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第二章

実りの季節

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    あれだけベタついていた潮風が、最近では随分と寒く、肌に触れる切れ味が鋭くなってきた。
    早いもので、この島にも実りの秋が訪れていた。

   「最近、工場の辺りが随分と賑やかだね?」
   「そりゃ、秋が過ぎればすぐに冬が来るからな」

    最近では私抜きでもノアはアクアやグレストと出掛けてくれる様になっていた。
    島民も彼の顔は覚えてくれて、気にかけてくれているから、たまには一人で自由行動を……と思ったのに、まさかの町で遭遇コースとは。

    が。
    敵はまだ私に気付いていない。
    ここはちょっと奴らを尾行し、こっそり会話の盗み聞きしてみるか?
    アクアなんか私の居ないトコで何言ってるか分かんないし。何か余計な事言ってたら後でちょっとお話しなきゃかもね?

    ニヤリと影で笑うと、何故かアクアがブルッた。

   「……何してるんです?」
   「イヤ、何か分からんがちと寒気が……」
   「具合が悪いなら無理せずお帰りになった方が良いのでは?」
   「はぁ?    風邪なんざひいた事ねぇし。余計な世話だってーの!」
    「ああ……。何とかは風邪ひかないって言いますもんね」
    「何だとコノヤロー!」
    「まぁまぁ、アクア、落ち着いて……!」

    「……ゴホン。話、戻しましょうね。そう、一応魚は夏より冬に獲れる魚の方が美味しいですが、冬は海も荒れがちです。『精霊姫』の加護はそんな日を減らしてくれはしますが、ゼロには決してなりません。……ゼロになれば、長い目で見れば海の恵みが減ってしまう事に繋がりますから」
    「嵐で海が荒れると、普段海の深いところにしかねぇ栄養分たっぷりの水がかき回されて海全体に栄養分が行き渡る。これが無ぇと浅瀬の魚は細るし、そんな魚を餌にする魚も減る」

   「冬でも収穫出来る作物はありますが、やはり他の季節に比べれば少ない。だから、冬のための保存食加工は今が最盛期なんですよ」
   「それが終われば、精霊様に自然の恵みを感謝する祭りがあるんだ。毎年美味いモンの屋台が沢山並ぶから、今から小遣い貯めてるんだ!」
   「へぇ、アクアが美味しいっていうなら本当に美味しいんだろうなぁ」

   「それとな、今年潰す予定だった食肉家畜のうち事前のコンテストで優勝した奴はその場で調理されて皆に配られるんだぜ!」
   「今年は鶏はエルさんの、豚はカルロさんの、牛はジャックさんの所のが選ばれたそうで。選ばれた個体は最後の追い込みとばかりに餌を沢山食べさせて貰っているそうですから……期待できそうですよ」
    「「おおおおお!」」

    ……王子様も男の子。やはり男は肉が好きか。
    目を輝かせている。
    けど、確かに毎年配られるあれ、精霊姫の私には優先的に用意されるんだけど……美味しいんだよね。
    脂たっぷり肉汁ジュワッと、柔らかくて旨味しっかりの、けどさっぱりとした味付けで……。あ、思い出したら思わずよだれが……。
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