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本章3 魔王の力

魔物の動き

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 私たちは魔王との遭遇に警戒しながら行動することになる。万が一接触してしまった場合は、とりあえず逃げる事で4人の意見がまとまった。
  魔王にも魔物にも、遭遇しないのが一番なんだけど………。

 キュアは4人を乗せることを、リディのお願いならと、何だか含みのある承諾を、してくれた。
 うーん確か……そうそう。キュアは人に触られるのが苦手とか言ってたもんね。それなのに、みんなを運んでくれるなんて、優しいのねキュアっ!

 森に入って直ぐの上空で、変化に気が付く。
 以前より森の木々が大きく成長して、青々と茂っている。
 増えすぎた魔物に食べ尽くされる前の森へ戻る。違うわね、ただ戻っただけじゃなくて、止まっていた成長が再び、促進された位の効果があったみたい。

「驚いたな!  昨日は暗くて気づかなかったが、元に戻る以上に、植物を成長させてるな! 新たに草も生えて、森中が植物で溢れているな。これだけあれば、しばらく大丈夫だろう」
「思った以上の作用があったみたいね……」
「そのようだ。…………精霊の力の根源が、どこから来ているのか気になるな」
「……うん…………そうね」

 植物の成長に精霊の力が関係するということは、魔物達にとって重要な力なのかもしれないわね。
 魔族は自分の核で、植物に宿る力を魔力に変える。
 人外の力を発揮する魔法……発動には魔力が必要で、魔力の根源は魔王そのもの。

 生物たちの傷や痛みを治し、植物の成長を促す癒しの力。……発動には精霊の力が必要。
 だけど、その力は魔王の封印後に弱まってしまった。この国に僅かに残る、微量な精霊の力を感知することができない、大半の国民が使えない。
 精霊の力と魔王は、何か関係があったのかしら…………?
 
 うーん……答えが、見つかりそうで、まだ手繰り寄せられない。


 昨日はノマーン王国の最東部、カモメイル公爵の直轄地近郊の森を、再生しきれなかった。その一部分に力を使ったら、森全体が回復できる。だから、無理してでも、何とかしたかった。
『もう少し頑張れるはず。まだ大丈夫……』その気持ちで、自分の体力以上の無理をしてしまった。
 昨日、一人で森の再生に来てたら、森で一晩キュアと過ごしてたのかしら?

 ……そっかぁー。ジュリアスが昨夜、私を寝台まで運んでくれたのは、邪な気持ちではなくって、途中から眠ってしまった私を、ただ心配していただけなのに。
 あんなに怒る必要もなかったのよね……何で、酷いこと言っちゃったんだろう。
 冷静になれば、出発前にジュリアスへ文句を言ったことが申し訳なくなってくる。
 きつく言い過ぎてしまったわよね……。
 謝らなきゃ。


 振り向いて、ジュリアスと目を合わせた瞬間。

 ――――!!
 魔物が凄い速度で、人の暮らす場所へ向かっているのを探知する。

「ジュリアス! 魔物がカモメイル公爵の直轄地に近づいてる。急いで、そこへ向かう」
「もう、森から出て来たのか!? どんな魔物か分かるか?」
「下級から中級の魔物が、何頭か近づいているわ」
「それなら、被害が出るかもしれないな……急ぐぞ!」
「キュア! 目的地を少しずらすから、お願いね!」
『リディのお願いなら、断れんからな。私の出来る事なら、何でもしてやるわい』

 張り詰めた緊張感の中、目指すは森ではなく、カモメイル公爵直轄地。


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