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今後について(2)
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「2つ目だけど皇太子殿下とのお茶会でのお茶菓子は準備は私がするのかしら?」
「お茶菓子に関しましては出す紅茶の品目と一緒に2時までには決めていただけると幸いです。」
サツキが言う。
「・・・そう。ちなみにそのお茶菓子はどこで買ってきた物なのかしら?」
「・・・フェナ。」
サツキは今だ悶絶しているフェナに声をかける。
「あ、申し訳ありません。お茶菓子に関しましては担当は私ですので。よろしくお願いします。」
フェナは我に返った後ユリアに頭を下げた。
「皇太子殿下とのお茶会のお茶菓子についてですね!ご安心ください。あの有名なティリアス商会から仕入れました。マーマレードに50種類のクッキー。あとはですね新作の溶けないチョコレートもありますよ!」
テンション高めなフェナにユリアは微笑んだ。
「溶けないチョコレートだなんてどうやって作ったのかしら?それはつまり暖かい所に置いておいても溶けないということよね?」
「はい。そうです。ティリアス商会の目玉商品です。」
フェナは大きくうなずいた。
「・・・あとで味見してみたいわ。」
「はい!ご準備しますね。いつ頃お持ちすればよろしいでしょうか。」
フェナは嬉しそうに言う。
「そうね。特に指定はないけれど2時までには食べてみたいわね。」
「かしこまりました。」
フェナは嬉しそうに頭を下げた。
「いつも朝ごはんを作ってくれる料理人はどなたなのかしら?」
朝食を食べ終わった後ナプキンで口元を拭きながら尋ねた。
「東の宮の料理長です。名前はシェイア・リーセントです。いかつい顔ですがその優しさに惚れ込む女性が多いそうです。」
「・・・そうなの。」
サツキが当たり障りのない返答をするとユリアは考え込んだ。
「シェイアさんはお菓子は好きかしら?」
「はい、シェイアさんはお菓子が大好きだそうです。ですがお菓子作りがその・・・なんと言えば良いのでしょう・・・壊滅的に駄目なのです。普通の料理は宮廷料理人並みなのですがお菓子やデザートは本当に全然だめなんです。」
「そうなのね。シェイアさんはお菓子作りが下手・・・っと。」
ユリアはメモ帳に大きく東の宮の料理長シェイア・リーセントと書き込みその下に一回り小さい文字でお菓子作りが壊滅的と書き込んだ。その下に追加で料理の腕は宮廷料理人に匹敵する・・・と書いた。
「ユリアお嬢様。何を書いているのですか?」
フェナが覗き込んだ。
「シェイアさんのことについてよ。これから東の宮でお世話になるのだからここの人のことは少しでも知っておきたいと思ったのよ。」
ユリアは柔らかく笑った。
「お嬢様!なんていう心の持ち主なのですか!尊敬します!」
フェナは感極まったように言う。
「そんな、言いすぎよ。」
うふふとユリアが笑い、フェナが笑い返す。
そんな2人を半ば呆れたように見つめるサツキ。
その時だった。
居間の扉がノックされた。
一瞬にしてその場が静まり返った。
「どなた・・・かしら?」
「ユリア、起きているわよね。そろそろ9時なのだけどまだ朝食を食べ終わっていないのかしら?」
恐る恐るユリアが尋ねるとじゃっかん嫌味を混ぜながら扉の向こうで声が響く。
「名乗らないだなんて。どこの賊なんでしょうね。」
フェナは小声で相手に聞こえないように言う。
「ちょっとフェナ。この声は総帥閣下よ。」
慌てたようにサツキが言う。
「入っていいかしら?」
当然のように名乗らない。
「総帥閣下・・・ですか?」
ユリアが尋ねると声は答えた。
