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第3章 白輝の勇者エデン・ノーティス
cys:51 バラガスへの真罰
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「な、なんですと?! た、た、大変申し訳ございません!」
マジックポータルの向こうで、バラガスの父親は目を見開いて飛び上がりそうな勢いで慌てふためいた。
自分が一番危惧した事に加え、その当事者がいきなり出てきたのだから当然だ。
そんな父親に多少の心苦しさは感じつつも、ノーティスは話を続けていく。
「まあ、僕はまだマシなんですけど、バラガスさんは罪もない一市民を斬りつけましたので、その方への賠償もお願いします」
「ほ、本当にき斬りつけたのですか? 罪も無い一市民を?!」
「はい。目撃者は街中の人と、証拠は衛生兵のクリスタルログに残ってます」
「……な、なんと……」
あまりにもムチャクチャ過ぎて言葉を失うバラガスの父親に、ノーティスはさらに告げる。
「これがバレたら大問題ですけど、もしこれを隠蔽しようとしてバレたら、お家取り潰しは避けられないでしょうね」
「あっあぁ……そう、ですね……」
しばらく沈黙が流れた後、ノーティスは静かに口を開いた。
「まあ、そこはアナタにお任せします。ちゃんとご子息様の犯罪を認め謝罪した上で息子を切るか、それとも隠蔽ようとしてバレて、お家取り潰しになるかは」
「うぅっ……!」
両手で頭を抱え、うつむきながら嘆きを零すバラガスの父親。
ノーティスは、そんなバラガスの父親に余りこれ以上は言いたく無かった。
声と話し方から、彼の人格が伝わってきたから。
けれど、皆の為にその気持をグッと堪え敢えて言う。
「……ちなみに申し訳ないですけど、自分もみんなも素直に証言しますよ。さぁ、どちらを選びますか?」
ノーティスがそう尋ねると、バラガスの父親はスッ表情を落としバラガスに告げる。
バラガスにとっての処刑宣告を。
「バラガス。お前は今日で貴族の身分と財産を剥奪し、我が家から追放処分とする」
「そ、そんな! お父様!」
「馴れ馴れしく呼ぶな! お前みたいなヤツは、もう息子ではない」
バラガスの父親はそう告げると、マジックポータルの向こうでノーティスに深々と頭を下げる。
「エデン・ノーティス様、大変申し訳ございません。この事の公表と皆様への賠償はこれからさせて頂きますが、それで宜しいでしょうか?」
そう問われたノーティスは、みんなにこれでいいかと問うと満場一致で賛成だった。
「大丈夫です。後、賠償額もかなり大きくなりそうなので、王様には取り潰さないよう自分から伝えておきます」
「おおっ! かたじけない」
「いいんです。バラガスさんの事だけちゃんとしてくれれば」
ノーティスはそこまで言った時、ちょっと閃いた。
「あっ、ちなみにお父さん、こういうのどうでしょう?」
「な、なんでしょうか?」
「バラガスさんの事、追放した後は騎士団に預けてほしいんです」
「騎士団に?!」
「はい。もちろん、身分と財産は没収しての事なので一兵士からですが。それで、騎士団のみんなからちゃんとした人間になったと認められたら、戻してあげてもいいと思うんで」
「それは素晴らしい! さすが勇者になられるお方! ……ただ、本当に宜しいんでしょうか」
少し声のトーンが柔らかくなったバラガスの父親に、ノーティスは少しきつめの口調で言う。
締める所は、ちゃんとしとかないとダメから。
「いいです。ただその代わり、バラガスさんがそこから逃げる事は、決して許さないで下さい。更生するまで何年でも……何十年でもです!」
「分かりました。本日からそう致します……!」
その会話を聞いているバラガスは、あまりの恐ろしさにヒイッ! と悲鳴を上げてガタガタと震えている。
バラガスにとって、これ以上ない最悪な状態になる鉄槌が下ったからだ。
考えただけで気を失いそうになる。
けれど当然、騎士団の皆はニヤニヤしながらバラガスを見つめている。
「バラガ~~~ス、入団おめでとう。歓迎するぜーーーー♪」
「ハハッ、よかったなバラガス。正式に認めてもらえて♪」
「まあこれから何年か、もしくは何十年の付き合いになるからな……みっちり仕込んでやるよ!」
騎士団達からそんな言葉と眼差しを向けられたバラガスは、心の底から声にならない悲鳴を上げ体をフラフラさせると、再びその場にドシャッとへたり込んだ。
バラガスの脳裏に、これから先の過酷な人生がまるで未来視のように駆け巡る。
