【完結】ハーフ☆ブラザー 突然出てきた弟に溺愛を通り越してストーカーされてます!

一茅苑呼

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第二章 ひとりぼっちのシュークリーム

お返しは倍返しするから、ね?【2】

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思い知らされた事実に、吐き捨てるようにして、大地の背中に言い放つ。

「いい歳して、高校生相手に欲情するような、バカな女なのよ。もうじき三十にもなるっていうのに……!」

悔しいやら情けないやらで、涙がにじんできた。

ホント、私ってば、どうかしてる……。

うつむいて乱暴に目じりを拭っていると、頭上に影ができた。
大地が、私の側にかがみこんでいた。困ったような顔をして、のぞきこんでくる。

「……泣かせちゃったね。子供で、ごめんね」

いたわるような優しい声音が、本人の言葉を否定していた。気づかされて、大きく首を横に振る。

「ううん。あんたは大人よ。歳より、ずっとね。
自分の境遇を悲観してヤケになったり、私や父さんを恨んだりしてない分だけ。ちゃんと、自分で受け止めているし……」
「……冷めているだけかもよ?」

おどけて肩をすくめてみせる大地を、正面から見据えた。強い口調で言い返す。

「そうじゃないでしょ。そういうとこ、見せてないだけなんじゃない?
あんた、自分のお母さんにさえ、やせ我慢して『いい子』を演じてみせてたんじゃないの? つらくない振りして」

大地は黙ってしまった。
表情を無くして、ただ、私を見つめていた。痛いほど、真っすぐに。

ややして、その瞳が宙をさまよった。力なく座りこみ、ひざを抱える。

「だって……そうじゃなきゃ、あの人も困ったと思うし……」
「困らせたくなかったんだ……?」

うん、と、か細い声が答えた。今にも泣きだしそうな表情だった。
急に、大地が小さな子供に見えて、思わず腕を伸ばし、抱き寄せてしまう。

「まいさん……?」
「偉かったね。きっと、あんたはたくさん、いろんなことを我慢して、お母さんの愛情、欲しがったんだろうね」

いまどきの子供なら、当たり前に与えられるだろう、物品の数々と引き換えに。

「お母さんは、ちゃんと応えてくれた?」
「…………まぁまぁ、かな」

ささやき似た声は苦笑まじりで、存分には得られなかったことを物語っていた。

それは、望んでも手に入らなかったのか、望むことすら諦めてしまったのか。どちらにせよ、満たされなかったのだろうと、思う。

力をこめて、大地の頭を抱きしめる。
どうしよう……胸が痛くて、たまらない。

「───ごめん、まいさん。首が、痛いんだけど」

あわてて、私は腕を離した。
すると大地は、ソファーの足元を背にした私に飛びつくようにして、胸の中に顔を埋めてきた。……おい。

「あー、気持ちいい。やわらかくて、あったかい。しばらくこのままでいさせて?」
「ちょっと、調子にのりすぎ……」
「あとで、お礼は倍返しするから。ね?」

お礼って……倍返しって……。

頭痛がしたけど、さっき見た大地の横顔が切ないくらいに痛々しかったのを思いだし、そのまま彼に、胸を貸してやった。



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