「あのね、朝食を食べ終わったら来るという予定なのになかなか来ないから何をしているのか気になって身に来たのでしょう。」
言い終わると部屋の主の許可なく扉を開けて入ってきた。
美しい銀色の髪は太陽の光に反射し程よく輝いている。
水色の瞳は不機嫌そうな色を色濃く残している。
着ている服は当然のごとく軍服だ。
「申し訳ありません。話し込んでしまって・・・。」
「まあ、親睦を深めることはいいことだわ。でもね、予定は予定なの。いくら何でも忘れないで欲しいわ。こっちにも予定があるのよ。私10時から定例会議があるからそれまでだけど今後について話し合いたいわ。」
ハルは早口で言う。
「わかりました。では総帥閣下の執務室に移動するということでよろしいでしょうか?」
ユリアが尋ねるとハルは首を振った。
「いいえ。移動する時間なんてないわ。ここでいいわ。」
ハルは居間のソファーに腰かける。
部屋の主であるユリアは座る許可を出していない。
「なにをぼーっとしているの。早く座ってちょうだい。」
言い方と態度を含めて明らかに怒っている。
おおらかで優しかった初対面の時とは大違いだ。
「お嬢様。あれが怒ったときの総帥閣下です。」
驚きのあまり立ち尽くすユリアにフェナが小声で言う。
「す、すみませんでした。」
我に返ったユリアは慌ててハルの向かい側のソファーに座った。
「今後についてだけど・・・ああ。紅茶はいらないわ。
サツキとフェナは下がっていてちょうだい。何かあったら呼ぶわ。」
ハルにサツキとフェナは部屋から追い出されてしまった。
「あの、サツキとフェナを追い出してまで私に話したかったことって何ですか?」
ユリアは気を取り直してハルを見つめた。
「貴女・・・ヴィ―ルヘミア王国に復讐したいのでしょう?」
ハルはユリアの目をじっと見つめる。
まるでどんな感情も何一つ見逃さないといったような表情だった。
ばれていた。
なんて言い訳すればいいのか・・・。
ユリアはとっさに考えた。
「わ、私は・・・。」
「ごまかしや嘘なんていらないわ。本当のことを教えて欲しいのよ。貴女がどんなことを思っているのか、何をしたいのか。嘘偽りなく教えて欲しいわ。」
ハルはユリアの動揺を瞬時に見抜く。
「私は・・・そうです。総帥閣下のおっしゃる通りヴィ―ルヘミア王国に復讐したいです。私を無能とほざいたあの奴らに。」
「それは表面・・・でしょう。本心は?」
ユリアが答えるとハルは真顔で尋ねた。
「総帥閣下はすべてご存じなのですね。私が無能のふりをしていたことも追放は望んだことであったということも。ご存じだったのですね。」
何かあきらめたようにユリアは言う。
「私は精霊の愛し子を使いつぶすような王国にはいたくない・・・そう思ったのです。もし私がヴィ―ルヘミア王国を出て行っても次の人が次代が迷惑を被ることとなるのです。今までの方たちは我慢していたそうですが私はもうこれ以上我慢できないと思ったので力が弱まったふりをし、無能のふりをしたのです。」
「君、けっこう策士だね。深い所まで考えてるのね。」
ハルは薄く微笑む。
「いいわ。その復讐、手伝ってあげる。」
「え!?」
ユリアは思わず大声をあげる。
「ど、どうして手伝ってくださるだなんて突然・・・。」
困惑気味に言うユリアにハルは言った。
「あら、何か理由がないと駄目かしら。表は精霊の愛し子の願いをかなえたい。裏は邪魔なヴィ―ルヘミア王国を滅ぼしたい・・・これでいいかしら?」
「総帥閣下って素直なんですね。」
ユリアは笑いながら言う。
「そんなこと言われたの初めてよ。」
ハルは微笑む。
「そうね、これからもここに住むんですし私のことは気軽にハルと呼んでちょうだい。親戚の子に総帥閣下だなんてなんかいやだわ。」
「わかりましたハル。」
