封印された魔王を解放してしまいましたが、私が何とかしますので放っといてください〜奇跡の力を持つ1人の女性は、2人の王子から愛を捧げられる〜
瑞貴◆後悔してる/手違いの妻2巻発売!
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序章 日の目をみない「奇跡の力」と憂鬱
婚約の終わりへ
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私にとっては、あっという間に過ぎた時間。だけど実際には、会場内の楽曲が何曲も変わるほど、ジュリアス王子は私を後ろから抱きしめ、癒しの力を使ってくれていた。
「ジュリアス殿下……。ありがとうございます。殿下のおかげで、落ち着くことができました」
抱きしめられたままの体勢だけど、やっと声を発せるまでに落ちついた。
よかった、魔力も落ち着いて、もう漏れることもないようね。
この姿勢のままと言う訳にはいかない私は、王子の腕からすり抜け、互いの顔を合わせた。
「体調が戻ったようで良かった。正直、尋常ではない雰囲気に、このままリディアンヌ嬢が……倒れるのではないかと思った」
「ご心配をおかけして、申し訳ありませんでした」
「気にすることはない。体調のすぐれないものを介抱するのは当然のことだ」
「介抱……。殿下が私に癒しの力を使って下さったおかげで、十分に回復することができました」
今更ながらの、淑女の礼をする。
「さすが、リディアンヌ嬢だ。私が力を使っているのに気づくなんて。でも、こんなに長い時間は使ったことがなかったから……正直言うと、今、立っているのがやっとだ」
「……殿下に無理をさせてしまい、申し訳ありません」
「いや、気にしなくてもいい。勝手にやったことだ。でも、今日はダンスを踊るのは無理そうだ。しばらく、ここで時間をつぶすことにするさ」
と言われて、私は、ここにいるべきなのかしら……?
かと言って、会場に戻って、カール様とソフィア様を見ていられる訳もない。
「私は、どうしたらよいでしょうか?」
「今日のエスコートは……兄ではないのか? では、少し話しでもするか?」
****
ジュリアス王子とは、王城ですれ違うことや、婚約者として参加する王城の行事で顔を合わせることはあったけど、個人的に話したことはなかった。
婚約者の弟とはいえ、婚約者以外の男性と個人的に話すことは、令嬢の品位に影響するから、まあ当然のことなんだけど。
本来であれば、人の居ない場所で、異性と2人になる、この状況は、問題行動ととられてもおかしくはないのよね。
でも、私の問題を咎《とが》められても、もう行きつく先は……。
この年で、婚約が白紙になった時点で、貴族としての婚姻は、すでに絶望的なんだから。
ただの絶望に、尻軽女や、ふしだらなどのおまけが付くか付かないかの差だけなら、もう気にすることはない。
社交界に友人のいない私にとって、カール様のことを聞くことができるのは、父の他にいない。
今日見たことを、教えて欲しいという、私の願いもあって、ジュリアス王子の提案に、少し考えてから頷いた。
カール様の2歳年下のジュリアス王子は、私より1つ年上。
カール様も端正な顔立ちをしているけど、ジュリアス王子は、カール様とは違う系統の端正な顔立ちをしている。
カール様は美しく、いわゆる女性的で整った顔立ちに、国王とは髪色も瞳の色も違う。背が高くて線が細い、すらっとした美形青年といった印象ね。
だけど、ジュリアス王子は凛々しくて、黒髪に茶色い瞳は国王譲りの見た目。カール様と同じくらい背は高いけど、筋肉質でカール様とは対極的な2人。
あまり似ていない2人の理由は、カール様とジュリアス王子は生母が異なるから。カール様の生母は、カール様の出産後に出血が多すぎて、亡くなった。
国王は、前王妃の喪が明けてすぐに、現在の王妃を娶って、ジュリアス王子が誕生した。
ノマーン王国は、王位継承に出生順は関係ない。だから、その人物の素質や、周囲の思惑によって王太子が選ばれることになる。普通に考えれば、王妃が自分の産んだ子に継承させるように画策しそうだけど、王太子の選考には、一切の口出しをしていないと聞いている。
****
「そういえば、なぜ、庭にいらしたのでしょうか?」
私は、疑問に思っていたことを聞いてみた。
人目のつかない所に、本来であれば、この立場の方が来るはずはないのに。もしかして、女性との待ち合わせを、私が邪魔したのかもしれない。
「リディアンヌ嬢が、私の横を、ただならぬ表情で走り去ったから……自棄を起こさないか、気になって。疑ってすまなかった」
「あー……。ご心配をおかけして、申し訳ありませんでした」
「……っ。……っっ。……あの……、気にしても仕方のないことなのですが……、カール様と……。いえ、何でもないです」
「……兄とソフィア嬢のことか? 社交界はあることないことの噂や陰口でできているものだ。あまり、気にしない方がいい」
「……そうですか……」
はぁ~。そうは言っても、あの雰囲気は気にしなくて良い……なんてことはないと思われますが。それに、言葉とは裏腹に、何か言い難い顔をしている王子の表情が、全てを語っています。
この婚約は、とっくに終わっていたのに、私だけが知らなかったようね。
王族の酷いやり口に、私は猜疑心に苛まれてしまった。
.。.:*・゚☆.。.:*・゚☆.。.:*・゚☆.。.:*.。.:*・゚☆.。.:*・゚☆.。.:*・゚☆.。.:*
