転生したら血塗れ皇帝の妹のモブでした。

iBuKi

文字の大きさ
107 / 110
第四章 クラウディアを得んと暗躍する者達。

クラウディアへ時折感じていた違和感は……

しおりを挟む


 クラウディアの瞳の奥に時折垣間見える、不思議な輝き。

 シュヴァリエと同じく膨大な魔力保有者であるから、魔力が漏れ出ないように制御する訓練は必須だ。
 シュヴァリエは叔父であるアレスが介入するまでの幼い時は虐待に近いような教育を母親の指示に従った教師陣から受けてきたので、かなり早い段階で身につけた。
 クラウディアはシュヴァリエが選んだ教師陣で、なおかつ監督していたのはアンナであったので、そんな命知らずの教師はいなかった。
 勿論、シュヴァリエを教育した教師たちはアレスから全員紹介状無しで皇宮から追い出されているので、まかり間違ってもクラウディアを担当することはなかったのだが。
 クラウディアは不思議な娘だった。
 年齢相応の幼い子どもらしさもあるが、突然として大人と変わらない理解力を発揮してみたり、経験したことも学んだこともないことへの共感性や知識を持っていたりする。それらは不遇な生活を送っていたシュヴァリエと出会う前も、過保護な今であっても知り得ない情報や知識もある。

 数百年に一度の周期で稀に誕生する世界のアカシックレコードにアクセス出来る存在。もしかしたらソレなのではないか? と考えたことは幾度かある。
 だが、今一つ決定打にかけていたし、それにしては知識に偏りがアリすぎたこともあって、毎度打ち消した考えだった。

 しかし……彼女の実父の血筋、途絶えたと思われた神秘の血脈、権力者から狙われ逃亡し隠れ続けてきたあの種族なのであれば。
 アカシックレコードなど神にも等しい伝承の夢のような話ではなくて、血脈を失わないための記憶や知識を引き継げる秘術があったとするのならば、クラウディアの不可思議なところにも説明がつくのではないか。

 それも仮定の話であるが。あの種族についてすべてが詳らかになっている訳ではない。あの種族について、皇族の直系だけが読み解くことが出来る禁書があるらしい。もしかすればそこに様々なことが記載されているかもしれない。
 だが枢機卿があれほど固執した存在である、禁書も枢機卿が持ち出していてもおかしくない。愚かな皇帝であり枢機卿とも懇意だったろう先帝は、枢機卿に上手く誘導されて持ち出すことも有り得そうな人物である。

(叔父上に相談してともに書庫に向かうか……)

 目の奥に痛みを感じてシュヴァリエは眉間を指で触れると軽く押して揉んだ。
 愚帝の父を思うと頭痛がするのはいつものことだ。
 あの愚かな父を父と名付けたくもないが、認めたくなくとも、真実、父親であるのが不快だ。

「あの状況で、理性を失って叫んだ言葉だ。真実が含まれている可能性は極めて高い。そして、灰の色変わり。これも見過ごせない。彼らはあの時分は新人で任務を全うすることだけに燃えていた。権力の忖度なくしっかりと見たまま聞いたままを記載したという。本来であれば、その報告書こそが真実を伝えていたはずだ」

 何やら思い詰めた顔で考え事をしていたと思ったら、眉間を揉み始めたシュヴァリエをチラリと視線を向けたあと、これからの話は正直クラウディアのこれからに関わることだ。

 シュヴァリエが黙って聞いていることを確認してアレスは話を続ける。
 アレスの声は普段と変わらぬ落ち着きを保っていたが、内心では、ついにこの時が来たかと予感していた。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

モブが乙女ゲームの世界に生まれてどうするの?【完結】

いつき
恋愛
リアラは貧しい男爵家に生まれた容姿も普通の女の子だった。 陰険な意地悪をする義母と義妹が来てから家族仲も悪くなり実の父にも煙たがられる日々 だが、彼女は気にも止めず使用人扱いされても挫ける事は無い 何故なら彼女は前世の記憶が有るからだ

転生したら乙女ゲームの主人公の友達になったんですが、なぜか私がモテてるんですが?

山下小枝子
恋愛
田舎に住むごく普通のアラサー社畜の私は車で帰宅中に、 飛び出してきた猫かたぬきを避けようとしてトラックにぶつかりお陀仏したらしく、 気付くと、最近ハマっていた乙女ゲームの世界の『主人公の友達』に転生していたんだけど、 まぁ、友達でも二次元女子高生になれたし、 推しキャラやイケメンキャラやイケオジも見れるし!楽しく過ごそう!と、 思ってたらなぜか主人公を押し退け、 攻略対象キャラからモテまくる事態に・・・・ ちょ、え、これどうしたらいいの!!!嬉しいけど!!!

【本編完結】伯爵令嬢に転生して命拾いしたけどお嬢様に興味ありません!

ななのん
恋愛
早川梅乃、享年25才。お祭りの日に通り魔に刺されて死亡…したはずだった。死後の世界と思いしや目が覚めたらシルキア伯爵の一人娘、クリスティナに転生!きらきら~もふわふわ~もまったく興味がなく本ばかり読んでいるクリスティナだが幼い頃のお茶会での暴走で王子に気に入られ婚約者候補にされてしまう。つまらない生活ということ以外は伯爵令嬢として不自由ない毎日を送っていたが、シルキア家に養女が来た時からクリスティナの知らぬところで運命が動き出す。気がついた時には退学処分、伯爵家追放、婚約者候補からの除外…―― それでもクリスティナはやっと人生が楽しくなってきた!と前を向いて生きていく。 ※本編完結してます。たまに番外編などを更新してます。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

妖精隠し

恋愛
誰からも愛される美しい姉のアリエッタと地味で両親からの関心がない妹のアーシェ。 4歳の頃から、屋敷の離れで忘れられた様に過ごすアーシェの側には人間離れした美しさを持つ男性フローが常にいる。 彼が何者で、何処から来ているのかアーシェは知らない。

どうして私が我慢しなきゃいけないの?!~悪役令嬢のとりまきの母でした~

涼暮 月
恋愛
目を覚ますと別人になっていたわたし。なんだか冴えない異国の女の子ね。あれ、これってもしかして異世界転生?と思ったら、乙女ゲームの悪役令嬢のとりまきのうちの一人の母…かもしれないです。とりあえず婚約者が最悪なので、婚約回避のために頑張ります!

攻略なんてしませんから!

梛桜
恋愛
乙女ゲームの二人のヒロインのうちの一人として異世界の侯爵令嬢として転生したけれど、攻略難度設定が難しい方のヒロインだった!しかも、攻略相手には特に興味もない主人公。目的はゲームの中でのモフモフです! 【閑話】は此方→http://www.alphapolis.co.jp/content/cover/808099598/ 閑話は最初本編の一番下に置き、その後閑話集へと移動しますので、ご注意ください。 此方はベリーズカフェ様でも掲載しております。 *攻略なんてしませんから!別ルート始めました。 【別ルート】は『攻略より楽しみたい!』の題名に変更いたしました

英雄の番が名乗るまで

長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。 大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。 ※小説家になろうにも投稿

処理中です...