18 / 26
【期間限定】web版 どうぞお続けになって下さい。のラスト3話
第63話 視察同行。
しおりを挟むとある高位貴族の領地の別邸にて―――
ジェレマイアとロザリンドが向かった視察先は、とある高位貴族の領地であった。
季節が初夏へと向かう頃に、夏を呼ぶ為の通過儀礼とばかりに春の花々を綺麗に散らす大雨が降る。それは連日のように降り続く為、アンストート国のどこかしらの領地で水害の被害がおこっていた。
魔法や魔道具がある世界とはいえ、全てに万能ではない。
そのひとつに、石壁を形成する魔法が込められた魔法石にも数に限りがあるからということもあるのだろう。
国も対策を打ち出し被害にあった領地の救済や援助がスムーズに出来るように予算を毎年割いて対応しているが、被害を受ける領地の規模も数も同じではない。
それぞれのち地形に見合った予防策の意見が纏まるまで人が決断を下していく以上簡単ではないのだ。
川や湖を大きな土壁などでぐるりと取り囲み氾濫時の被害の軽減を狙っているところであるが、それには人員も予算もかなり必要である。
国が補助金を出してはいるが、水害後に次の災害を防ぐ為として行動するが、全ての被害があった領地に膨大な補助金を出すのは難しい為、優先順位が付けられている。だが大雨は毎年あることから、被害を受ける領地も毎年のように追加される為、順番待ちが増え続けているという訳で、まずは復興をする為に順番待ちで待たされ、順番が来たとしても時間も手間もお金も掛かるので、資金力のない領地の復興は滞っている現状となっていた。
そういう領地に対しては特に対策という対策をたてられずにいる。
そんな中、高位貴族であるレッドフォード侯爵家の領地に、従来よりも資金を必要としない画期的な水害予防が生み出された事を知り、今後の事を考え王太子自らが視察することが決定したのだった。
上手くいけば今まで頭を悩ませていた懸案が解消されるかもしれない国にとって重要な視察である。
そこに王太子殿下の婚約者で次期王太子妃のリデル侯爵令嬢が急遽同行すると聞き、対応するレッドフォード侯爵家は大慌てで追加の準備をしたのだった。
その重要な視察で、ロザリンドは初手から躓いた。
ジェレマイアが乗る立派な馬車に同乗すると思っていたロザリンド。
視察先へと出発する直前に違う馬車が用意されていると知ると、不機嫌な声で案内していた従者に「貴方、私を誰だと思っているの? 案内する馬車を間違えているわ。ジェレマイア様がお乗りになる馬車へ案内しなさい」と話し強引にジェレマイアが乗る馬車へと向かったが、騒ぎを聞きつけ駆けつけたジェレマイアに「馬車内で書類仕事をしなければならないから貴女を乗せる場所がない」とキッパリと断られた。
レッドフォードの領地へ向かう際の中継地点での宿泊もフロアは同じであるが端と端で距離があり、ロザリンドは不満をもつ。
食事は共に出来るが、同じテーブルに側近もおり仕事の話ばかり。
これから向かう領地の話であるというのに、会話に入っても来ず聞いてもいないような様子。
これで王太子から次期王太子妃として何を学び得ようとしているのか甚だ謎である。
レッドフォード侯爵家の領地へ到着し、素晴らしい歓待を受けロザリンドの機嫌も少し直った翌日―――
ロザリンドはまた大きく躓いた。
侯爵家が行っている水害対策の視察に、派手なドレスを着用。
胸元には王宮の夜会くらいでしかお目見え出来ないような存在感のある大きなサファイアのネックレスに両耳には大変重そうなネックレスと対になったピアス。
野山や湖周辺を歩くことを意識した格好ではない。
不謹慎極まりないとレッドフォード侯爵家の面々は顔を顰めた。
勿論ジェレマイアも失望に顔を歪め、ロザリンドに「君は真面目に視察する気があるのか?」と低い声で注意したという。
ロザリンド Side
天井近くまである縦に長い窓から外を眺めつつロザリンドは指の爪をギリギリと噛んだ。
母親にも幾度も噛むのを窘められるが直る様子がなかった。
「何もかも上手くいかないわ」
この視察でジェレマイア様と距離が縮まるどころか遠くなるばかり。
周囲の批判的な視線も潜んだ声も。
ロザリンドは原因が分からないことばかり。
ロザリンドが次期王太子妃という地位にあるという事の配慮が足りず、愚かな者たちばかりだと不満だけを溜めていた。
420
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
私に姉など居ませんが?
山葵
恋愛
「ごめんよ、クリス。僕は君よりお姉さんの方が好きになってしまったんだ。だから婚約を解消して欲しい」
「婚約破棄という事で宜しいですか?では、構いませんよ」
「ありがとう」
私は婚約者スティーブと結婚破棄した。
書類にサインをし、慰謝料も請求した。
「ところでスティーブ様、私には姉はおりませんが、一体誰と婚約をするのですか?」
婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました
kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」
王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。