術にも心得がありますので」
「それは頼もしい」
ミカの白けた声にも気がつかない様子で、アストリットはまだ木の後ろを覗いている。
「しかし、私が目にしたのはなんだったのでしょう……」
梢を仰ぎ見ながら、一歩踏み出したアストリットが「あっ」と小さく叫んだ瞬間、その姿がミカの前からこつ然と消えた。――と思えば、すぐに足下から声が上がる。
「な……、なんだってこんなところに穴が……」
胸まですっかり穴に隠れたアストリットは明らかに腑に落ちない様子できょろきょろと周りを見回している。有能な護衛のその慌てぶりを見たミカは、笑いを隠し得ない。朗らかにははは、と声を上げて笑った後、やや落ち着きを取り戻して言った。
「散々この辺りを視察された大尉殿がこの穴の存在に気がつかれなかったと? それとも、それは私を退屈させないための、体を張ったご冗談か」
「体を張って殿下のお命を守りしますが、冗談で体を張るほど気の利いた護衛ではありません!」
「なるほど」
妙に納得しながら二度三度と頷くミカを見上げ、アストリットは頬を染めて懇願した。
「あの……、申し訳ありませんが、お手を貸していただけないでしょうか。この深さでは一人で出るには無理がありまして……」
「ああ、すまない。そこが大尉殿には居心地がいいのかと思ってしまった」
そんなふうに決して思っていないのは、まだ収まらぬ低い笑いで震える声で明白だった。それでも彼は優美な長い体をやや屈め、伸ばされたアストリットの手を取ると、護衛の体を軽々と穴から引っ張り出した。土壁を蹴った勢いもあり、彼女の体はミカの胸に自然と飛び込む形になった。
ミカは相手の腰にしっかりと片手を回し、もう片方を枝の方へ伸ばした。
「おまえが見たのは、これに反射した光だ」
アストリットも背を逸らすように緑葉の間を仰ぎ、その指先に捕らえられたものを見た。それは細い糸の先に巻き付けられたガラスの破片だった。
「これは一体?」
「狩りの供をするおまえが知らんのか? これはイノシシや鹿の罠だ。ここに獲物が落ちれば一発で息の根を止められる。弾の節約になるだろう。まだ幾つかあるが、穴の場所に人が落ちぬようにガラスを枝からぶら下げて印にしているのだ。しかし……あまり意味がなかったようだが……」
くっくと忍び笑いが再びミカの喉元で湧く。
「そんな……! 森の中でしたらまだしも、まさか私有地に罠があるとは……」
アストリットはミカの腕の中で恥ずかしさに身を縮込ませて言い訳をしたが、彼は罠にかかった獲物に夢中で彼女の声など耳に入らないようだった。
「しかし……。今日はまた珍しいイノシシが罠にかかった」
「え? どこですか」
拘束されたまま肩越しに後ろを振り返り、右へ左へ目を泳がせ”獲物”を探す。しかし、そこには梢の間から射し込む幾筋かの光と、葉擦れの音さえしない静寂が漂うだけだ。
「肉付きも申し分無いようだ……匂いもいい」
喉元に顔を埋めながら尻を揉み始めたミカの手つきで、その”獲物”が自分であることにやっと気がつく。アストリットは慌ててもがき始めた。
「で……、殿下! 私はイノシシではありません!」
「きーきーうるさいぞイノシシ。食われないための最後のあがきだな」
「殿下! ご冗談はお止め……お離しください……! それに、私など……美味しくありません!!」
抱かれたまま一歩また一歩と押し寄られ、背が木の固い皮に触れる。ミカの胸を押し返していた両手首を片手で簡単に取られ、頭上で幹に縫い付けられる。
「味見は何度かしたが、非常に美味だった。その点は保証しよう」
今にも舌なめずりをしそうな妖しい笑みを浮かべてミカに見据えられると、抵抗する気持ちが一気に削がれ、代わりに淡い期待がふつふつと胸をくすぐる。どうしてそうなるのかわからない。それでも、掴まれた手首が拾う手袋の感触が、既に肌の上を這い回っているのだ。
「そもそもおまえが私を煽ったのではないか。誘った女に恥をかかせるほど私は野暮な男ではないつもりだ」
「ご、誤解です……! 私は刺客を油断させようと……」
必死で真意を訴えても、相手の方はそんなことに全く頓着する様子は無く、さらにぐいっと体を密着させてくる。
「まあ、それはどうでもよい。そうだな、捕まったイノシシはどうなるか知っているか……まず皮を剥いで……」
ミカが片手だけで器用に上着のレースのくるみ釦を外し始めるとアストリットは身悶え、指の動きを阻害するのに胸を左右に揺らした。
「どうか……お願いです、せめて……どこか人目に忍ぶ場所で……ここではいつ誰が来るとも……」
ついに諦め、間近にあるミカのやや濃さを増した薄青の瞳を見つめた。
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王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
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