53 / 114
乙女ゲームからエスケープ! 留学します!
旅立ちの日に
しおりを挟む
その日。屋敷のロータリーに入って来たフライハイト王国の紋章入の馬車に似を運び込むのは侯爵家の従僕達だが。
私達の見送りに出てきたのはお義母様と義弟だけ。
お義父様である侯爵は、いつもの如くここ暫く屋敷に戻らぬ毎日で。
今日も例に漏れず不在である。
「忘れ物はないわね?」
「はい、母上。昨日のうちに確認は全て終えております。
ニクラス、私は当分の間屋敷を留守にしますが、次期侯爵家当主としての自覚を持ち勉学に励みなさい。
そして、母上をお助けするのですよ。
何か困った事があれば何時でも手紙を書きなさい。
それで解決すると保障は出来ませんが、可能な限りは尽力すると約束しましょう」
「はい……姉上……」
しょんぼりしつつも何故かロジーネお義姉様ではなく私にチラチラ視線を向けてくるニクラス。
「何ですか、ニクラス。フィーネに言いたいことがあるなら堂々とお言いなさい、男らしくありませんよ」
「う……、その、時々で良いので、お菓子、送ってくださいお願いします!」
「まぁ、ニクラス……。でも……分かりますわ! フィーネの作る料理は貴族の食卓に上げるには少々質素なのですけれど、美味しくてついまた食べたくなる味ですのよ!
それが暫くお預けになるのは確かに哀れですわ……。
フィリーネ、可能な限りで構わないから、日持ちのするお菓子をたまにニクラス宛に送ってくれないかしら?」
「ええ、構いませんよ? ただ、材料は当然あちらのものを使うので、少々味が異なる場合もあるかと思いますが、その点ご承知いただけるなら」
「承知する、承知するからお願いします!」
「ふふふ、ニクラスってばフィリーネに見事に餌付けされたわね」
「む、それはロジーネお姉様も人の事は言えないと思います!
僕は知っているんですよ、夜のお勉強の合間にフィリーネ義姉様のお手製クッキーと紅茶が欠かせないって!」
「こ、こら、ニクラス!」
「ははは……。あちらのキッチンの勝手が分かり次第、何かお作りしますね……」
どうやら悪役ヒロイン回避の策の一つ、餌付け作戦は思った以上の効果があったらしい。
姉弟同士のイチャイチャが落ち着くのを待って、私達は改めて馬車に乗り込む。
「気をつけて、行ってらっしゃい」
「はい、行って来ます。母上……」
「行ってらっしゃいませ、お姉様、フィリーネ義姉様」
「行って来ます、ニクラス」
そして侯爵家のロータリーを出発し侯爵家を出た馬車は、そう経たずに港へ到着する。
港にはすでにマルグリット様の馬車が到着していて、港の職員が忙しく荷物を積み込んでいる。
彼女の荷物もやはり馬車一台分はあるらしい。
私達の荷物もまたテキパキと船へ運び込む職員さんにお礼を言いつつ、マルグリット様とお喋りを楽しんでいると、ジークリンデ様の馬車が港へ到着した。
こちらは三台の大所帯。
まぁ、公爵令嬢だしお付きも二人居るから妥当……ではあるのかな……。
どうもまだその辺の常識には疎いようで。
「待たせたかしら?」
「いいえ、私達も先程来たところですわ。一番早かったのはマルグリット様ですわね」
「お嬢様はご令嬢にしては身支度が早いですからね」
「まあ、日頃軍の男所帯と共に在る事が多くなりがちだから、な」
そして最後に。
「うわ、もう皆居るし。僕が最後か……」
「ニシシ、女より支度の遅い男ってのも珍しいよネ~?」
「ははは。済まないね、お嬢さんがた。最後まで往生際の悪い古狸の片付けに少々手間取ってしまってね、遅刻しなくて良かったよ」
