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3章 農園カンパニー

第5話 吟遊詩人と芸人集団

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 皆、日々真面目に黙々と働いてくれている。
 青嵐君は可愛いし、赤華さんは逞しいし、セバスティアーノさんは頼り甲斐があるし、ユージーンは真面目で優しい。

 が、だ。
 黙々と畑仕事をするのは良いけど、ある程度余裕が出てくると、これまで生きていくのに精一杯だった彼らは良くても、娯楽あふれる日本で暮らしていた私はどうしても、耐えられなくなってくる。

 そんな頃。
 アグリ様によって呼び出されたのは――

 え、一度に5人も?

 優男が一人。
 スタイルの良い踊り子風の男女が二人にあと二人男性が、呆然と佇んでいた。

 そろそろいつもの通りというか、お約束ななりつつあるアグリ様と私達による説明会が行われ。

 優男の名がグリスと言い吟遊詩人で、彼の歌に合わせて剣舞や舞で客を魅せる男女の踊り子はそれぞれキャッシーとソールと名乗った。
 残り二人の男性は曲芸師だそうで、歌と歌の間の時間に客を退屈させないよう、飽きさせないよう曲芸を見せて楽しませる。
 シグマとシクロと名乗るこの二人を合わせた5人で旅芸人として各地を転々としていたとの事。

 グリスは人当たりのいい見た目通りの優男。
 ソールは軽いお調子者で、それを尻に敷いて操縦できるのが相方のキャッシー。そのせいか、かなりのしっかり者っぽい。
 シグマとシクロは双子らしく見た目はそっくりなのだけど、正確派まるで正反対。
 軽業が得意なシグマと、正確無比な器用さが自慢のシクロ。

 グリスは力仕事には向かないが、声を操るのが上手く、遠くまで響く声を持っている。
 そこで犬を与えて牧場犬に躾け、動物の放牧を任せてみた。
 すると、上手いこと誘導してくれるので、朝晩の動物の出し入れを頼んでみた。
 他の世話はそのままユージーンの担当で。

 キャッシーは家事担当。これまでセバスティアーノと青嵐がやっていたけど、ようやく専任担当者ができた。
 青嵐君のお手伝いはそのままだけど、これでセバスティアーノさんが牧場管理の仕事に専念できる。

 ソール、シグマ、シクロは畑仕事を主に覚えてくれている。

 それに何より、夕飯後に楽しい娯楽を提供してくれる。
 テレビやパソコン、ゲームとは随分と趣が違うけれど、これはこれで悪くない。

 だから、彼らの為にも舞台付きの広い食堂を新たに作ってしまう程。
 集会場としても使えるように設計したそこで、今日も美しい歌声と美しく軽やかな舞を楽しむ。

 それをアグリ様もご観覧するとあって、芸人集団が面白い程に緊張してるんだけどね。
 シグマにシクロ、緊張しすぎて怪我するんじゃないよ……?
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