ローズガーデン

彩世幻夜

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第一章

商業ギルド

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 「あの、行商人として登録したいので、商品見本を持って来ました。審査をお願いします」

 中は流石商業ギルド、しっかりと掃除の行き届いたピカピカの床と、飴色に輝く美しい木製のカウンター、そして受付はキレイなお姉さん……も居なくは無いが、ナイスミドルな紳士も普通に並んでた。

 新規登録他担当の受付はナイスミドルでした。

 「……ではまず商品を拝見させていただきましょうか?」
 「はい、お願いします」

 取り出されたのは茶葉とジャムの瓶詰め、クッキーを始めとした日保ちし易いお菓子。

 「これは……良い香りがしますね」

 「はい、バラのフレーバーティーの茶葉と、バラジャムにバラ香りのするお菓子。……他にも販売を予定している商品はありますが、手始めにまずはこれらを主力商品として売り歩きたいと思っています」

 「……味を見ても?」
 「勿論です」

 受付の男は後ろに控えていた職員に茶葉を渡す。
 そして自分はまずジャムの瓶に手をかけ、フンと気合を入れて蓋をひねった。
 ……うん、アレ開けるのちょっと力が要るのよね。

 そしてまず香りを嗅ぐ。
 そして小さな匙で掬い口に入れた。

 「……ふむ」

 次にお菓子に手を付ける。
 まずはそのまま、次にジャムを入れて賞味した所でお茶が届いた。

 茶葉の段階でも香ったバラの華やかな香りが、お湯の熱でふわりと開いてアロマの様に薫る。

 まずは砂糖なしで。
 二杯目は砂糖を入れて。
 三杯目はバラジャムを入れて。

 「ふむ、これなら十分商品になるだろう。では早速手続きに入ろう。……しかしこれなら露天でも売れそうだが行商の登録で良いのか?」

 行商も露天商も基本街の広場に仮の店舗を出して商売をするが、露天商は基本場所を動かないが、行商人は短くて数日、長くても数週間で次の場所へと移動して行く。

 そのメリットデメリットは一長一短だが、私みたいなのを見たら安全な露天商を勧めたくなるのも分かるんだけどね。

 「はい。行商がしたいんです」

 「……そうか。売れる商品があり、真っ当な商売をするなら、売り方には文句を言わないのがギルドの方針だからな。一応忠告はした。後は自己責任だぞ」
 「ええ。この後冒険者ギルドにも行く予定なので」

 「そうか。……ならこれが商業ギルドのギルドタグだ。失くしたら再発行には大金が必要になる。だから向こうで売ってる鎖を買って腕輪や首飾りにしてる奴が多い。冒険者もやるなら首飾りにしとけ」
 「ありがとうございます」

 よし、じゃあ次は冒険者ギルドだ。
 ……お約束に引っかからない様にしないと。

 
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