「うっ……うっ……うわぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
それを見て全て収まったと感じたノーティスは、ルミの事をスッと見つめた。
「ルミ、さすがよく分かったな」
「とーぜんです。私はノーティス様の執事ですから♪ それに、救護班等も要請済です」
「……! ほんっっと、頼りになるなルミ。ありがとう! ちなみに、就任式どうする? もう本当に時間無いんだけど……」
「取りあえず、ゴールドエリアまで行けば何とかなりますので、もう行きますよ」
そう言われたノーティスが車に乗ろうとすると、メイとロバートが声をかけてきた。
「ノーティス、ありがとう♪」
「ありがとうな、ノーティス……さん」
「ロバート、さんなんかつけるなって」
「いや、お前さん今から勇者様だろ? だからなんかよ……」
ロバートはそう言ってガラにも無くドモった。
元々豪快な性格ではあるのだが、律儀な所もあるからだ。
ノーティスはそんなロバートに微笑む。
「フッ、俺らは一緒に戦った戦友だろ。だからまた会おう、ロバート」
その言葉にロバートもニッと笑みを浮かべた。
「あぁ、またな……ノーティス!」
◆◆◆
みんなに見送られながらその場を後にしたノーティスに、ルミは運転しながら尋ねる。
ちょっと気になる事があったから。
「ノーティス様、さっきのは一体何だったんでしょう?」
「さっきの?」
「はい。先程、メイという子の父親が呟いてた件です」
ルミからそう尋ねられたノーティスは、前を見ながら思い返していた。
あの場から去る直前に、メイの父親は確かに呟いていたからだ。
───確かにアレは何だったんだろう? 彼は仰向けになりながら、空に何かが飛んでるって言ってたけど、俺もロバートも何も見えなかった……魔力クリスタルが破壊された事による幻覚? いや、それとも……
「ノーティス様?」
「あっ、あぁ。多分、ただの幻覚だろ」
「幻覚、ですか……」
「うん。メイの父親以外、誰も何も見えなかったから……」
そう答えるノーティスの横顔をチラッと見たルミは、ノーティスが、何か別の事を考えているような気がした。
ルミ自身上手くは言えないが、何となくだ。
けれど、今はそれ以上詮索しなかった。
必要があれば、きっとノーティスは言ってくれると信じてるから。
「じゃあノーティス様、飛ばしますよ♪」
ルミはそう言ってほほ笑むと、アクセルをより強くギュッと踏んだ。
マジックポータルの向こうで、バラガスの父親は目を見開いて飛び上がりそうな勢いで慌てふためいた。
自分が一番危惧した事に加え、その当事者がいきなり出てきたのだから当然だ。
そんな父親に多少の心苦しさは感じつつも、ノーティスは話を続けていく。
「まあ、僕はまだマシなんですけど、バラガスさんは罪もない一市民を斬りつけましたので、その方への賠償もお願いします」
「ほ、本当にき斬りつけたのですか? 罪も無い一市民を?!」
「はい。目撃者は街中の人と、証拠は衛生兵のクリスタルログに残ってます」
「……な、なんと……」
あまりにもムチャクチャ過ぎて言葉を失うバラガスの父親に、ノーティスはさらに告げる。
「これがバレたら大問題ですけど、もしこれを隠蔽しようとしてバレたら、お家取り潰しは避けられないでしょうね」
「あっあぁ……そう、ですね……」
しばらく沈黙が流れた後、ノーティスは静かに口を開いた。
「まあ、そこはアナタにお任せします。ちゃんとご子息様の犯罪を認め謝罪した上で息子を切るか、それとも隠蔽ようとしてバレて、お家取り潰しになるかは」
「うぅっ……!」
両手で頭を抱え、うつむきながら嘆きを零すバラガスの父親。
ノーティスは、そんなバラガスの父親に余りこれ以上は言いたく無かった。
声と話し方から、彼の人格が伝わってきたから。
けれど、皆の為にその気持をグッと堪え敢えて言う。
「……ちなみに申し訳ないですけど、自分もみんなも素直に証言しますよ。さぁ、どちらを選びますか?」
ノーティスがそう尋ねると、バラガスの父親はスッ表情を落としバラガスに告げる。
バラガスにとっての処刑宣告を。
「バラガス。お前は今日で貴族の身分と財産を剥奪し、我が家から追放処分とする」
「そ、そんな! お父様!」
「馴れ馴れしく呼ぶな! お前みたいなヤツは、もう息子ではない」
バラガスの父親はそう告げると、マジックポータルの向こうでノーティスに深々と頭を下げる。
「エデン・ノーティス様、大変申し訳ございません。この事の公表と皆様への賠償はこれからさせて頂きますが、それで宜しいでしょうか?」
そう問われたノーティスは、みんなにこれでいいかと問うと満場一致で賛成だった。
