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彼の気持ちを確信していたはずの彼女は、全てを受け入れた

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 デルフィーから見て、明らかに飲み過ぎの彼女は、彼が自分の部屋へ招き入れる前に考えていた通りの要求を口にした。
 アベリアは、自分の気持ちを途切れ途切れに、緊張しながらデルフィーへ初めて打ち明けた。
「きっと、デルフィーには、気づかれていたと思うけど……、私は、デルフィーが大好きで。……今までは、ただ一緒にいられるだけで、幸せだった……。でも、私の初めては全部……、デルフィーとがいい。私がまだ知らない事を、教えてくれるのも……、してくれるのも、……デルフィーがいい」

 昼間、侯爵へ「月のもの」と言ったのは、侯爵を欺くための嘘だった。
 彼女の月のものは、とうに過ぎていた。

「アベリア様の気持ちには気づいていました。そんな自分も、身の程も弁えず、当主の妻であるあなたの事が、愛おしくてたまらないんです。本当であれば、私がアベリア様の大事なものを奪ってはいけないことは、頭では分かっているんです。でも……ここまで言われて、我慢できるわけがありません。やっぱり、止めると言うなら、今しかありませんよ。本当にいいんですね」

「愛してるから、お願い全部して」
 アベリアの事を、思わずギュッと抱きしめた。
 アベリアから、ずっと聞きたくてたまらなかった、けど、聞けると思っていなかった言葉が自分へ発せられた。
 デルフィーは、嬉しくて言葉も出なかった。
 それだけでも幸せなのに、いつもは絶対に見せない甘えた仕草で、自分を強請る彼女が可愛過ぎた。
「愛してますアベリア様。まさか、こんな風に甘えてもらえるなんて、思ってもいませんでした」
 
 部屋に彼女を招いた時点で、彼は拒むつもりはなかった。
 そして、今日までお互いの想いを伏せていただけの、好き同士の2人は、当然の流れで結ばれることになる。

 デルフィーは、恋焦がれた彼女のぷっくりとしたピンクの唇に、やっと触れることが出来た。
 優しく触れた唇が離れると、「今のじゃ分かんない、もう一回」と、せがんでくる彼女。
 初めは、慈しむように触れていたデルフィーだったけど、その言葉を聞いて、遠慮は無くなった。
 むさぼるように彼女の唇を塞ぎ、舌を絡めた。それに応えるアベリアは、目を潤ませ、トロンとした表情をしていた。
 そして、アベリアの白く滑らかな肌、ピンクに尖ったもの。口で彼女の全てに触れて、今まで出来なかった、彼女の味と香りを堪能していた。
 彼の唇が触れる度、アベリアは胸をビクンと突き上げて、全身で彼の温かさを感じて悦んでいた。彼女は、うずうずした気持ちが我慢できずに、自ら足を広げて彼に「ここも」と強請っていた。
 今まで見た事も無い色香を纏い、素直に自分を求める彼女に、ぞくっとしたデルフィー。
 ちょっと意地悪かと思いつつも、彼女の気持ちを、あえてアベリアに言わせるように聞き出していた。
 
 初めて男性を受け入れる彼女は、苦痛に顔を歪ませ、いつもは出さない程、大きな声で痛みを訴えていた。
 痛がる彼女の顔は、これから先もずっと、自分だけに見せた表情であるはず。そう思うと、どうしようもない優越感を感じて、それを目に焼き付けていた。
 それに、狭すぎる彼女を分け入る時、正直言うとデルフィー自身も痛かったし、なんだかそれも嬉しかった。
 2人で同じ苦痛を味わい、それがじわじわと快感に変わるまで、お互いを揺すりあっていた。
 デルフィーは、彼女の痛みを気にしていたけど、気づけば彼女自ら腰を激しく揺らし彼を奥まで求めていた。

 アベリアは、緊張しながら己の願いを口にするまで、冴えわたっていた彼女の思考も、デルフィーが受け入れてくれたことで、緊張は解けていった。
 それと同時にやってきたワインの効果。
 華奢な彼女の体に多すぎたワインは、いつもは冷静な彼女を激しく淫らに乱れさせた。
 彼が、一度も見たことが無い、欲望のままの彼女。
 そして、彼女は彼の熱いものを欲しがった。
 躊躇った彼だけど、何度も激しく求める彼女に抗える訳もなく、彼の欲望は彼女の中へ全て吐き出された。
 ぐちゃぐちゃな感情のアベリア。
 それでも、デルフィーの熱を受け入れたことで、きっと大丈夫だと確信した。
 彼も自分と同じ気持ちで、これから伝えることも、絶対に受け入れてもらえると。
 
 これまでの人生で一番幸せを感じた時間が、もっと続いて欲しいと、心の底から願ったアベリア。

「デルフィーと一緒にいられるなら……、他には何もいらない。2人で、この侯爵家を出て一緒に暮らしましょう。あなたと並ぶ幸せを知ってしまったから、もう離れるなんてもう考えられない。私は、あなたと共に生きて行ける未来を手に入れたいから……。それ以上に欲しいものは何もないの」

 本当はデルフィーもアべリアのお願いに応えたかったし、応えるつもりだった。
 そのつもりがなければ、彼女の事を抱ける訳がなかったから。
 だけど、アべリアが口にした真意に確信が持てなかった。

 今日やってきた侯爵へのただの当てつけなのか。
 初めての快楽に酔ったのか。
 飲み過ぎたワインに酔っているのか……。
 デルフィーは、彼女が全ての酔いから醒めた翌朝、もう一度、彼女の気持ちを確認したかった。
 
「その気持ちが大変嬉しく、私も同じ気持ちです。ですが今は、それにはお応えは出せません」
 アベリアは、彼の気持ちをその言葉通りに受け取って、静かに微笑んで頷いた。

 初めから、1度だけしかこの事を伝える気は無かったから。
 今日だけ許される、我がままと決めていた彼女の覚悟は、この時に決まった。
 それでも、アベリアは彼の出した応えに、少しの不満も抱かず納得していた。
 愛する人に苦労はさせたくなかったし、彼がこれまで、この領地で成し得て来た事も、道半ばであることを知っていたから。
 
 この夜、それまでゆっくりと動いていた2人の歯車は、止まってしまった。
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