と。ミヒャエルとジョゼフィーネ様、それに見送りにまさかのフライハイト王国の大使様がやって来た。
港に停まるのは、受験の日に乗った船と同型の船だ。
「是非、我が国での毎日を存分に楽しみ、君たちの人生に有益な糧としてくれる事を期待しているよ」
「ありがとうございます、大使様」
「ええ、色々とご尽力頂いたこと、感謝しておりますわ」
そして、船は出港の汽笛を鳴らす。
こうして、私達は祖国セイントランド聖国の地をはなれ、隣国フライハイト王国へと、正式に旅立ったのだった。
私達の見送りに出てきたのはお義母様と義弟だけ。
お義父様である侯爵は、いつもの如くここ暫く屋敷に戻らぬ毎日で。
今日も例に漏れず不在である。
「忘れ物はないわね?」
「はい、母上。昨日のうちに確認は全て終えております。
ニクラス、私は当分の間屋敷を留守にしますが、次期侯爵家当主としての自覚を持ち勉学に励みなさい。
そして、母上をお助けするのですよ。
何か困った事があれば何時でも手紙を書きなさい。
それで解決すると保障は出来ませんが、可能な限りは尽力すると約束しましょう」
「はい……姉上……」
しょんぼりしつつも何故かロジーネお義姉様ではなく私にチラチラ視線を向けてくるニクラス。
「何ですか、ニクラス。フィーネに言いたいことがあるなら堂々とお言いなさい、男らしくありませんよ」
「う……、その、時々で良いので、お菓子、送ってくださいお願いします!」
「まぁ、ニクラス……。でも……分かりますわ! フィーネの作る料理は貴族の食卓に上げるには少々質素なのですけれど、美味しくてついまた食べたくなる味ですのよ!
それが暫くお預けになるのは確かに哀れですわ……。
フィリーネ、可能な限りで構わないから、日持ちのするお菓子をたまにニクラス宛に送ってくれないかしら?」
「ええ、構いませんよ? ただ、材料は当然あちらのものを使うので、少々味が異なる場合もあるかと思いますが、その点ご承知いただけるなら」
「承知する、承知するからお願いします!」
「ふふふ、ニクラスってばフィリーネに見事に餌付けされたわね」
「む、それはロジーネお姉様も人の事は言えないと思います!
僕は知っているんですよ、夜のお勉強の合間にフィリーネ義姉様のお手製クッキーと紅茶が欠かせないって!」
「こ、こら、ニクラス!」
「ははは……。あちらのキッチンの勝手が分かり次第、何かお作りしますね……」
どうやら悪役ヒロイン回避の策の一つ、餌付け作戦は思った以上の効果があったらしい。
姉弟同士のイチャイチャが落ち着くのを待って、私達は改めて馬車に乗り込む。
「気をつけて、行ってらっしゃい」
「はい、行って来ます。母上……」
「行ってらっしゃいませ、お姉様、フィリーネ義姉様」
「行って来ます、ニクラス」
そして侯爵家のロータリーを出発し侯爵家を出た馬車は、そう経たずに港へ到着する。
港にはすでにマルグリット様の馬車が到着していて、港の職員が忙しく荷物を積み込んでいる。
彼女の荷物もやはり馬車一台分はあるらしい。
私達の荷物もまたテキパキと船へ運び込む職員さんにお礼を言いつつ、マルグリット様とお喋りを楽しんでいると、ジークリンデ様の馬車が港へ到着した。
こちらは三台の大所帯。
まぁ、公爵令嬢だしお付きも二人居るから妥当……ではあるのかな……。
どうもまだその辺の常識には疎いようで。
「待たせたかしら?」
「いいえ、私達も先程来たところですわ。一番早かったのはマルグリット様ですわね」
「お嬢様はご令嬢にしては身支度が早いですからね」
