封印された魔王を解放してしまいましたが、私が何とかしますので放っといてください〜奇跡の力を持つ1人の女性は、2人の王子から愛を捧げられる〜
瑞貴◆後悔してる/手違いの妻2巻発売!
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本章5 手に入れたもの
聖女ミレーの目覚め②
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ミレー様の目が開くのを、魔王と共に固唾を呑んで見守った。
しばしの間、ミレー様を見つめていると微かに瞼が動き始める。
「魔王、ミレー様の表情が動いて来た。そろそろ目が覚めそう」
「そうだな。ミレー、起きろ! 起きろ! 早く、目を覚ませ!」
ミレー様はゆっくりと目を開き、そのまま魔王を見つめている。
魔王に抱えられて目が覚めるなんて、驚くだろうと思っていたけど、ミレー様は意外な反応をする。
「私の目が覚めても、今回は居なくならないのね」
「みっミレー、あの時のこと分かってたのか!」
「傍にいる、魔王の魔力に気づかない訳ないでしょう。姿を見なくても分かるわよ。いつも魔王が私の近くにいるのだって気づいていたけど、分かってなかったの?」
「っ、っいや、そっその、いつも近くに居たのは、やましい訳では。まさか、気づかれているとは思わなかったから、そのだな」
「そんなに焦らなくても、魔王はただ近くにいただけで、私には何もしてないじゃない。それより私の方こそ、石にしちゃってごめん」
「い、いや、それを言うなら、俺が止められなかったのが悪かったんだ、気にするな」
ミレー様が魔王を拒絶するかと思ったのは、余計な心配だった。2人の交わす会話を、ただ静かに見守っていると、ミレー様は私に視線を移す。
「あなたがリディちゃんね。私たちの封印を解いてくれてありがとう」
えっ? まだ、私は名乗ってもいないけど。名前を知っている理由が分からない。
「どうして私の事を?」
「貴女が小さいころ、私たちの所へ来たのは覚えている?」
「はい。父と一緒に1度だけ行ったことがあります」
「私に向かって、『私はリディだけど、聖女様にそっくりなの。痛そうなこの手首は、いつかきっと、私が必ず治してあげますから』って、頭の中に届いたから」
「私なら言っていそうですけど、全く覚えてないです」
「そうなの? 結局本当に治してくれたみたいね、ありがとう。あの時、リディちゃんの言葉を聞いた森の精霊達が、貴女に付いて行ってしまったのよ。今は貴女になついている精霊がもっと沢山いるみたいだけど」
「精霊……?」
「そうよ。人間には見ることができないから分からないかぁ」
「もしかして、ミレー様は精霊王の事も、ご存じだったんですか?」
「あー、お父さんが毎日、寝言で懺悔してたやつね。どこまでが、本当で、お父さんの夢なのか? 分かってなかったけど、私には何かあることは分かっていた。だから、どうにかしなきゃいけなかったのに、それ以上の問題がいっぱいあって」
「……寝言ですか。寝言としてお聞きになってたのは、きっと全て事実だと思います。あのー、気になることがあって。もしかして、私が魔力を漏らしてしまった時に、言葉をかけてくれたのは、もしかしてミレー様でしょうか?」
「そうよ。石から解かれて目が覚めたら、暴発しそうな魔力を感じて。その原因はリディちゃんだって直ぐに分かったから。自分と同じ顔のリディーちゃんを思い浮かべて、念話をしたの。でも、その後すぐに寝ちゃったみたい。……ねえ魔王」
「いや、まだ、あの時は、起きるには早すぎたからだ」
「そう。それで、魔王が血眼になって探していた物は見つかったのかしら?」
「…………」
「ぅーもうっ、何も言ってくれないのね。もう知らないんだから! リディちゃん、ありがとう。私が出来なかったことを、何とかしてくれて本当に助かった。魔王は、私には教えてくれないんだもん。そのせいで、時間が経ち過ぎて、自分の生きる世界がすっかり変わっちゃった」
「ミレー様」
「でも、大丈夫。これからは、魔王がずっと一緒にいてくれるはずだから」
「当たり前だ! ずっと一緒に決まってる!!」
「やっと……、魔王の気持ちを直接聞けた。ねぇ、あの時言ってた『好き』って言葉も、もっと聞こえるように、ちゃんと言って欲しいんだけど」
「聞こえてたのかっ? いやっ、あれは、聞かせるつもりじゃなくて」
「じゃあ、聞かせるために言って欲しい」
まさかの仲睦ましい雰囲気に唖然とする。私はここに居ても良いのかな?