「大丈夫です。後、賠償額もかなり大きくなりそうなので、王様には取り潰さないよう自分から伝えておきます」
「おおっ! かたじけない」
「いいんです。バラガスさんの事だけちゃんとしてくれれば」
ノーティスはそこまで言った時、ちょっと閃いた。
「あっ、ちなみにお父さん、こういうのどうでしょう?」
「な、なんでしょうか?」
「バラガスさんの事、追放した後は騎士団に預けてほしいんです」
「騎士団に?!」
「はい。もちろん、身分と財産は没収しての事なので一兵士からですが。それで、騎士団のみんなからちゃんとした人間になったと認められたら、戻してあげてもいいと思うんで」
「それは素晴らしい! さすが勇者になられるお方! ……ただ、本当に宜しいんでしょうか」
少し声のトーンが柔らかくなったバラガスの父親に、ノーティスは少しきつめの口調で言う。
締める所は、ちゃんとしとかないとダメから。
「いいです。ただその代わり、バラガスさんがそこから逃げる事は、決して許さないで下さい。更生するまで何年でも……何十年でもです!」
「分かりました。本日からそう致します……!」
その会話を聞いているバラガスは、あまりの恐ろしさにヒイッ! と悲鳴を上げてガタガタと震えている。
バラガスにとって、これ以上ない最悪な状態になる鉄槌が下ったからだ。
考えただけで気を失いそうになる。
けれど当然、騎士団の皆はニヤニヤしながらバラガスを見つめている。
「バラガ~~~ス、入団おめでとう。歓迎するぜーーーー♪」
「ハハッ、よかったなバラガス。正式に認めてもらえて♪」
「まあこれから何年か、もしくは何十年の付き合いになるからな……みっちり仕込んでやるよ!」
騎士団達からそんな言葉と眼差しを向けられたバラガスは、心の底から声にならない悲鳴を上げ体をフラフラさせると、再びその場にドシャッとへたり込んだ。
バラガスの脳裏に、これから先の過酷な人生がまるで未来視のように駆け巡る。
「うっ……うっ……うわぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
それを見て全て収まったと感じたノーティスは、ルミの事をスッと見つめた。
「ルミ、さすがよく分かったな」
「とーぜんです。私はノーティス様の執事ですから♪ それに、救護班等も要請済です」
「……! ほんっっと、頼りになるなルミ。ありがとう! ちなみに、就任式どうする? もう本当に時間無いんだけど……」
「取りあえず、ゴールドエリアまで行けば何とかなりますので、もう行きますよ」
そう言われたノーティスが車に乗ろうとすると、メイとロバートが声をかけてきた。
「ノーティス、ありがとう♪」
「ありがとうな、ノーティス……さん」
「ロバート、さんなんかつけるなって」
「いや、お前さん今から勇者様だろ? だからなんかよ……」
ロバートはそう言ってガラにも無くドモった。
元々豪快な性格ではあるのだが、律儀な所もあるからだ。
ノーティスはそんなロバートに微笑む。
「フッ、俺らは一緒に戦った戦友だろ。だからまた会おう、ロバート」
その言葉にロバートもニッと笑みを浮かべた。
「あぁ、またな……ノーティス!」
◆◆◆
みんなに見送られながらその場を後にしたノーティスに、ルミは運転しながら尋ねる。
ちょっと気になる事があったから。
「ノーティス様、さっきのは一体何だったんでしょう?」
「さっきの?」
「はい。先程、メイという子の父親が呟いてた件です」
ルミからそう尋ねられたノーティスは、前を見ながら思い返していた。
あの場から去る直前に、メイの父親は確かに呟いていたからだ。
───確かにアレは何だったんだろう? 彼は仰向けになりながら、空に何かが飛んでるって言ってたけど、俺もロバートも何も見えなかった……魔力クリスタルが破壊された事による幻覚? いや、それとも……
「ノーティス様?」
「あっ、あぁ。多分、ただの幻覚だろ」
「幻覚、ですか……」
「うん。メイの父親以外、誰も何も見えなかったから……」
そう答えるノーティスの横顔をチラッと見たルミは、ノーティスが、何か別の事を考えているような気がした。
ルミ自身上手くは言えないが、何となくだ。
けれど、今はそれ以上詮索しなかった。
必要があれば、きっとノーティスは言ってくれると信じてるから。
「じゃあノーティス様、飛ばしますよ♪」
ルミはそう言ってほほ笑むと、アクセルをより強くギュッと踏んだ。
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