第9話を読んで、いただきありがとうございます。
リディとジュリアス王子、そして婚約者のカールディン王子。
この関係がどうなるのか……
追いかけていただけると嬉しいです(*ᴗˬᴗ)
感想、ブックマーク を
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「ジュリアス殿下……。ありがとうございます。殿下のおかげで、落ち着くことができました」
抱きしめられたままの体勢だけど、やっと声を発せるまでに落ちついた。
よかった、魔力も落ち着いて、もう漏れることもないようね。
この姿勢のままと言う訳にはいかない私は、王子の腕からすり抜け、互いの顔を合わせた。
「体調が戻ったようで良かった。正直、尋常ではない雰囲気に、このままリディアンヌ嬢が……倒れるのではないかと思った」
「ご心配をおかけして、申し訳ありませんでした」
「気にすることはない。体調のすぐれないものを介抱するのは当然のことだ」
「介抱……。殿下が私に癒しの力を使って下さったおかげで、十分に回復することができました」
今更ながらの、淑女の礼をする。
「さすが、リディアンヌ嬢だ。私が力を使っているのに気づくなんて。でも、こんなに長い時間は使ったことがなかったから……正直言うと、今、立っているのがやっとだ」
「……殿下に無理をさせてしまい、申し訳ありません」
「いや、気にしなくてもいい。勝手にやったことだ。でも、今日はダンスを踊るのは無理そうだ。しばらく、ここで時間をつぶすことにするさ」
と言われて、私は、ここにいるべきなのかしら……?
かと言って、会場に戻って、カール様とソフィア様を見ていられる訳もない。
「私は、どうしたらよいでしょうか?」
「今日のエスコートは……兄ではないのか? では、少し話しでもするか?」
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ジュリアス王子とは、王城ですれ違うことや、婚約者として参加する王城の行事で顔を合わせることはあったけど、個人的に話したことはなかった。
婚約者の弟とはいえ、婚約者以外の男性と個人的に話すことは、令嬢の品位に影響するから、まあ当然のことなんだけど。
本来であれば、人の居ない場所で、異性と2人になる、この状況は、問題行動ととられてもおかしくはないのよね。
でも、私の問題を咎《とが》められても、もう行きつく先は……。
この年で、婚約が白紙になった時点で、貴族としての婚姻は、すでに絶望的なんだから。
ただの絶望に、尻軽女や、ふしだらなどのおまけが付くか付かないかの差だけなら、もう気にすることはない。
社交界に友人のいない私にとって、カール様のことを聞くことができるのは、父の他にいない。
今日見たことを、教えて欲しいという、私の願いもあって、ジュリアス王子の提案に、少し考えてから頷いた。
カール様の2歳年下のジュリアス王子は、私より1つ年上。
カール様も端正な顔立ちをしているけど、ジュリアス王子は、カール様とは違う系統の端正な顔立ちをしている。
カール様は美しく、いわゆる女性的で整った顔立ちに、国王とは髪色も瞳の色も違う。背が高くて線が細い、すらっとした美形青年といった印象ね。
だけど、ジュリアス王子は凛々しくて、黒髪に茶色い瞳は国王譲りの見た目。カール様と同じくらい背は高いけど、筋肉質でカール様とは対極的な2人。
あまり似ていない2人の理由は、カール様とジュリアス王子は生母が異なるから。カール様の生母は、カール様の出産後に出血が多すぎて、亡くなった。
国王は、前王妃の喪が明けてすぐに、現在の王妃を娶って、ジュリアス王子が誕生した。
ノマーン王国は、王位継承に出生順は関係ない。だから、その人物の素質や、周囲の思惑によって王太子が選ばれることになる。普通に考えれば、王妃が自分の産んだ子に継承させるように画策しそうだけど、王太子の選考には、一切の口出しをしていないと聞いている。
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私は、疑問に思っていたことを聞いてみた。
人目のつかない所に、本来であれば、この立場の方が来るはずはないのに。もしかして、女性との待ち合わせを、私が邪魔したのかもしれない。
「リディアンヌ嬢が、私の横を、ただならぬ表情で走り去ったから……自棄を起こさないか、気になって。疑ってすまなかった」
「あー……。ご心配をおかけして、申し訳ありませんでした」
「……っ。……っっ。……あの……、気にしても仕方のないことなのですが……、カール様と……。いえ、何でもないです」
「……兄とソフィア嬢のことか? 社交界はあることないことの噂や陰口でできているものだ。あまり、気にしない方がいい」
「……そうですか……」
はぁ~。そうは言っても、あの雰囲気は気にしなくて良い……なんてことはないと思われますが。それに、言葉とは裏腹に、何か言い難い顔をしている王子の表情が、全てを語っています。
この婚約は、とっくに終わっていたのに、私だけが知らなかったようね。
王族の酷いやり口に、私は猜疑心に苛まれてしまった。
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第9話を読んで、いただきありがとうございます。
リディとジュリアス王子、そして婚約者のカールディン王子。
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