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第十二章

専門島計画

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 改めて。ウチの辺境伯領は大小様々な群島からなる。
 ただ、本島がかなり広く、他の小島の大半はこれまで無人島としてたまの狩猟や採取で入る者が居る程度だった。

 ナタデココ事業が軌道に乗ってからはココナッツ採取の頻度が大幅に増えたけど。それだって基本浜辺に多い木だけあって、あまり島の内部には手入れはしていなかった。

 それを今回専門の島を作ろうと言うのだ。
 実行する前に綿密な計画作りが必要な案件。
 実行は私の卒業後、襲爵した後でないと、と時期はすぐに満場一致で決まった。

 だから。
 「卒業後にすぐにとりかかれるよう今のうちにしっかり計画を練り上げましょうね」

 「……住居はどうしようか? あんまり住居に土地を裂くと本業用の土地がそれだけ狭くなるよね?」

 「だけど、毎朝船で通勤は厳しいよ。荒天なら即アウトだろ? 常駐員は必要だ。独身者用の寮を用意して、家族持ちは持ち回りで常駐組と通勤組を分けるのはどうだ?」

 「荒天時の事を思えば、各島に獣医と人間の医師を最低一人ずつは常駐させたい所ね。観光島でやってる様に、緊急用の連絡船は常に確保しておく必要はあると思うの。」

 「家族を常駐させるなら、学校も……少なくとも小学校は各島に設置すべきだな」
 「それと、専門の研究員も常駐させたいです。現地でレポート作成と、研究結果を現場で実験する要員と。研究自体は本島でやる方が効率的でしょうが、フィールドワークの拠点は欲しいですね」

 そうして出てくる意見を纏めて計画に練り込んでいく。

 そこから開拓の手順や各施設の配置、治水工事等の計画を立てていく。

 例えば牛の島なら、肉牛と乳牛の棲み分けや、放牧用の牧草地と牛舎で与える餌を作る畑、搾乳場等の配置と浄水と下水の配備。特に牛舎の下水は……。牛の排泄物の処理にも関わる。
 きちんとしないと疫病が怖い。

 そういう大掛かりなインフラも大事だけど、現場の声もそれ以上に大事だ。
 島の牛に関わる農家の声を集め、計画に反映していく。

 勿論、牛の島だけではない。

 鶏の島でも卵を産む鶏と、肉にする若鶏と。
 鶏舎で飼う量産品と、良い餌と適度な運動をさせるブランド鶏と。

 他にも豚、羊、川魚の養殖場と、時間はいくらあっても足りない程、考えなければならない事は多岐に渡った。

 けれど、これまで本島での活動が大半で、他の島など海の魚の養殖にしか使っていなかったのだから、実行に移せば一気に領地は開拓され、税収もアップ。それだけ福祉にもお金を回せる様になる。

 「頑張らないと……」

 私の努力を知ってくれているのは、私の周りのごく一部の人達だけ。大半の人はウチの辺境伯のイメージはあの当主の振る舞いそのままで。だから、今回の件も別家に任せるべきとの意見が少なくないのだ。
 だから、私にはそれを跳ね返せるだけの実績が必要なのだ。

 目に見えて分かりやすい、王家への貢献が。
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