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第四章

合格祝いの宴

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    「合格しました!」
    私は当然のようにありがたみも何もない合格を知った同じ日、グレストはとても嬉しそうに合格を私に報告してきた。

    普段からいつも冷静な彼には珍しく、誉めて欲しくて仕方ないワンコの様に、見えないはずの尻尾をぶんぶん振りまくるグレスト。
    ……アクアがここに居れば「明日は雨か雪か、それとも槍でも降るんじゃないか?」とか何とか失言してグレストを怒らせ喧嘩になる様まで詳細に想像できる。

   けど、私は脳筋アクアと違って空気の読める女だ。
   「おめでとう、グレスト。あなたの努力の結果よ。よく頑張ったわ。でも、これはゴールじゃなくてスタートだからね。慢心せずこれからも勉強頑張って。まぁ、グレストなら言わなくても分かってるだろうけど」
    「勿論です、お嬢様!」

    「じゃあ、合格祝いに美味しい物でも食べに行きましょうか」
    家でも勿論ご馳走を食べようと思えばシェフが頑張ってくれるだろうけど、せっかくだから何か目新しいものを食べたかった。
    「王都ならではの美味しいお店とか、知らない?」

    影執事に尋ねる。
   「……なら、“ロイヤル・プレート”はいかがでしょう?    商いなどをする平民の金持ちが家族連れでよく利用する、少し洒落た食事処でございます。リーズナブルに美味い料理を出すと評判の店でございますよ」
   「ありがとう、そこにするわ。予約を入れておいて。あと必要だと言うなら馬車の手配も。ああ、要らなければ私は歩いていくわよ?」
   「……馬車を用意致しますので、乗って行って下さいね」

    翌日のランチタイム。
    馬車に揺られて辿り着いたのは、なんとも可愛い洋館だった。
    ……日本じゃないんだから、洋館なんて呼称はおかしいかもしれないけど、ドールハウスを人間サイズにしたような、とにかく可愛らしい店構えだ。
    一歩入ると、伯爵邸で高価な物を見慣れてしまった私の目にも見苦しくない装いのアンティークな装いで、美しい――けどやはりどちらかといえば可愛らしい設えだ。

    予約の名を伝えると、個室に案内された。
   「うわぁ、リゾート開発の時にも一生懸命勉強したつもりでしたけど……。まだまだですね。やっぱりもっと色々見て勉強したい。お嬢様、僕を連れて来て下さって本当にありがとうございます」
    「貴方が頑張ったからよ。学校に落ちていれば私はどうにも出来なかったもの」

    運ばれて来たのはイタリアン風のコースメニュー。

    おお、美味しい。
    ここ、コースメニューだけじゃなく単品料理もあるみたいだし、今度パスタとケーキだけ食べに来るのもいいかもなぁ……。

   少しだけ憂鬱な気分を晴らしてくれるオアシスを見つけたようで、私の機嫌も少しだけ浮上したのだった。
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