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第3章 貴女をずっと欲していた
アリーチェを手にするのは②
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【SIDE フレデリック第1王子】
私が探していた令嬢が、アリーチェだと分かり、珍しく動揺しているマックス。
アリーチェは、私がリックだと気付いていながら、この弟にさえ話していなかったのかと、驚くと共に彼女の真意が気になって仕方ない。
「…………殿下、もしかして。いや、姉上が殿下の元から、我が家に帰りたいと言ったのは事実だ。124条はある意味、逃げた妃のためにある条項ですから」
「10日で必ず連れ戻す」
「僕は、姉上を殿下と会わせる気は一切ありませんし、何をしても無駄です。殿下がアリーチェ妃殿下と取り交わした約束が本当であれば、10日以内に自ら城へ帰ると言うでしょう。僕は、ここでの会話は、姉上には伝えませんから」
「そうだろうな。お前は私に殺気を向ける程、アリーチェのことを自分のものにしたかったんだろう」
マックスは、当然だという顔を私に向けている。
どうして私は、こいつの狙いに気付かなかったんだ。
「あっ、それと、姉上に手を出すなと言われても、愛しい女性が泣いていたら、何をして慰めるかは僕が決めることです。では、用事も済みましたので、僕は1人では眠れない姫の元に戻ります。幸い、煩い母は屋敷にいないから、一緒のベッドで朝を迎えられますし、寝起きの姉が僕におねだりするキスは、最高に可愛いですから」
「おい、マックス!」
「伝えるのを忘れてました。殿下の机にあった書類は、陛下の元へ届けていますから、ご安心ください」
踵を返して遠ざかっていくマックスの背中を、ただ見ていることしかできなかった。
アリーチェがキスを強請る?
あのマックスが、アリーチェに強要しているの間違いではないのか…………?
これまでマックスが言い続けていたアリーチェのことは、やつなりに一点の曇りもないものだったのだろう。
それを真剣に取り合わなかったのは、私だ。
アリーチェに、屋敷に帰りたいと言わせたのも、間違いなく私だ。
彼女の無言のメッセージにも気付かなかった……。
幼い頃、彼女のことを迎えにいくと言ったのに、結婚後も彼女の部屋へ行ったこともない。
私はアリーチェに逃げられて、何ら不思議ではないんだ。
マックスから124条の意味を突き付けられ、アリーチェが私に会いたいと言う気がしない。
王族規約124条
『妃殿下及び王妃殿下が城を離れる際には、それぞれの伴侶へ承諾を得ること。並びにその間の公務については、事務官長と調整するべし。無断で責を逃れ、王城の管理区域を離れた場合は、妃の称号を剥奪する』
アリーチェが無許可で城を抜け出したと知られてしまえば、後で私がどんなに周囲に説得しても、処分を取り消すことは絶対にできない。
妃の自由を制限するものだが、あの条項は、妃を守るために、貴族議会で決められたものだ。
王族は夫婦であっても圧倒的に夫が優位となり、そこに暴力的な行為があろうと、国王や王子にものを言える者が存在しない。
耐えられなくなった妃が、逃げた後、2度と城へ連れ戻されないために貴族側から声が上がり、定められたものだ。
アリーチェの気持ちはまだ分からないが、彼女が城へ帰ってこられる可能性は何としても守りたい。
アリーチェがこの城を去ったと知ったときに、真っ先に浮かんだこと。
それは、毎日元気に私の執務室にやって来て、楽しそうに笑っているアリーチェの顔だった。
もう、2度とそれが見られなくなるのは絶対に無理だと、体が拒絶している。
そもそも幼い頃に、私がリーに惹かれたのは、彼女の知性や感性だった。
だが今はそんなことよりも、無邪気に私へ駆け寄ってくる姿に惹かれている。
優れた妃を失うより怖いのは、どうやっても理解できなかった奇抜な化粧と、派手なドレスを着ていた元気なアリーチェだ。