うん、確実にお邪魔のようね。立ち去るために入口へ向けて歩き始める。
あっそうだ、忘れてた! 魔王から預かってるものを、確認しておかなきゃ。
「魔王、人里に現れた大量の魔物を捕獲しているんだけど、どうしたらよいのかしら?」
「勝手に森を出た魔物のことは、お前ら人間が好きにすればいい。逆にお前ら人間が森に入ってきて、魔物に何かしたら、こちらも同じことをするだけだ。互いの生活を侵略しなければ、不要な争いは起きない。まあ、人間は直ぐに人のものを欲しがるからな、そうなれば、俺が直々に始末してやる」
「しっ始末……森に入って、無暗に魔物に近づかなければ、良いってことよね。じゃあ後は、ミレー様と仲良くしてね」
「お、あ、わ、わ」
それまで、切れっ切れっだったのに、ミレー様の事を振ると、おろおろしている魔王って、やっぱりかわいいわね。
さてと……本当にもう、この場から立ち去ろう。
だって、私も、もう一度しっかりジュリアスに伝えなきゃ。
早く戻って、ジュリアスにもう1回、私の気持ちを聞いてもらわなきゃ。
しばしの間、ミレー様を見つめていると微かに瞼が動き始める。
「魔王、ミレー様の表情が動いて来た。そろそろ目が覚めそう」
「そうだな。ミレー、起きろ! 起きろ! 早く、目を覚ませ!」
ミレー様はゆっくりと目を開き、そのまま魔王を見つめている。
魔王に抱えられて目が覚めるなんて、驚くだろうと思っていたけど、ミレー様は意外な反応をする。
「私の目が覚めても、今回は居なくならないのね」
「みっミレー、あの時のこと分かってたのか!」
「傍にいる、魔王の魔力に気づかない訳ないでしょう。姿を見なくても分かるわよ。いつも魔王が私の近くにいるのだって気づいていたけど、分かってなかったの?」
「っ、っいや、そっその、いつも近くに居たのは、やましい訳では。まさか、気づかれているとは思わなかったから、そのだな」
「そんなに焦らなくても、魔王はただ近くにいただけで、私には何もしてないじゃない。それより私の方こそ、石にしちゃってごめん」
「い、いや、それを言うなら、俺が止められなかったのが悪かったんだ、気にするな」
ミレー様が魔王を拒絶するかと思ったのは、余計な心配だった。2人の交わす会話を、ただ静かに見守っていると、ミレー様は私に視線を移す。
「あなたがリディちゃんね。私たちの封印を解いてくれてありがとう」
えっ? まだ、私は名乗ってもいないけど。名前を知っている理由が分からない。
「どうして私の事を?」
「貴女が小さいころ、私たちの所へ来たのは覚えている?」
「はい。父と一緒に1度だけ行ったことがあります」
「私に向かって、『私はリディだけど、聖女様にそっくりなの。痛そうなこの手首は、いつかきっと、私が必ず治してあげますから』って、頭の中に届いたから」
「私なら言っていそうですけど、全く覚えてないです」
「そうなの? 結局本当に治してくれたみたいね、ありがとう。あの時、リディちゃんの言葉を聞いた森の精霊達が、貴女に付いて行ってしまったのよ。今は貴女になついている精霊がもっと沢山いるみたいだけど」
「精霊……?」
「そうよ。人間には見ることができないから分からないかぁ」
「もしかして、ミレー様は精霊王の事も、ご存じだったんですか?」
「あー、お父さんが毎日、寝言で懺悔してたやつね。どこまでが、本当で、お父さんの夢なのか? 分かってなかったけど、私には何かあることは分かっていた。だから、どうにかしなきゃいけなかったのに、それ以上の問題がいっぱいあって」
「……寝言ですか。寝言としてお聞きになってたのは、きっと全て事実だと思います。あのー、気になることがあって。もしかして、私が魔力を漏らしてしまった時に、言葉をかけてくれたのは、もしかしてミレー様でしょうか?」
「そうよ。石から解かれて目が覚めたら、暴発しそうな魔力を感じて。その原因はリディちゃんだって直ぐに分かったから。自分と同じ顔のリディーちゃんを思い浮かべて、念話をしたの。でも、その後すぐに寝ちゃったみたい。……ねえ魔王」
「いや、まだ、あの時は、起きるには早すぎたからだ」
「そう。それで、魔王が血眼になって探していた物は見つかったのかしら?」
「…………」
「ぅーもうっ、何も言ってくれないのね。もう知らないんだから! リディちゃん、ありがとう。私が出来なかったことを、何とかしてくれて本当に助かった。魔王は、私には教えてくれないんだもん。そのせいで、時間が経ち過ぎて、自分の生きる世界がすっかり変わっちゃった」
「ミレー様」
「でも、大丈夫。これからは、魔王がずっと一緒にいてくれるはずだから」
「当たり前だ! ずっと一緒に決まってる!!」
「やっと……、魔王の気持ちを直接聞けた。ねぇ、あの時言ってた『好き』って言葉も、もっと聞こえるように、ちゃんと言って欲しいんだけど」
「聞こえてたのかっ? いやっ、あれは、聞かせるつもりじゃなくて」
「じゃあ、聞かせるために言って欲しい」
まさかの仲睦ましい雰囲気に唖然とする。私はここに居ても良いのかな?
うん、確実にお邪魔のようね。立ち去るために入口へ向けて歩き始める。
あっそうだ、忘れてた! 魔王から預かってるものを、確認しておかなきゃ。
「魔王、人里に現れた大量の魔物を捕獲しているんだけど、どうしたらよいのかしら?」
「勝手に森を出た魔物のことは、お前ら人間が好きにすればいい。逆にお前ら人間が森に入ってきて、魔物に何かしたら、こちらも同じことをするだけだ。互いの生活を侵略しなければ、不要な争いは起きない。まあ、人間は直ぐに人のものを欲しがるからな、そうなれば、俺が直々に始末してやる」
「しっ始末……森に入って、無暗に魔物に近づかなければ、良いってことよね。じゃあ後は、ミレー様と仲良くしてね」
「お、あ、わ、わ」
それまで、切れっ切れっだったのに、ミレー様の事を振ると、おろおろしている魔王って、やっぱりかわいいわね。
さてと……本当にもう、この場から立ち去ろう。
だって、私も、もう一度しっかりジュリアスに伝えなきゃ。
早く戻って、ジュリアスにもう1回、私の気持ちを聞いてもらわなきゃ。
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