「できればその口調もやめて欲しいわ。」
「それは・・・考えておきます。」
ユリアが言うとハルはクスリと笑った。
「お茶菓子に関しましては出す紅茶の品目と一緒に2時までには決めていただけると幸いです。」
サツキが言う。
「・・・そう。ちなみにそのお茶菓子はどこで買ってきた物なのかしら?」
「・・・フェナ。」
サツキは今だ悶絶しているフェナに声をかける。
「あ、申し訳ありません。お茶菓子に関しましては担当は私ですので。よろしくお願いします。」
フェナは我に返った後ユリアに頭を下げた。
「皇太子殿下とのお茶会のお茶菓子についてですね!ご安心ください。あの有名なティリアス商会から仕入れました。マーマレードに50種類のクッキー。あとはですね新作の溶けないチョコレートもありますよ!」
テンション高めなフェナにユリアは微笑んだ。
「溶けないチョコレートだなんてどうやって作ったのかしら?それはつまり暖かい所に置いておいても溶けないということよね?」
「はい。そうです。ティリアス商会の目玉商品です。」
フェナは大きくうなずいた。
「・・・あとで味見してみたいわ。」
「はい!ご準備しますね。いつ頃お持ちすればよろしいでしょうか。」
フェナは嬉しそうに言う。
「そうね。特に指定はないけれど2時までには食べてみたいわね。」
「かしこまりました。」
フェナは嬉しそうに頭を下げた。
「いつも朝ごはんを作ってくれる料理人はどなたなのかしら?」
朝食を食べ終わった後ナプキンで口元を拭きながら尋ねた。
「東の宮の料理長です。名前はシェイア・リーセントです。いかつい顔ですがその優しさに惚れ込む女性が多いそうです。」
「・・・そうなの。」
サツキが当たり障りのない返答をするとユリアは考え込んだ。
「シェイアさんはお菓子は好きかしら?」
「はい、シェイアさんはお菓子が大好きだそうです。ですがお菓子作りがその・・・なんと言えば良いのでしょう・・・壊滅的に駄目なのです。普通の料理は宮廷料理人並みなのですがお菓子やデザートは本当に全然だめなんです。」
「そうなのね。シェイアさんはお菓子作りが下手・・・っと。」
ユリアはメモ帳に大きく東の宮の料理長シェイア・リーセントと書き込みその下に一回り小さい文字でお菓子作りが壊滅的と書き込んだ。その下に追加で料理の腕は宮廷料理人に匹敵する・・・と書いた。
「ユリアお嬢様。何を書いているのですか?」
フェナが覗き込んだ。
「シェイアさんのことについてよ。これから東の宮でお世話になるのだからここの人のことは少しでも知っておきたいと思ったのよ。」
ユリアは柔らかく笑った。
「お嬢様!なんていう心の持ち主なのですか!尊敬します!」
フェナは感極まったように言う。
「そんな、言いすぎよ。」
うふふとユリアが笑い、フェナが笑い返す。
そんな2人を半ば呆れたように見つめるサツキ。
その時だった。
居間の扉がノックされた。
一瞬にしてその場が静まり返った。
「どなた・・・かしら?」
「ユリア、起きているわよね。そろそろ9時なのだけどまだ朝食を食べ終わっていないのかしら?」
恐る恐るユリアが尋ねるとじゃっかん嫌味を混ぜながら扉の向こうで声が響く。
「名乗らないだなんて。どこの賊なんでしょうね。」
フェナは小声で相手に聞こえないように言う。
「ちょっとフェナ。この声は総帥閣下よ。」
慌てたようにサツキが言う。
「入っていいかしら?」
当然のように名乗らない。
「総帥閣下・・・ですか?」
ユリアが尋ねると声は答えた。
「あのね、朝食を食べ終わったら来るという予定なのになかなか来ないから何をしているのか気になって身に来たのでしょう。」
言い終わると部屋の主の許可なく扉を開けて入ってきた。
美しい銀色の髪は太陽の光に反射し程よく輝いている。