何が何でも貴女を取り戻す。
貴女に会えないと、生きていける気がしない…………。
私が探していた令嬢が、アリーチェだと分かり、珍しく動揺しているマックス。
アリーチェは、私がリックだと気付いていながら、この弟にさえ話していなかったのかと、驚くと共に彼女の真意が気になって仕方ない。
「…………殿下、もしかして。いや、姉上が殿下の元から、我が家に帰りたいと言ったのは事実だ。124条はある意味、逃げた妃のためにある条項ですから」
「10日で必ず連れ戻す」
「僕は、姉上を殿下と会わせる気は一切ありませんし、何をしても無駄です。殿下がアリーチェ妃殿下と取り交わした約束が本当であれば、10日以内に自ら城へ帰ると言うでしょう。僕は、ここでの会話は、姉上には伝えませんから」
「そうだろうな。お前は私に殺気を向ける程、アリーチェのことを自分のものにしたかったんだろう」
マックスは、当然だという顔を私に向けている。
どうして私は、こいつの狙いに気付かなかったんだ。
「あっ、それと、姉上に手を出すなと言われても、愛しい女性が泣いていたら、何をして慰めるかは僕が決めることです。では、用事も済みましたので、僕は1人では眠れない姫の元に戻ります。幸い、煩い母は屋敷にいないから、一緒のベッドで朝を迎えられますし、寝起きの姉が僕におねだりするキスは、最高に可愛いですから」
「おい、マックス!」
「伝えるのを忘れてました。殿下の机にあった書類は、陛下の元へ届けていますから、ご安心ください」
踵を返して遠ざかっていくマックスの背中を、ただ見ていることしかできなかった。
アリーチェがキスを強請る?
あのマックスが、アリーチェに強要しているの間違いではないのか…………?
これまでマックスが言い続けていたアリーチェのことは、やつなりに一点の曇りもないものだったのだろう。
それを真剣に取り合わなかったのは、私だ。
アリーチェに、屋敷に帰りたいと言わせたのも、間違いなく私だ。
彼女の無言のメッセージにも気付かなかった……。
幼い頃、彼女のことを迎えにいくと言ったのに、結婚後も彼女の部屋へ行ったこともない。
私はアリーチェに逃げられて、何ら不思議ではないんだ。
マックスから124条の意味を突き付けられ、アリーチェが私に会いたいと言う気がしない。
王族規約124条
『妃殿下及び王妃殿下が城を離れる際には、それぞれの伴侶へ承諾を得ること。並びにその間の公務については、事務官長と調整するべし。無断で責を逃れ、王城の管理区域を離れた場合は、妃の称号を剥奪する』
アリーチェが無許可で城を抜け出したと知られてしまえば、後で私がどんなに周囲に説得しても、処分を取り消すことは絶対にできない。
妃の自由を制限するものだが、あの条項は、妃を守るために、貴族議会で決められたものだ。
王族は夫婦であっても圧倒的に夫が優位となり、そこに暴力的な行為があろうと、国王や王子にものを言える者が存在しない。
耐えられなくなった妃が、逃げた後、2度と城へ連れ戻されないために貴族側から声が上がり、定められたものだ。
アリーチェの気持ちはまだ分からないが、彼女が城へ帰ってこられる可能性は何としても守りたい。
アリーチェがこの城を去ったと知ったときに、真っ先に浮かんだこと。
それは、毎日元気に私の執務室にやって来て、楽しそうに笑っているアリーチェの顔だった。
もう、2度とそれが見られなくなるのは絶対に無理だと、体が拒絶している。
そもそも幼い頃に、私がリーに惹かれたのは、彼女の知性や感性だった。
だが今はそんなことよりも、無邪気に私へ駆け寄ってくる姿に惹かれている。
優れた妃を失うより怖いのは、どうやっても理解できなかった奇抜な化粧と、派手なドレスを着ていた元気なアリーチェだ。
何が何でも貴女を取り戻す。
貴女に会えないと、生きていける気がしない…………。
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