封印された魔王を解放してしまいましたが、私が何とかしますので放っといてください〜奇跡の力を持つ1人の女性は、2人の王子から愛を捧げられる〜
瑞貴◆後悔してる/手違いの妻2巻発売!
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本章5 手に入れたもの
聖女ミレーの目覚め①
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時間が惜しいのに、離れたところでキュアに乗り降りしているせいで、思った以上に時間がかかってしまった。
キュアがそのまま町中に降りれたら良いんだけどな。竜が町に降りるなんて、やっぱり無理だよね。
「キュア、この後は魔王の所へ行きたいんだけど連れて行ってくれる?」
『私には、魔王に会う理由はないが、リディが望むなら、連れて行くのは問題ない。まぁ向こうは私の顔など見たくないだろうがな』
「魔王に会いたくないのに、無理を言ってごめんね。でも、魔王が激昂するような事になったら、私のことは放っといて直ぐに逃げてよ」
『何を言っとる。リディを置いて逃げる訳なかろう』
「そんな嬉しいこと言ってくれるなんて」
キュアにここまで言われたら、怯えてばかりじゃ駄目ね。
魔王の気配もある、見覚えのある建物が、視界に入ってくる。
レイルに馬で連れて来てもらった時には、移動だけで1日近くかかったけど、キュアだと、あっという間ね。
いざ、ここまで来ると緊張する。魔王がどんな反応をするか、気が気ではない。
それに、目覚めたミレー様は、魔王と精霊王の力の事を受け入れられるのかしら?
キュアが、聖女ミレー様の石像のある建物の前へ降り立つと同時に、魔王が建物の入り口で、この先への侵入を拒むように立っている。
心臓の拍動が早くなって、掌が汗で濡れている。
大丈夫、落ち着いて。
「キュアか? 俺に何か言いに来たか? ……お前はもう、この世から消えたかと思っていたが」
『リディのおかげで、こうして元気にしておる』
不穏な空気を感じて、魔王とキュアの会話を遮るように、キュアの背中から、地面に飛び降りる。
「お前はっ! また来たのか? 相当俺に始末されたいようだな?」
敵対する意識を向けられ、喉に力が入って上手く声が出せない。
「こっ殺されに来たわけじゃないわよ。頼まれた『魔王の瞳』を持ってきたんだけど」
「本当か!」
ゆっくりと魔王に近づき、震える手を抑えながらチョーカーを渡す。
直ぐに、魔王から離れようとしたけど、手首を強く掴まれた。
「痛っ」
「貴様…………これはなんだ!?」
「魔王が探していたものでしょう?」
「ああ、間違いなくそうだ。だが、何だこれは?」
「痛い。説明するから手を離してもらえないかしら」
やっと、手を離してもらったけど、信じられない。
掴まれた所に、魔王の手形がついてる。これで少し掴んだだけなら、すごい力ね……。
「魔王は見たことないの? チョーカーっていうアクセサリーなんだけど。よく見える位置に魔王の瞳があれば、もう無くすこともないんじゃない? ネックレスより壊れにくいから嵌めてもらったけど、もしかして気に入らなかった?」
「……いや、良いと思う」
耳まで赤くして、やっぱり魔王って可愛いところがある。
付け方を説明して立ち去ろうとすると、またしても止められる。
「待て! お前も一緒にいてくれ。ミレーが目を覚ました時に何かあれば……キュアを助けてくれた、お前のその力を貸してくれ。それと、言い遅れたがキュアを助けてくれたことを心から感謝する。こいつは、俺がいない間、俺の代わりに魔物達を助けていた大事な存在だ。余裕がなくて傷つけてしまったが、お前のお陰で……助かった」
えっ、今まで、キュアをただの竜だと思っていたけど、実は魔王に次ぐ存在だったってこと!? そもそも、竜なんて他に見たことがないもの、分かる訳ないんだけどね。
もしかして、魔王とキュアとの関係も、これからは良くなっていくのかしら。
何より、魔王から願い出てくれるなんて、意外だったけど、私もミレー様が目覚めるのを見守りたい。
「わかったわ。でも、キュアの事は本人にきちんと伝えてあげて」
魔王と2人で建物へ入り、キュアはそのまま外で待つことになる。
魔王自ら、ミレー様へチョーカーを付けているけど、その手つきが余りにもぎこちない。戸惑っている様子が可笑しくて、思わず笑ってしまう。
魔王は至って真剣なんだろうけど、ひどく不器用な姿に、張り詰めた空気が少し緩んだ気がする。
魔王がミレー様を支える手つきが優しくて、ミレー様のことを大切に想っているのが伝わってくる。
私が勝手な思考を巡らせている間に、魔王が魔法を使った。
だけど、いつ発動したかなんて、私に理解出来る訳はなく、ミレー様の封印が解かれたことでわかった。
「魔王、ミレー様が目覚める前に、私がミレー様の手首を治してもいい?」
「ああ、頼む」
幼いころ見た石像のミレー様は手首に亀裂が入っていたけど、今は両手首から先が失われている。
精霊王の力を持つミレー様に、私の力でも癒しの力が効くのか心配だったけど、問題なかった。
人間の体に精霊王の力を与えられてしまった聖女ミレー様。
目を覚ますまで、あと少し。
キュアがそのまま町中に降りれたら良いんだけどな。竜が町に降りるなんて、やっぱり無理だよね。
「キュア、この後は魔王の所へ行きたいんだけど連れて行ってくれる?」
『私には、魔王に会う理由はないが、リディが望むなら、連れて行くのは問題ない。まぁ向こうは私の顔など見たくないだろうがな』
「魔王に会いたくないのに、無理を言ってごめんね。でも、魔王が激昂するような事になったら、私のことは放っといて直ぐに逃げてよ」
『何を言っとる。リディを置いて逃げる訳なかろう』
「そんな嬉しいこと言ってくれるなんて」
キュアにここまで言われたら、怯えてばかりじゃ駄目ね。
魔王の気配もある、見覚えのある建物が、視界に入ってくる。
レイルに馬で連れて来てもらった時には、移動だけで1日近くかかったけど、キュアだと、あっという間ね。
いざ、ここまで来ると緊張する。魔王がどんな反応をするか、気が気ではない。
それに、目覚めたミレー様は、魔王と精霊王の力の事を受け入れられるのかしら?
