【完結】無能と称され婚約破棄された精霊の愛し子は国を見切ります

ルー

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番外編①フェナとサツキの裏側(1)

本日は2話投稿します。



―――――――――――――――――

ベルの音が響きサツキは部屋の扉をノックする。

「お呼びですか?」

「サツキよね。フェナを呼んできてくれない?貴女とフェナにお話しがあるのよ。」

扉ごしの会話だった。

クリムゾン大公家の現当主ハル・クリムゾンは信用している侍女以外部屋の中には入れない。

今ハルの部屋に入れているのは専属侍女のメリィと侍女長のアルシェだけだ。

「連れてまいりました。」

サツキは近くの部屋を掃除していたフェナを連れてくる。

「ちょっとサツキ。突然ついて来いってどうしたのよ。それも総帥閣下のお部屋になんの用事があって。」

フェナは小声でサツキに言う。

「私とフェナが呼ばれてるの。」

「嘘っ!」

サツキの返事にフェナは小さく声をあげる。

「そう、ありがとう。中に入ってちょうだい。」

そんな2人の会話は小声で行われていたのでハルには聞かれずにすんだようだ。

ハルはサツキとフェナに中に入るように促す。

「「し、失礼します。」」

サツキとフェナは驚いた。

ハルの部屋に入るのは初めてだった。

侍女になる面接のときでさえ入ることはなかった。

恐る恐る扉を開け中に入るとソファーに腰かけ優雅に紅茶を飲むハルの姿があった。

「そこにかけてちょうだい。」

ハルは目で対面のソファーを指す。

「「かしこまりました。」」

サツキとフェナはソファーに座った。

ソファーはふかふかで汚れなんて一つもない。

「お話があるとお聞きしました。私たちが何か致しましたでしょうか?」

フェナは緊張に震えた声で言う。

「そんなに緊張しなくても大丈夫よ。取って食うわけではないのだから。」
(そんなに緊張していたら重要な話を聞き逃すわよ?別に解雇したりするわけではないのだから。)

ハルは苦笑いする。

「メリィ。お茶を入れて差し上げて。」

ハルは自分の後ろで待機しているメリィに言う。

「かしこまりました。お2人とも、苦い紅茶と甘い紅茶のどちらがいいですか?」
(かしこまりました。サツキさん、フェナさん。毒入りの紅茶と媚薬入りの紅茶どちらがいいですか?)

「普通の紅茶はありませんか?」
(何も入っていない紅茶はありませんか?)

フェナはメリィの嫌味に顔を引き攣らせた。

サツキはメリィの言葉の裏にある意味に気づいていない。

しかしフェナの表情を見てよい意味ではないと悟ったらしく黙り込んでいる。

「メリィ。からかわないであげてちょうだい。話が進まないわ。」

見かねたハルが言う。

「申し訳ございませんでした。」

メリィは不満そうな表情をしながらも従った。

「どうぞ。ラピスラズリ大帝国産の最高級の茶葉ローズマリーです。」

メリィは紅茶をサツキとフェナの前に置く。

「「ありがとうございます。メリィさん。」」

メリィはハルの後ろに戻ると無感情な瞳を2人に向けた。

((こわっ!))

2人がそう思うのも仕方がないだろう。

「ごめんなさい仕事中に呼んでしまって。」

ハルは申し訳なさげに言う。

「総帥閣下のお呼びですから。仕事もちょうどひと段落したところでしたので。」

サツキが言い、フェナはうなずく。

「そう。よかったわ。でも屋敷の中で総帥閣下と呼ぶのはやめて欲しいわ。その・・・普通に呼んで欲しいの。」

ハルはサツキとフェナに言う。

「ですが・・・私たちの間では総帥閣下という呼び名が定着してしまいまして。それに総帥閣下の方が親しみやすさが感じられますし・・・。」

サツキが言う。

「そうなの?親しみやすさね。うふふ。」

ハルは嬉しそうに笑う。

「よかったですねお嬢様。親しみやすいと言って貰えて。」

メリィが言う。

「うん。」

ハルがうなずいた。

「話がいろいろとずれてしまった気がするのだけど・・・。貴女たちが今持っている仕事は何かしら?」

「私はお屋敷の2階の掃除を担当しております。」

「私は総帥閣下のベル係です。」

フェナ、サツキの順で言う。

「そう。ねえ、メリィ。掃除とベルが一人ずつ減ってもじゅうぶんに回せるわよね?」

ハルは振り返ってメリィに言う。

「はい、じゅうぶん回せます。」

「そこで屋敷でメリィとアルシェの次に腕があると言われるサツキとフェナに頼みがあるの。」

ハルが頼みと言う。

ハルの頼みは則ち命令だ。

拒否権は一切ない。

拒否したらハルは許してくれるかもしれないがあとでメリィに呼び出され説教を受けるはずだ。

もっと怖いのは屋敷でのハルのファンクラブのメンバーたちだ。

断ったという話をメリィから聞いたら屋敷外のファンクラブのメンバーにも情報を渡すはずだ。

情報を渡されたらたまったもんじゃない。

クリムゾン大公家の侍女を辞めた後どこの貴族にも雇ってもらえなくなる。

頭のいいフェナは考えた。

そして結論を出す。

これ、断れないじゃん・・・と。

「はい、何なりとお申し付けください。」

フェナが必死になって考えているうちにサツキは何も考えずにうなずいていた。

サツキがうなずいたことによりフェナの拒否権はなくなった。

(ちょっと待って。そこは少し考えさせてくださいって言うところでしょう!)

フェナは内心悲鳴をあげた。

「わ、私もです。何なりとお申し付けください。」

と言うしか道はなかったのである。

(面倒ごとに巻き込まれる予感しかしないんですけど)

「詳しい話はアルシェがするわ。そのまま侍女長室に行ってもらえるかしら?」

ハルはこてんと首を傾げて言う。

(なんていう破壊力!私もファンクラブに入ろうかしら・・・って何を考えているのよ!)

「「かしこまりました。」」

やはり拒否権はなかった。




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