「まあ、日頃軍の男所帯と共に在る事が多くなりがちだから、な」
そして最後に。
「うわ、もう皆居るし。僕が最後か……」
「ニシシ、女より支度の遅い男ってのも珍しいよネ~?」
「ははは。済まないね、お嬢さんがた。最後まで往生際の悪い古狸の片付けに少々手間取ってしまってね、遅刻しなくて良かったよ」
と。ミヒャエルとジョゼフィーネ様、それに見送りにまさかのフライハイト王国の大使様がやって来た。
港に停まるのは、受験の日に乗った船と同型の船だ。
「是非、我が国での毎日を存分に楽しみ、君たちの人生に有益な糧としてくれる事を期待しているよ」
「ありがとうございます、大使様」
「ええ、色々とご尽力頂いたこと、感謝しておりますわ」
そして、船は出港の汽笛を鳴らす。
こうして、私達は祖国セイントランド聖国の地をはなれ、隣国フライハイト王国へと、正式に旅立ったのだった。
7
あなたにおすすめの小説
虐殺者の称号を持つ戦士が元公爵令嬢に雇われました
オオノギ
ファンタジー
【虐殺者《スレイヤー》】の汚名を着せられた王国戦士エリクと、
【才姫《プリンセス》】と帝国内で謳われる公爵令嬢アリア。
互いに理由は違いながらも国から追われた先で出会い、
戦士エリクはアリアの護衛として雇われる事となった。
そして安寧の地を求めて二人で旅を繰り広げる。
暴走気味の前向き美少女アリアに振り回される戦士エリクと、
不器用で愚直なエリクに呆れながらも付き合う元公爵令嬢アリア。
凸凹コンビが織り成し紡ぐ異世界を巡るファンタジー作品です。
【完結】悪役令嬢の妹に転生しちゃったけど推しはお姉様だから全力で断罪破滅から守らせていただきます!
くま
恋愛
え?死ぬ間際に前世の記憶が戻った、マリア。
ここは前世でハマった乙女ゲームの世界だった。
マリアが一番好きなキャラクターは悪役令嬢のマリエ!
悪役令嬢マリエの妹として転生したマリアは、姉マリエを守ろうと空回り。王子や執事、騎士などはマリアにアプローチするものの、まったく鈍感でアホな主人公に周りは振り回されるばかり。
少しずつ成長をしていくなか、残念ヒロインちゃんが現る!!
ほんの少しシリアスもある!かもです。
気ままに書いてますので誤字脱字ありましたら、すいませんっ。
月に一回、二回ほどゆっくりペースで更新です(*≧∀≦*)
【完結】ヒロインに転生しましたが、モブのイケオジが好きなので、悪役令嬢の婚約破棄を回避させたつもりが、やっぱり婚約破棄されている。
樹結理(きゆり)
恋愛
「アイリーン、貴女との婚約は破棄させてもらう」
大勢が集まるパーティの場で、この国の第一王子セルディ殿下がそう宣言した。
はぁぁあ!? なんでどうしてそうなった!!
私の必死の努力を返してー!!
乙女ゲーム『ラベルシアの乙女』の世界に転生してしまった日本人のアラサー女子。
気付けば物語が始まる学園への入学式の日。
私ってヒロインなの!?攻略対象のイケメンたちに囲まれる日々。でも!私が好きなのは攻略対象たちじゃないのよー!!
私が好きなのは攻略対象でもなんでもない、物語にたった二回しか出てこないイケオジ!
所謂モブと言っても過言ではないほど、関わることが少ないイケオジ。
でもでも!せっかくこの世界に転生出来たのなら何度も見たイケメンたちよりも、レアなイケオジを!!
攻略対象たちや悪役令嬢と友好的な関係を築きつつ、悪役令嬢の婚約破棄を回避しつつ、イケオジを狙う十六歳、侯爵令嬢!
必死に悪役令嬢の婚約破棄イベントを回避してきたつもりが、なんでどうしてそうなった!!
やっぱり婚約破棄されてるじゃないのー!!
