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本章3 魔王の力

魔王の魔力

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 私は、いつもより重い瞼を無理やり開けて目を覚ます。

 自分の寝台で横になっているけど……どうやって、ここに帰ってきたのか覚えていない。


 キュアの背中で酷い脱力があったところまでしか記憶がない。
 その後は……、ジュリアスが我が家まで運んできてくれたのよね……。
 寝てしまうなんて、恥ずかしい……。

 ----!
 朝日の眩しさを感じながら、絶望する。
 直前までの呑気な考えを、一気にかき消す。
 
 遂に始まってしまったのね…………。

 昨日までは無かった、一帯を覆う魔力を感じてしまう。
 魔王が、いつ動き出してもおかしくないのだと、肌で……体で……感じている。
 やっぱり避けられないのね。

 魔王の事も問題だけど、今の私では、直ぐに何かを出来るわけではない。
 今できる事は、昨日、森を再生しきれなかった所へ行くことね。

 魔物に食い荒らされて、既に山肌が丸裸になっていた。
 時間がない。


 私は身支度を整えて、応接室へ向かう。既に3日連続の顔ぶれが、我が家の書物を読んでいる。

 朝の挨拶を済ませると、私はジュリアスに昨日のお礼を伝える。

 案の定、ジュリアスが私を邸まで運んでくれていた。
 だけど!!

 信じられない! ーーーー私を寝台まで運んだのも、ジュリアスって。
 邸には、他にも人がいるでしょう!

 女性の部屋に入るなんて……何を考えているのかしら!

「ジュリアス! 昨日言おうと思っていたことだけど、私たちは友人よ!! 昨日、キュアに私たちの事を恋人と言われて、否定していなかったのも良くないわ! これからはきちんと訂正してよね! 貴方の立場だと、ちょっとしたことが問題になるのよ! そして、女性の部屋に入るのは、もっと問題よ!」

 ただ下を向いて何も言わないジュリアスの横で、クルリがぽつりと意味不明な事を言ってる。
「……殿下……これは手強い戦いですね……全く笑えませんよ……。殿下だけに任せていては、手遅れになります。僭越ながらこれからは、私も加勢いたしますから、邪魔しないでくださいね」

 2人から何故か悲壮感が漂っている。

 珍しく気を利かせたレイルが、今日の本題へと話題を変える。
 いいえ、気を利かせたのではなくて、自分の気になる事を確認したのかもしれないわね。

「リディアンヌ嬢。本日も森に向かわれるのですか? やはり殿下を1人にする訳にはいきません。私たちも同行することはできますか?」

「うーーん、キュアに聞いてみないとだけど…………、恐らく大丈夫じゃないかな? 2人乗せるくらいじゃ全く動じないで飛んでたし」

「確認をお願いします。出来れば、私たちもお供します」
 
 念話でキュアに確認すると、『出来ないことはない』と、遠回しな了解をされた。
 じゃあ、大丈夫か。
 今日は、同行騎士たちが増えるみたいだけど、目的は1か所だけだから、直ぐに終わるんだけどね。
 
「クルリ、レイルよろしく頼む」
「ふふふ、何をでしょうか? とりあえず私たちにも、状況を分析させてください」


 先に言わなきゃいけなかったのに、寝台で寝姿を見られたことに、気がそれちゃった。
 肝心な事を言わなきゃ。

 今朝から感じる、最大の不安を……。
「…………ジュリアス。今朝から、魔力を感じるの…………私以外の魔力」
 その場に一瞬で緊張感が走る。

「――――何! 魔王のものか?」
「断言はできないけど……そうとしか…………」

「リディ……今日は森の再生を諦めないか?」
「何を言ってるのジュリアス! そんなことしたら、あの区域の魔物が人の暮らす場所に出てきてしまうわよ!」
「それは分かっている。だが、リディ……」
「危険なのはわかってる。私は1人で行くから、王子様御一行はここに居ていいわよ。あの区画くらいなら、1人で行っても、何の問題もないわ」

 確かに、魔王は森にいるかもしれない。
 そこに踏み入るような事をすれば、真っ先に狙われる可能性もある。
 友達なんて言っても、ジュリアスはこの国の王子だもの。
 本来の戦いの場では、最前線で戦うはずのない立場の人間なんだから、不要な危険を負わせる必要はないのよ。

「馬鹿な事を言うな! 出発する準備だ」


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