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第四章

第67話 世界の空を飛んで見る

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「おっ、早速というか空飛ぶモンスターだ」

 見たことのある、巨大な黒い鳥。
 俺がワールウインドをラーニングした相手だな。

「チェック! あれはズーね。現状では最大の飛行モンスターと言われているの。五十年前には見かけなかったんだけど……。あれ? どうして五十年前にはいなかったのかしら……」

「謎が深まるなあ」

 俺は疑問を覚えるが、そういうのも過去の時代に行って調べればいい。
 みんな、五十年前の空にモンスターがいなかった記憶が曖昧だな。

 つまりこれは、フォンテインナイツ案件だということだ。

 近づいてくるズーは、ゴメスがピュンピュンと矢を飛ばして追い払った。
 威力はホムラほどじゃないが、凄まじい飛距離と命中率だな。

「うえー、空の上だから風で矢が外れるなあ……。全部頭を狙ってたんだけどよ。空の上、半端じゃねえよなあ」

「あの射程が拙者にもほしいー! ほしいほしいほしいー!」

 忍者が地団駄踏んでる。

「手で投げてるんだから限界あるんじゃない?」

「そうでござるかなあ……。だけど拙者、手で投げないとあの効果が出ないでござるなあ」

「意外と投擲は面倒くさいのだな」

「ドルマ殿が攻撃を受けないと技を覚えないのと一緒でござるよ。ドルマ殿強くなったから、攻撃を受けなくなってきて、最近技を覚えてないでござろう?」

「そう言えばそうだなあ」

 ホムラと話し込んでいたら、エリカがズカズカやって来て、間にぎゅうぎゅう挟まった。

「ウグワーッ!」

 ゴロゴロ転がっていくホムラ。
 エリカのお尻に弾かれたな。

「ほら、もうポータルの上よ。みんな空を見てる」

 レーナが地上を指さした。
 どれどれと覗くと、なるほど、みんな飛空艇に注目している。

 これがきっかけで、ドワーフと人間との交流が深まって、飛空艇が世界に広まっていくかもしれないな、などと考える。
 だが、こいつがあると戦争の規模が桁外れになりそうだなあ。

 俺達は飛空艇で、空から襲撃を仕掛けたりしたもんな。
 一方的だった。

 うむ、人間に空を飛ぶ技術はダメだな。
 飛空艇は事が終わったらドワーフに返す。

 俺はそう決意したのだった。

「なあドルマ! ホムラと何を話していたんだ! 私とも話すぞ! ええと、何の話をしよう!」

「そうだな。これからエリカの実家に行くだろ? そうしたらアベルを拾って、フルメンバーでまたタイムリープするとかかな」

「ふむふむ! じゃあ、さらにフォンテイン伝説を進めるんだな! 次は……」

「次は何だったっけ?」

「飛竜退治だな!」

「飛竜?」

「空を飛ぶ強大なモンスターだ! こいつをフォンテインが退治するんだ。これが終わったら、いよいよ風車の魔王との戦いだぞ!」

「おっ、もうすぐ終わりかあ!」

 俺はちょっと笑った。
 何せ、フォンテイン伝説を完遂したら、エリカに掛かったフォンテインの呪い的なものが解けるからな、多分。

 エリカは仲間も増えて、自分の承認欲求も満たされて、どんどん生き生きしていっているが、それでもフォンテイン伝説へのこだわりを止められない。
 バーサーカーとしてのエリカの生き方なのかもしれない。

 なので、俺はフォンテイン伝説のコンプリートを狙っているのである。

「しっかし、凄い速度でござるなー! あっという間にエリカ殿のご実家が見えてきたでござるよー! ランチャー地方でござるか?」

「あまりにも速いから麻痺してるけど、一応飛び立ってから結構な時間が経ってるわよ? ほら、お日様がだんだん沈んでいく……」

 レーナは時間も気にしていたのか。
 すると、びゅーんと何か飛んできた。

「うわーっ、新しいモンスターかよ!?」

 ゴメスが慌てて矢を放つ。
 これは、飛んできた何かが槍を使ってカーンと弾いた。

「槍? こいつ、アベルじゃん」

「モンスターが飛んできたと思ったら、船だったか。しかもやっぱりお前らか」

 飛空艇の甲板に降り立ったアベル。
 俺達を見回して呆れた顔になった。

「なんだ、そこの男は」

「いやあ、モンスターかと思ってよ。射掛けて悪かったなあ」

「殺意がみなぎっていたぞ。まあ、達人未満だな。俺には通じない程度だ」

「アベルがこれだけ評価するってよっぽどだな」

 やはりゴメスは凄いやつだな。
 だがまあ、まだまだ普通の人の域に収まっているということだろう。

 そう言えば、フォンテイン伝説の中に狩人はいたかな……?

「いたっけ?」

「いないぞ!」

 フォンテイン伝説の有識者、エリカが否定した。
 ということは、ゴメスは真の仲間ではないのだな。
 俺、この男が結構好きなんだがなあ。

「うんうん、これで伝説のパーティが揃ったね? じゃあ僕は久々に家に帰るとしようかしら。トニーも待っていると思うし」

「レーナはタイムリープしないのか?」

「無理を言っちゃいけないわよ。僕はもういい年だもの。冒険は若い僕に任せるわ」

 すっかり僕口調になっている。
 エリカは相変わらず、過去のレーナと今のレーナが同一人物だと分かってない顔をしているな。
 これはバーサーカー特有の理解力下がってるやつ? それとも天然?

 まあいいか。

 飛空艇は一旦、エリカの実家に着陸した。
 とことこと出てきたトニーに、船を飛び出したレーナが駆け寄っていって抱きつく。
 ラブラブだ。

 というかレーナ、年の割にめちゃくちゃに元気だな。

「タリホー! また飛び立ちますぜー!! 次の行き先を教えてください!」

 ドワーフの操舵手の声に、俺は頷いた。

「飛空艇ごと飛ぶぞ。次の目的地は、過去だ! タイムリープ!」

 
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