必死に努力したのは無駄足だったのか!?ヒロインは一体誰と結ばれるのか……。
※この物語は作者の世界観から成り立っております。正式な貴族社会をお望みの方はご遠慮ください。
※この作品は小説家になろう、カクヨムで完結済み。
《完》義弟と継母をいじめ倒したら溺愛ルートに入りました。何故に?
桐生桜月姫
恋愛
公爵令嬢たるクラウディア・ローズバードは自分の前に現れた天敵たる天才な義弟と継母を追い出すために、たくさんのクラウディアの思う最高のいじめを仕掛ける。
だが、義弟は地味にずれているクラウディアの意地悪を糧にしてどんどん賢くなり、継母は陰ながら?クラウディアをものすっごく微笑ましく眺めて溺愛してしまう。
「もう!どうしてなのよ!!」
クラウディアが気がつく頃には外堀が全て埋め尽くされ、大変なことに!?
天然混じりの大人びている?少女と、冷たい天才義弟、そして変わり者な継母の家族の行方はいかに!?
小説主人公の悪役令嬢の姉に転生しました〜モブのはずが第一王子に一途に愛されています〜
みかん桜
恋愛
第一王子と妹が並んでいる姿を見て前世を思い出したリリーナ。
ここは、乙女ゲームが舞台の小説の世界だった。
悪役令嬢が主役で、破滅を回避して幸せを掴む——そんな物語。
私はその主人公の姉。しかもゲームの妹が、悪役令嬢になった原因の1つが姉である私だったはず。
とはいえ私はただのモブ。
この世界のルールから逸脱せず、無難に生きていこうと決意したのに……なぜか第一王子に執着されている。
……そういえば、元々『姉の婚約者を奪った』って設定だったような……?
※2025年5月に副題を追加しました。
疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!
ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。
退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた!
私を陥れようとする兄から逃れ、
不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。
逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋?
異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。
この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?
【本編完結】伯爵令嬢に転生して命拾いしたけどお嬢様に興味ありません!
ななのん
恋愛
早川梅乃、享年25才。お祭りの日に通り魔に刺されて死亡…したはずだった。死後の世界と思いしや目が覚めたらシルキア伯爵の一人娘、クリスティナに転生!きらきら~もふわふわ~もまったく興味がなく本ばかり読んでいるクリスティナだが幼い頃のお茶会での暴走で王子に気に入られ婚約者候補にされてしまう。つまらない生活ということ以外は伯爵令嬢として不自由ない毎日を送っていたが、シルキア家に養女が来た時からクリスティナの知らぬところで運命が動き出す。気がついた時には退学処分、伯爵家追放、婚約者候補からの除外…―― それでもクリスティナはやっと人生が楽しくなってきた!と前を向いて生きていく。
※本編完結してます。たまに番外編などを更新してます。
悪役令嬢ってもっとハイスペックだと思ってた
nionea
恋愛
ブラック企業勤めの日本人女性ミキ、享年二十五歳は、
死んだ
と、思ったら目が覚めて、
悪役令嬢に転生してざまぁされる方向まっしぐらだった。
ぽっちゃり(控えめな表現です)
うっかり (婉曲的な表現です)
マイペース(モノはいいようです)
略してPUMな侯爵令嬢ファランに転生してしまったミキは、
「デブでバカでワガママって救いようねぇわ」
と、落ち込んでばかりもいられない。
今後の人生がかかっている。
果たして彼女は身に覚えはないが散々やらかしちゃった今までの人生を精算し、生き抜く事はできるのか。
※恋愛のスタートまでがだいぶ長いです。
’20.3.17 追記
更新ミスがありました。
3.16公開の77の本文が78の内容になっていました。
本日78を公開するにあたって気付きましたので、77を正規の内容に変え、78を公開しました。
大変失礼いたしました。77から再度お読みいただくと話がちゃんとつながります。
ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる