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本章5 手に入れたもの

待てななくて飛び込んだ、その先

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 魔王とミレー様に別れを告げ、王都までキュアに運んでもらう。
 早くジュリアスに会いたい。
 昨日、聴けなかったジュリアスの想いをこのままにしておけない。
 あぁー、会いたいと思い始めたら、どうしてこんなに時間が長く感じるんだろう。

 ――やっと、ジュリアスがいる王城が見えてきた。
 あっ! あのバルコニーに立っているのは、間違いなくジュリアスだ。暗がりの中でも分かる貴方のシルエット。
 昨日は一刻の猶予もなくて、窓から飛び込んけど、今日は、そうやって王城に飛び込んだら怒られそう。
 うーん、やっぱり気にしない。だって、もう我慢ばかりの自分は、捨てるって決めたんだから。

「キュア、あのバルコニーへお願い!」
『承知した。あー、リディの恋人か』
「うんそうなの。じゃあ、またねキュア」
 キュアの背中から、バルコニーめがけて飛び降りる。
 ――ストン。
 静かにジュリアスの前に降り立った。

「リディ! だから言っただろう。あんな高い所から飛び降りたら危ないって!」
「私も言ったわよ! 風魔法を使っているから大丈夫って! だって、ジュリアスに早く会いたかったから。少しでも早く来たかったから、ジュリアスは違うの?」

「もう待てる訳ないだろう。リディが私の気持ちを振り回すから、もう限界だった。居ても立ってもいられず、戻ってくる姿をここから探してた。竜が庭に降り立ったら、私がここから飛び降りて、リディを迎えに行こうと思っていた」
「うふふっ、ジュリアスだって私と同じ事を考えてるんじゃない」

「まあな。私はリディのことが好き過ぎるからな。あの日、地下室でリディに拒絶された時は、自分の立場に絶望した」
「ジュリアス……」
「もし、リディが昨日私の元へ来てくれなければ、この煩わしい身分を捨てるつもりだった。私が本当に手に入れたい貴女を諦めるなんてできないからな」
「ごめんなさい、あの時は逃げちゃって。本当は嬉しかったのに、素直になれなくて。だって、ここだと自分が自分でいられなくなるから。でも、それでも、ジュリアスが好きだから、一緒に居たいの」

「あぁーー、やっと、やっとだ。リディからその言葉を聞きたかった。どれ程この時を待ち望んでいたか、貴女は分かっていないだろうな。ぅっ、ちょっと待って、嬉し過ぎてどんな顔をすれば良いのかわからない」

「私だって、どんな顔して良いのかわからないわよ。淑女は微笑むだけで、笑ったら駄目なんて。ジュリアスの前で、ちゃんとできるかわからない」

「リディは何も気にせず、ありのままの感情で振舞えばいい。リディが私の傍に居たいと思ってくれるだけで、一つの問題もないから。これからは、竜に乗って国中を回って、自由にリディの力を使えばいい。だけど、毎日必ず私の元に帰ってくる事だけは約束して欲しい。放っといたら、リディはいつまでも好きな事してそうだからな」
「えっ、本当に!? そんな事して良いの?」

「既に国中がリディと竜のことは知っている。今朝、リディが何も聞かずに飛び出していくから伝えるのが遅くなっただけだ」
 そう言いながら、私のことを抱きかかえるジュリアス。

「ジュリアス?」
「この部屋に連れてくるのは、まだまだ先だと思っていたのに、リディ自ら飛び込んで来るなんて思ってもいなかった」
 そのまま、バルコニーから部屋の中へ運ばれる。
「ここは……」
「私の部屋だ。そもそも、私がバルコニーに立っている時点で気づくだろう。正直どうやってリディをここへ連れて来ることができるのか分からなかったが、案外簡単だったな」

 王族の私室……。もしかして、とんでもないところに飛び込んできちゃった!?
 ジュリアスに私の気持ちを伝えたかっただけなのに、どうしよう。急展開過ぎる状況に気持ちが追い付かなくて、体が強張る。
「そんな緊張しなくても大丈夫だ。リディの心の準備ができるまで、待つつもりだから。今日は、私がやり直したいと思っていること以上の事はしない。それに……クルリから、私が兄と一緒だと言われることは一向に構わないが、リディがあの娘と同じだと言われるのは、絶対に許せないからな」 
「やり直し? それ以上……」
 
 ジュリアスに、優しくソファーに座らせられる。
 ねぇジュリアス、「あの娘と同じ」って、どういう意味? クルリが何か関係あるの?


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