ローズガーデン

彩世幻夜

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第二章

新商品

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 行く街行く街で行商を続ける。

 街に着けた日は宿に泊まり、夜営の日はスキルの中のログハウスで休みつつ商品を作る。

 そんな日々の中。

 「あ、新しく作れるものが増えてる」

 これまで作れるのは基本お茶やお菓子等口に入れる物ばかりだったが、ここにきて香り付きの入浴剤やら石鹸やらといった物が選択肢に加わっていた。

 幸い、次の街は富裕層が比較的多い街。
 初売りにはピッタリだろう。

 そうしてたどり着いた街は、大きな街だけあって、露店広場も複数存在した。初日は営業許可を取り宿を確保した後まずは下調べに専念する事にした。

 ここは領主様の館のある領都で、伯爵家の屋敷と、伯爵様の仕事を手伝う役人の屋敷が街の中心部に集まり、彼らの世話をする使用人達良い所の御子息ご息女の住まう街、そして中流階級の集う街。

 一つの街に三つの街が入れ子のように入った街。

 広場もそれぞれにあって、今の私じゃ貴族外の広場にはとてもじゃないが出入りは出来ない。

 しかし、その使用人達の街でなら、多分この商品はよく売れる。
 そしてその使用人から噂を聞けば貴族も興味を持つだろう。

 元公爵令嬢だからこそ分かる。

 今日のうちに挨拶を済ませ、明日に備えて宿に早々に引っ込む。

 「おじさん、ご飯ちょうだい」
 「あいよ! 今日は鶏肉と野菜の煮込みだ」
 「わぁ、美味しそう!」

 「(いただきます!)」

 うん、美味しい。

 「おいちゃーん、こっちにもお願い! あとエールも追加で!」
 「あいよ! まいどあり!」

 ドンと人数分、四つのジョッキが置かれた隣のテーブルは、これぞ冒険者! と言わんばかりの面子だった。

 男二人に女二人。

 一人は大盾を背負った大柄なスキンヘッドの男。
 一人は黒に近いグレーの髪の細身の男。
 ピンクの髪を二つ結びにしたロリっ子少女は背に弓を背負い。
 ビキニアーマーを身に着けた背の高い美女は、魔法使いらしい杖を腰に下げていた。

 「もー、ほんっとアルってば間抜けだよね……」
 「……言うな」

 ゴクゴクと豪快にジョッキの半分まで一気にエールを飲み干したチビっ子が、チビチビと景気悪くジョッキを傾け落ち込む男を突つく。

 「いや、ここはしっかり反省して貰わないと……。流石に命を預ける主武器をそうそう持って行かれちゃあなぁ、アルトリート?」
 「ぐっ、」

 「ロイドの大盾タンクと、ユリア姐さんの魔法があったから無事に帰れたんだよ? 分かってる?」
 「分かってます、今日の酒代はお詫びに俺が出すから」

 「まあ……何だ。落ち込むのもそろそろ止めにして気持ち切り替えていかないと。俺もフォローしきれんぞ」
 「はい、すいません……」

 うーん、気のせいかな? アルトリートと呼ばれてるお兄さんの声に聞き覚えがあるんだけど。

 ちらりと横目で見れば、髪色もそう言えば見覚えがあるような……?
 まさか……

 
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