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第四章 クラウディアを得んと暗躍する者達。
クラウディアへ時折感じていた違和感は……
しおりを挟むクラウディアの瞳の奥に時折垣間見える、不思議な輝き。
シュヴァリエと同じく膨大な魔力保有者であるから、魔力が漏れ出ないように制御する訓練は必須だ。
シュヴァリエは叔父であるアレスが介入するまでの幼い時は虐待に近いような教育を母親の指示に従った教師陣から受けてきたので、かなり早い段階で身につけた。
クラウディアはシュヴァリエが選んだ教師陣で、なおかつ監督していたのはアンナであったので、そんな命知らずの教師はいなかった。
勿論、シュヴァリエを教育した教師たちはアレスから全員紹介状無しで皇宮から追い出されているので、まかり間違ってもクラウディアを担当することはなかったのだが。
クラウディアは不思議な娘だった。
年齢相応の幼い子どもらしさもあるが、突然として大人と変わらない理解力を発揮してみたり、経験したことも学んだこともないことへの共感性や知識を持っていたりする。それらは不遇な生活を送っていたシュヴァリエと出会う前も、過保護な今であっても知り得ない情報や知識もある。
数百年に一度の周期で稀に誕生する世界のアカシックレコードにアクセス出来る存在。もしかしたらソレなのではないか? と考えたことは幾度かある。
だが、今一つ決定打にかけていたし、それにしては知識に偏りがアリすぎたこともあって、毎度打ち消した考えだった。
しかし……彼女の実父の血筋、途絶えたと思われた神秘の血脈、権力者から狙われ逃亡し隠れ続けてきたあの種族なのであれば。
アカシックレコードなど神にも等しい伝承の夢のような話ではなくて、血脈を失わないための記憶や知識を引き継げる秘術があったとするのならば、クラウディアの不可思議なところにも説明がつくのではないか。
それも仮定の話であるが。あの種族についてすべてが詳らかになっている訳ではない。あの種族について、皇族の直系だけが読み解くことが出来る禁書があるらしい。もしかすればそこに様々なことが記載されているかもしれない。
だが枢機卿があれほど固執した存在である、禁書も枢機卿が持ち出していてもおかしくない。愚かな皇帝であり枢機卿とも懇意だったろう先帝は、枢機卿に上手く誘導されて持ち出すことも有り得そうな人物である。
(叔父上に相談してともに書庫に向かうか……)
目の奥に痛みを感じてシュヴァリエは眉間を指で触れると軽く押して揉んだ。
愚帝の父を思うと頭痛がするのはいつものことだ。
あの愚かな父を父と名付けたくもないが、認めたくなくとも、真実、父親であるのが不快だ。
「あの状況で、理性を失って叫んだ言葉だ。真実が含まれている可能性は極めて高い。そして、灰の色変わり。これも見過ごせない。彼らはあの時分は新人で任務を全うすることだけに燃えていた。権力の忖度なくしっかりと見たまま聞いたままを記載したという。本来であれば、その報告書こそが真実を伝えていたはずだ」
何やら思い詰めた顔で考え事をしていたと思ったら、眉間を揉み始めたシュヴァリエをチラリと視線を向けたあと、これからの話は正直クラウディアのこれからに関わることだ。
シュヴァリエが黙って聞いていることを確認してアレスは話を続ける。
アレスの声は普段と変わらぬ落ち着きを保っていたが、内心では、ついにこの時が来たかと予感していた。
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