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第一章 流行らないダンジョン

初っ端から大ピンチですけど!?

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 青白い光がゆっくりと消えていく。

 代わりに目に入るのは、あの場所と変わらない洞窟の岩肌剥き出しの薄暗い壁と床。
 そして目の前には――

 「ブルルルルゥ」
 荒いで鼻を鳴らす、豚頭オーク……。

 「……は?」
 ちよ、ちょ、ちょ、ちょーっと待とうか!

 オークが出るのってボス戦じゃありませんでしたかね?
 一階層はスライムしか出ないんじゃなかったの!?

 叫びたいが、魔物が親切に待っていてくれる筈もなく。
 「プギャー」
 と、片手で持つには大きすぎる気のする大きなバトルアックスを軽々と振りかぶる。

 「うひょー!」
 慌てて逃げる。

 ぶん、と戦斧が起こした風で前髪が巻き上げられ、ポニーテールの端がはらりと宙を舞った。
 ……って、ギャー! 髪の端っことは言え切られた!
 髪の毛だから痛覚は無いけど!
 一歩間違ったら一発あの世行きもあり得る攻撃だったよ、今の!

 誰だ、ココが初心者ダンジョンとか言った奴は!
 
 ふと気づけば。
 「え、いつの間に……。囲まれてる!?」

 緑色の、ちょっとカワイイ顔した子鬼が私を取り囲んでいる。
 ……あれ、ゴブリンかな?
 醜く臭い残念ゴブリンじゃ無かった事を喜ぶべきか。
 何となく倒しにくい事を嘆くべきか。

 そんな事を考える余裕は――
 「いやぁぁぁぁ!」
 一斉掃射される矢を前にあるはずもなく。

 あ、コレまぢ詰んだわ。
 せっかく食料調達の目処が立ったと、不本意な交換条件を飲んでまでこうしてダンジョン攻略に来たと言うのに。
 何も出来ないまま私は死ぬのか。

 いや、異世界転移のお約束として交通事故にあったんならどっちにしろ一回は死んでる様なもんか。

 ああ。死ぬ前に彼氏の一人でも作っておくんだった。
 まさか乙女のまま逝く事になろうとは……。

 覚悟を決めて目を閉じる。
 ……が。
 ここは足場の悪い洞窟の中。そんな場所で、アウトドア超ド素人の私がそんな事をすればどうなるか。

 「ぎゃっ!」
 はい、あっという間に足元の岩に躓いて転びましたよ。

 小石も石も岩もゴロゴロしてる洞窟です、そんな所で転べば当然あちこち切り傷擦り傷だらけになります。痛いです。
 けど、足を挫いたりしなかっただけまだマシか。

 そして私の頭を狙って――けどいい加減な狙いで外した矢も多かった様だけど。
 転んだ事で運良く伏せた格好になったお陰で矢は全て私の頭上を通り過ぎ――

 「ブギャー!」

 ……私の代わりにオークさんが受けてくれました。
 私より縦にも横にも大きいオークさんは実に良い的だった様で、ゴブリンの矢は全てオークに命中していた。
 が、その狙いが悪いせいで、頭から上半身まであちこちまちまちに矢が刺さっていた。

 当然、オークさんはお怒りです。

 けど……矢を放ったのはゴブリンさんだと言うのに何故ヘイトが私に来るのか……。

 心なしか顔を赤くしたオークが再び斧を振りかぶります。

 ……うん、今度こそ詰んだかな。
 私、動けないし。
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