キュアが、聖女ミレー様の石像のある建物の前へ降り立つと同時に、魔王が建物の入り口で、この先への侵入を拒むように立っている。
心臓の拍動が早くなって、掌が汗で濡れている。
大丈夫、落ち着いて。
「キュアか? 俺に何か言いに来たか? ……お前はもう、この世から消えたかと思っていたが」
『リディのおかげで、こうして元気にしておる』
不穏な空気を感じて、魔王とキュアの会話を遮るように、キュアの背中から、地面に飛び降りる。
「お前はっ! また来たのか? 相当俺に始末されたいようだな?」
敵対する意識を向けられ、喉に力が入って上手く声が出せない。
「こっ殺されに来たわけじゃないわよ。頼まれた『魔王の瞳』を持ってきたんだけど」
「本当か!」
ゆっくりと魔王に近づき、震える手を抑えながらチョーカーを渡す。
直ぐに、魔王から離れようとしたけど、手首を強く掴まれた。
「痛っ」
「貴様…………これはなんだ!?」
「魔王が探していたものでしょう?」
「ああ、間違いなくそうだ。だが、何だこれは?」
「痛い。説明するから手を離してもらえないかしら」
やっと、手を離してもらったけど、信じられない。
掴まれた所に、魔王の手形がついてる。これで少し掴んだだけなら、すごい力ね……。
「魔王は見たことないの? チョーカーっていうアクセサリーなんだけど。よく見える位置に魔王の瞳があれば、もう無くすこともないんじゃない? ネックレスより壊れにくいから嵌めてもらったけど、もしかして気に入らなかった?」
「……いや、良いと思う」
耳まで赤くして、やっぱり魔王って可愛いところがある。
付け方を説明して立ち去ろうとすると、またしても止められる。
「待て! お前も一緒にいてくれ。ミレーが目を覚ました時に何かあれば……キュアを助けてくれた、お前のその力を貸してくれ。それと、言い遅れたがキュアを助けてくれたことを心から感謝する。こいつは、俺がいない間、俺の代わりに魔物達を助けていた大事な存在だ。余裕がなくて傷つけてしまったが、お前のお陰で……助かった」
えっ、今まで、キュアをただの竜だと思っていたけど、実は魔王に次ぐ存在だったってこと!? そもそも、竜なんて他に見たことがないもの、分かる訳ないんだけどね。
もしかして、魔王とキュアとの関係も、これからは良くなっていくのかしら。
何より、魔王から願い出てくれるなんて、意外だったけど、私もミレー様が目覚めるのを見守りたい。
「わかったわ。でも、キュアの事は本人にきちんと伝えてあげて」
魔王と2人で建物へ入り、キュアはそのまま外で待つことになる。
魔王自ら、ミレー様へチョーカーを付けているけど、その手つきが余りにもぎこちない。戸惑っている様子が可笑しくて、思わず笑ってしまう。
魔王は至って真剣なんだろうけど、ひどく不器用な姿に、張り詰めた空気が少し緩んだ気がする。
魔王がミレー様を支える手つきが優しくて、ミレー様のことを大切に想っているのが伝わってくる。
私が勝手な思考を巡らせている間に、魔王が魔法を使った。
だけど、いつ発動したかなんて、私に理解出来る訳はなく、ミレー様の封印が解かれたことでわかった。
「魔王、ミレー様が目覚める前に、私がミレー様の手首を治してもいい?」
「ああ、頼む」
幼いころ見た石像のミレー様は手首に亀裂が入っていたけど、今は両手首から先が失われている。
精霊王の力を持つミレー様に、私の力でも癒しの力が効くのか心配だったけど、問題なかった。
人間の体に精霊王の力を与えられてしまった聖女ミレー様。
目を覚ますまで、あと少し。
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