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秋な私の呉越同舟編

第279話 新学期とやって来た大罪伝説

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 新学期が始まった。
 登校してきたら、クラスがなんかきら星はづきの誕生日配信の話でもちきりだった。

 派手なイベントだったもんねえ。
 話題にしてくれるのは嬉しい。

「あたしは誇らしいですねえ」

「うちたち、あそこにいたんだもんね」

「はづきちゃんかっこかわいかった~」

 イノシカチョウの三人が、なんかニヤニヤしてる。

「みんなだって凄かったじゃない。アーカイブ見たー」

 私が告げたら、三人ともニコニコした。
 うーむ!
 なんかこう、私も学校で友達できたなあって気持ちになる!

 満足感~。
 始業式を終え、一日目の授業を新鮮な気持ちで受け、特に部活にも入ってない私はそのままスッと帰宅した。

 イノシカチョウの三人もフリーになってるので一緒なのだ。
 そうしたら、私たちのAフォンに一斉に連絡が来る。

『迷宮省から連絡がありました。明日、とんでもないビッグゲストが来るそうです。皆さんは明日は学校を休めるように手配済みです。迷宮省側の会合に参加をお願いします』

「なんだなんだ」

 何があるというのか。
 迷宮省は、大京長官が辞職したんで、慌てて次の議員の人を長官ポストに付けた。
 物凄く特殊で責任重大なポストなんだけど、新しい人は普通の議員さんなので大丈夫だろうかと朝のニュース番組でやってたな。

 父がそれを見て、「心配するなら大京長官を追求して辞めさせなきゃ良かっただろうが」とかぶつぶつ言ってた。

 そんな新生迷宮省がビッグゲストというのは誰なんだろうなあ。
 今までは隠さずに色々そのまま教えてくれてたんだけど。

 疑問を感じつつ、翌日。
 黒塗りのリムジンカーが迎えに来た。

「あひー、めちゃめちゃ目立つやつ!」

 なんか恭しく迎え入れられて、私は運ばれていく。
 到着したのは、あ、ここ知ってる。
 舞踏館だ!

 明治時代に建てられた、外国からの使節を迎え入れるための建物。
 それをちょこちょこリニューアルしつつ今まで保ってきた、由緒正しいところなのだ。

 いつもなら観光客がいるけど、今日はそういう人たちを締め出しているみたい。
 そしてなんだか物々しい。
 警察の人が外にずらりといるぞ。

 車を降りて、建物まで案内される。
 そうしたら、イノシカチョウの三人もなんかいづらそうな感じで壁際に集まっていた。

「おーい」

「師匠~!」

「先輩来てくれたんですね!」

「はづきちゃんの顔を見たらやっと落ち着いてきたー」

「みんな緊張してるみたいですな。これは一体何が始まるんです?」

 私の質問に、この中で一番頭が切れるぼたんちゃんが応じる。

「ビッグゲストと会わせようとしてるんでしょ。そして私たちが選ばれたのを見ると、多分相手は大物で、しかも表に出したくない人物なんだと思うわ。今までの迷宮省じゃ考えられなかったやり方だけど」

 秘密主義的ってことかー。
 今までは大っぴらにやり過ぎて、あちこちから反感を買ってたから前長官が更迭されたみたいなのはあるみたいだけど。

「やあ、わざわざお越しいただきありがとうございます」

 何やら向こうから、高そうなスーツを着たおじさんがやって来た。
 一見して、高そうなスーツを着ている普通のおじさんだ。
 大京長官みたいなオーラはないなー。

 その人は私をじろじろ見た後で、

「こう言っては失礼だが、画面越しに拝見していたよりもちゃんと普通の人間で安心しているよ」

「シツレイ!」

「そうだそうだ!」

「はづきちゃんをなんだと思ってるの!」

 イノシカチョウ、キレた!
 このおじさん、どうやら新しい迷宮省の長官秘書みたい。

「言葉遣いにリスペクト感じないんですよね」

「リスペクト? 我々は対等だろう? それに君たちはまだ子どもだ。それなりの態度というものが出てくるのは当然のことではないかね?」

「むきー! はづきちゃん、私この人嫌い!」

「ぼたんちゃん、どうどう」

 落ち着いてもらった。
 まあ、普通の対応だとこうだよね。
 今までの迷宮省が、配信者に厚遇過ぎたんじゃないですかね!

 多分、新しい迷宮省の上の人たちは、配信者文化とか全然分かってない人なのだ。
 で、そんな人たちがビッグゲストとして招いたのは……。

 大きなホールに通された私たち。
 普段着で来たんで、なんか周りの大人たちがこっちを見てひそひそ言ってる。

 仕方ないなあ。

「じゃあバーチャライズしますね……あちょ!」

「師匠が言うなら、バーチャライズ!」

「やっちゃいましょう先輩! バーチャラーイズ!」

「もう見せつけてやる! バーチャライズ!」

 四人の姿が配信モードになった。
 甲冑姿の大きなはぎゅうちゃんと、コックさんでエルフな可愛いもみじちゃん、着物姿でゴージャスなぼたんちゃん。
 そしてジャージの私。

 うーん!
 私だけさらに失礼な格好になったぞ!
 ざわつく会場。

 ま、いいか……。
 見知らぬ人がたくさんいるし、なんか他所者感凄いし。

 早く終わらないかなー。

「皆さん、お忙しい中お集まりいただきましてありがとうございます。迷宮省長官に就任いたしました中林です」

 はあはあ、ナカバヤシ長官と言う人が次のトップなのね。
 ちょっとだけオーラがあるおじさんが出てきた。
 背は高く無くて、ちょっとギラギラしてる雰囲気。

 なんか色々演説が始まった。
 周りの人たちはうんうん聞いてる。

 私は暇なのでAフォンをポチポチして、この間ゲットしたローアングラー蠱毒を調整する。
 うんうん、私の蠱毒の腕も上がってきて、かなり強い式神が作れるようになった。

「ではご紹介しましょう! はるばる英国から来てくださった、ルシファー・グリフォン議員! そして中国からお招きしました、ウォン・ベルフェ大使!」

 なんか見たことあるスラッとした白人の男の人と、太っちょな中国の人が出てきた。
 ワーッと拍手が巻き起こる。

 ぼたんちゃんが絶句した。

「あ、あれ……」

「どうしたのぼたんちゃん」

「ルシファーは、傲慢の大罪。ベルフェゴールは怠惰の大罪よ……。考察サイトで、大罪勢その人だって言われていた人物が二人いるのだけど……。まさか……まさか」

「あの二人がそうなの?」

 頷くぼたんちゃん。
 私は「ほーん」と思って司会席みたいなところをみた。

 ルシファー議員とウォン大使がこっちを見てる。
 ルシファーさんは口元は笑ってるけど、目が笑ってない。
 ウォンさんはなんか凄くめんどくさそうな顔をしてる。

 で、対する私はと言うと……。
 お腹が減ってきていたので、割と彼らのことはどうでもいいのだった。
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