水色の瞳は不機嫌そうな色を色濃く残している。
着ている服は当然のごとく軍服だ。
「申し訳ありません。話し込んでしまって・・・。」
「まあ、親睦を深めることはいいことだわ。でもね、予定は予定なの。いくら何でも忘れないで欲しいわ。こっちにも予定があるのよ。私10時から定例会議があるからそれまでだけど今後について話し合いたいわ。」
ハルは早口で言う。
「わかりました。では総帥閣下の執務室に移動するということでよろしいでしょうか?」
ユリアが尋ねるとハルは首を振った。
「いいえ。移動する時間なんてないわ。ここでいいわ。」
ハルは居間のソファーに腰かける。
部屋の主であるユリアは座る許可を出していない。
「なにをぼーっとしているの。早く座ってちょうだい。」
言い方と態度を含めて明らかに怒っている。
おおらかで優しかった初対面の時とは大違いだ。
「お嬢様。あれが怒ったときの総帥閣下です。」
驚きのあまり立ち尽くすユリアにフェナが小声で言う。
「す、すみませんでした。」
我に返ったユリアは慌ててハルの向かい側のソファーに座った。
「今後についてだけど・・・ああ。紅茶はいらないわ。
サツキとフェナは下がっていてちょうだい。何かあったら呼ぶわ。」
ハルにサツキとフェナは部屋から追い出されてしまった。
「あの、サツキとフェナを追い出してまで私に話したかったことって何ですか?」
ユリアは気を取り直してハルを見つめた。
「貴女・・・ヴィ―ルヘミア王国に復讐したいのでしょう?」
ハルはユリアの目をじっと見つめる。
まるでどんな感情も何一つ見逃さないといったような表情だった。
ばれていた。
なんて言い訳すればいいのか・・・。
ユリアはとっさに考えた。
「わ、私は・・・。」
「ごまかしや嘘なんていらないわ。本当のことを教えて欲しいのよ。貴女がどんなことを思っているのか、何をしたいのか。嘘偽りなく教えて欲しいわ。」
ハルはユリアの動揺を瞬時に見抜く。
「私は・・・そうです。総帥閣下のおっしゃる通りヴィ―ルヘミア王国に復讐したいです。私を無能とほざいたあの奴らに。」
「それは表面・・・でしょう。本心は?」
ユリアが答えるとハルは真顔で尋ねた。
「総帥閣下はすべてご存じなのですね。私が無能のふりをしていたことも追放は望んだことであったということも。ご存じだったのですね。」
何かあきらめたようにユリアは言う。
「私は精霊の愛し子を使いつぶすような王国にはいたくない・・・そう思ったのです。もし私がヴィ―ルヘミア王国を出て行っても次の人が次代が迷惑を被ることとなるのです。今までの方たちは我慢していたそうですが私はもうこれ以上我慢できないと思ったので力が弱まったふりをし、無能のふりをしたのです。」
「君、けっこう策士だね。深い所まで考えてるのね。」
ハルは薄く微笑む。
「いいわ。その復讐、手伝ってあげる。」
「え!?」
ユリアは思わず大声をあげる。
「ど、どうして手伝ってくださるだなんて突然・・・。」
困惑気味に言うユリアにハルは言った。
「あら、何か理由がないと駄目かしら。表は精霊の愛し子の願いをかなえたい。裏は邪魔なヴィ―ルヘミア王国を滅ぼしたい・・・これでいいかしら?」
「総帥閣下って素直なんですね。」
ユリアは笑いながら言う。
「そんなこと言われたの初めてよ。」
ハルは微笑む。
「そうね、これからもここに住むんですし私のことは気軽にハルと呼んでちょうだい。親戚の子に総帥閣下だなんてなんかいやだわ。」
「わかりましたハル。」
「できればその口調もやめて欲しいわ。」
「それは・・・考えておきます。」
ユリアが言うとハルはクスリと笑った。
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