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キラキラ? 私の夏休みラスト編

第85話 未知(海外配信者)との遭遇伝説

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 本日は私の誕生日!
 ……なので、何故かリムジンバスに押し込まれて、受付さんと並んで空港へ向かってるんですけど。
 兄は前の席。

 受付さんと喋りながら、じゃがいもスティックのお菓子をむしゃむしゃしたりなどした。
 久々に使うRUINEで、兄のトークが流れてくる。

『トイレは大丈夫か?』
『喉は乾いてないか?』
『言葉が分からなくてもいいぞ』
『Aフォンは翻訳モードにしておけ』

「うわー、斑鳩さん超心配してくるじゃない」

「て、手持ち無沙汰なんだと思います。暇な時はいっつもこうなんで……」

「シ、シスコン……!!」

 受付さんが呟いたら、彼女のスマホに鬼のように抗議のトークが送られてきたようだ。

「ひぃー、す、すみませんすみません! シスコンの斑鳩さんも愛せますから!」

 受付さんが謝るスタンプをたくさん送ってる。
 ここの力関係も謎だなあ……。
 彼女、プールでは裸みたいな水着で迫ってたのに!

 というかよくあれ着れるな。
 私ならもう大変なことになる……。

 うん、タンキニまででちょうどいいな。
 私は納得した。

 そしてボーッと空港までに流れる外の風景を見る。
 おお、お台場だー。

 今度、あそこに立ってるバイコーン・バルダムを見に行こう。
 二本の角が展開して四本のアンテナになるという不思議なロボ。
 NTRメインの話だとかでネットミームにもなってた。

 何故か兄は私に見てはいけないって言ってたな……。
 もちろん見た!

 割りと見た後に宇宙猫みたいな顔になったよね。
 ロボット戦闘かっこよかったです。

 そんなことを考えてたら到着です。
 海の上に突き出した空港は、なんというか同じ日本じゃないみたい。

 空港の中もおっそろしく広くて、海外色豊かなレストランやショッピングセンターが併設されている。

「あわわわわわ、ひ、ひ、広い……。人がたくさん……いや、広いからまばらだな……」

「このレベルならお前でも大丈夫だろう。さあ行くぞ」

 兄に連れられて、向かうのは国際線の到着ロビー。
 受付さんが手作りしてきた、『歓待!ようこそメイユー!』という旗を三人で振って待つ。
 すると……。

 スラッとした感じの切れ長な目のきれいな女の人がやってきた。
 背が高くて、カジュアルでタイトな感じのスーツがよく似合う。

 彼女は私たちが小さい旗を振ってるのを見て、一瞬ポカンとした。
 そしてショートボブの髪を揺らしながら、ヒールの音も高く近づいてきて、

「你疯了!? 你在干什么!?(ばかじゃないの!? 何してるの!?)」

 とかまくしたててきた。
 あひー!
 国際的会話!!

 兄はアルカイックスマイルを浮かべながら、

「Aフォンを使って話そう」

 と至極冷静。
 この人はいつでもマイペースなのだ。

 彼女……メイユーを連れて、私たちは空港を出た。
 タクシーを捕まえて、まずは個室が使えるレストランへ。

「いきなり配信ネームをオープンにして歓迎! とかやってるからなんだこいつら!? って思ったわ。ファンに見つかったら大変なんだから……。あ、それと私、和食がいいわ。やっぱり本格的なのは日本で食べたいもの。カイセキ、食べてみたい」

「いきなりは無理だ。明日の夜に予約を取っておこう」

 兄に言われて、メイユーはちょっとむくれながらうなずいた。
 ちょっとかわいい人ではないか。

 さて、個室で自己紹介。

「メイユーです。今回はお願いを聞いてくれてありがとう。スタッフと一緒に来たのだけれど、彼らは私を信じて放任主義なので、今はこのレストランの別の席であなた方を監視してると思うわ」

「あひー」

 監視!? コワイ!

「その鳴き声! あなたがハヅキね! 嬉しいわ、会えて! 極東の奇跡! 歩く不確定要素! ネームド殺し! ダンジョンの真ん中であひーを叫んだ者!」

 ニコニコしながら手を伸ばしてくるので、私もおずおず手を差し出したら、めちゃくちゃにシェイクハンドで手をぶんぶん振られた。

「わ、私のことをご存知で……」

「世界の配信者で貴女を知らない人なんかいないわ。貴女がネームドを倒した動画は、一流であれば全員が見ているもの。だから一億再生を超えてるでしょう?」

「はひ?」

 い、一億……?

 受付さんがにっこりしながら、該当動画の再生数を見せてくれた。
 い、一億超えてる!!
 なんで!?
 あひー。

「斑鳩だ。はづきのマネージャーをしている」

「あ、受付をやってる……もので、名刺は……」

 兄と受付さんも名乗った。
 メイユーは兄はもちろん、受付さんの前世まで知ってたらしく。

「日本に来てたのね? えっ、斑鳩の下で働いているの? なるほど、国際コラボしてた時に明らかにモーションかけてたもんねえ」

 う、受付さん日本人ではなかった!?

「ご、ご内密に……!! 今の私は一般人ですので……!!」

 なうファンタジーは海外展開もしてて、そのアジア勢の人だったらしい。
 めちゃくちゃ日本語が上手いから全然分からなかった。

 そしてやはり兄を狙っているらしい……!
 そっちは既知の情報だ。

「ハヅキはこういう話好きそうね? ずっと神妙な顔で聞いてるもの」

「はっ、そ、そ、そんなことは……フヒヒ」

「いいんじゃない? 年頃の女の子だし、色々興味持っておいた方がリスナーとのお喋りにも幅が出るわよ。もちろん、キャラによっては知らないふりしてた方がいいけど」

 メイユーがウィンクしてきた。
 うーん、大人の色気。

 周りにはいなかったタイプの人だなあ!
 背も高いし、モデルのような人だ。

「それでハヅキ。貴女のクチから直接聞きたいのだけれど。ネームドのことについてよ」

「あ、は、はい。ナカバヤシさんはですねー、多分強かったんだと思うんですけど、良く分かんなかったんですよね」

「はづきの証言は全く参考にならんと思うぞ」

「分かってるわ。うちでもハヅキの動きを解析したけれど、どうも不規則な動きが複数の次元にまたがって存在している可能性がある、ということくらいしか分からなかったの」

「な、な、なんですかそれー!?」

 というところでご飯が来た。
 私の頭の中から、新事実のことは綺麗さっぱり吹っ飛んだのだった。

「カイセキが食べたかったなあー」

 メイユーは不満げに、レストランのチキンステーキをつついているのだった。
 楽しい食事……の最中。

 受付さんが「あ、ウィオマ……」と呟いた。
 ポロッと出てきた外国語!

「ああ、やばい、やばいですよこれ! これ見て下さい、空港が……」

 彼女が見せるスマホに、私たちは注目する。

「空港がダンジョンに……!?」

 メイユーが目を丸くした。

「旅客機には結界を張っているはずだけれど……。もしかして、荷物に潜り込んでいた怨霊がいたのかもね……!」

「えっ、それってどういうことなんですか……」

「私の後を追って、中国から怨霊が追いかけてきたってこと。それも恐ろしく執念深くて、フライト中に勘付かれないくらいにはじっとしているのが上手いやつよ。怠惰のカンルーの手下ね!」

 なんかいきなり、大罪勢の名前が出てきたんですけど……。
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