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プロローグ
精霊姫
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貴族令嬢として必要な、ダンスや社交マナー。バイオリンやピアノ、絵画等の芸術を含めた教養。
それらをお茶の時間までたっぷり詰め込まれる。
必要な事だと理解はしているけど、少なくともこの島の中では国語や算数は役立つとしても、マナーやピアノなんか何の役にも立たない。
けど、かろうじてバイオリンなんかは精霊を喜ばすのに一役買ってくれたりしてるから、頑張ってレッスンを受けている。
私は伯爵家の令嬢だけど、同時にこうも呼ばれている。
「精霊姫」、と。
「こんにちは、おやつの時間よ!」
勉強を終えた私は再び海辺へ降りる。
ただし、今朝の港とは別の、砂浜のある浜辺だ。背には森がある。水の精霊、風の精霊、木の精霊、土の精霊が集う希少な場所の一つだ。
「わーい」
「オヤツ、オヤツ!」
集まる精霊の大半は、まだ幼い妖精姿の小精霊達。……っていってもあくまで精霊基準で幼いと言うだけで、実年齢はうちの島に住む最高齢のお婆さんより年上だったりする。
けど、そこに彼らを纏める中精霊がたまに混じったりもする。
「ほらほら、取り合いしない、順番に並びなさい!」
彼らはこの島の自然を司る存在で、彼らの機嫌を損ねすぎると嵐が起きたり畑の収穫量が減ったり魚が捕れなくなったりする。
逆に機嫌が良ければ豊作と大漁になる確率が目に見えて上がる。
だから、ここでは精霊信仰が盛んだ。
精霊様へのお祈りやお供え等はこの島では誰もが当たり前にしている事。
更に故意に精霊の機嫌を損ねる行為をやらかした者には相応の罰を課す法律があったりする。
“故意に”と付くのは、精霊とは人とは違う常識を持ち、またとても気分屋なところがあるから、こちらにその気が無くても突然機嫌を悪くする事もあるせいだ。
だけど――
「美味しい!」
「お煎餅美味しいー」
力のある大精霊以上の精霊は自らの意思で人の前に姿を現し人々と言葉を交わす事も可能である。が……
「ねぇ、一緒に歌おう!」
ここに居る小精霊達を目に写し、また会話を交わせる人間はとても少ない。そして、彼らに好かれる才能を併せ持った人間の希少価値は、下手な王族より高い。
だから、私は「精霊姫」と呼ばれている。
そして。まだ幼いうちから精霊と契約を交わすなんて事も、あまり普通の事ではなく。
「ふふふ、そうね。私も貴女のバイオリンが聴きたいわ」
まして。滅多に人と契約なんかしない、大精霊の加護を、四つも受けている子供なんて、まず居ない……んだそうで。
「分かったよ、けど日が暮れる前には終わりだからね」
「ええ、勿論よ」
「わーい、踊ろう!」
「歌おう!」
だから、私はこの島の人にとても好かれている。私が精霊のご機嫌を取っていれば、島の生活は安泰だから。
一切顔を見せない伯爵様や次期当主様より、身近な私の方がありがたがられるのはある意味必然だった。
日が暮れれば屋敷に戻って夕食を食べ、お風呂に入って寝る。
これが、精霊姫と呼ばれる私の日常だったのだ。
それらをお茶の時間までたっぷり詰め込まれる。
必要な事だと理解はしているけど、少なくともこの島の中では国語や算数は役立つとしても、マナーやピアノなんか何の役にも立たない。
けど、かろうじてバイオリンなんかは精霊を喜ばすのに一役買ってくれたりしてるから、頑張ってレッスンを受けている。
私は伯爵家の令嬢だけど、同時にこうも呼ばれている。
「精霊姫」、と。
「こんにちは、おやつの時間よ!」
勉強を終えた私は再び海辺へ降りる。
ただし、今朝の港とは別の、砂浜のある浜辺だ。背には森がある。水の精霊、風の精霊、木の精霊、土の精霊が集う希少な場所の一つだ。
「わーい」
「オヤツ、オヤツ!」
集まる精霊の大半は、まだ幼い妖精姿の小精霊達。……っていってもあくまで精霊基準で幼いと言うだけで、実年齢はうちの島に住む最高齢のお婆さんより年上だったりする。
けど、そこに彼らを纏める中精霊がたまに混じったりもする。
「ほらほら、取り合いしない、順番に並びなさい!」
彼らはこの島の自然を司る存在で、彼らの機嫌を損ねすぎると嵐が起きたり畑の収穫量が減ったり魚が捕れなくなったりする。
逆に機嫌が良ければ豊作と大漁になる確率が目に見えて上がる。
だから、ここでは精霊信仰が盛んだ。
精霊様へのお祈りやお供え等はこの島では誰もが当たり前にしている事。
更に故意に精霊の機嫌を損ねる行為をやらかした者には相応の罰を課す法律があったりする。
“故意に”と付くのは、精霊とは人とは違う常識を持ち、またとても気分屋なところがあるから、こちらにその気が無くても突然機嫌を悪くする事もあるせいだ。
だけど――
「美味しい!」
「お煎餅美味しいー」
力のある大精霊以上の精霊は自らの意思で人の前に姿を現し人々と言葉を交わす事も可能である。が……
「ねぇ、一緒に歌おう!」
ここに居る小精霊達を目に写し、また会話を交わせる人間はとても少ない。そして、彼らに好かれる才能を併せ持った人間の希少価値は、下手な王族より高い。
だから、私は「精霊姫」と呼ばれている。
そして。まだ幼いうちから精霊と契約を交わすなんて事も、あまり普通の事ではなく。
「ふふふ、そうね。私も貴女のバイオリンが聴きたいわ」
まして。滅多に人と契約なんかしない、大精霊の加護を、四つも受けている子供なんて、まず居ない……んだそうで。
「分かったよ、けど日が暮れる前には終わりだからね」
「ええ、勿論よ」
「わーい、踊ろう!」
「歌おう!」
だから、私はこの島の人にとても好かれている。私が精霊のご機嫌を取っていれば、島の生活は安泰だから。
一切顔を見せない伯爵様や次期当主様より、身近な私の方がありがたがられるのはある意味必然だった。
日が暮れれば屋敷に戻って夕食を食べ、お風呂に入って寝る。
これが、精霊姫と呼ばれる私の日常だったのだ。
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