240 / 497
4章 お爺ちゃんと生配信
209.お爺ちゃんと陣営散歩②
しおりを挟む
休憩を終えて私達は再度登る。全員が登るのを見て声をかけた。
「どう、食事バフ乗ると結構楽でしょ?」
「「「「「…………」」」」」
【マナの木をスキップしながら聞くな】
【コレが無自覚な煽りというやつか】
【スキップVS匍匐前進】
【一人自力で羽ばたいてるだろ、いい加減にしろ!】
【平衡感覚どうなってんだ?】
【パーティー組んだ人かわいそう】
【今日仕事で良かったぜ】
おやおや、さっきまではパーティーメンバーを羨ましがってたのに、この手のひら返しの速さは何事です?
「まぁ、冗談はともかく。輸送あるとないとじゃだいぶ違うでしょ?」
「まぁな。初回は三合目も怪しかったが、これのお陰で余裕を持って三合目も超えられた。そして食事バフでスタミナが減る要素も失せた。あとは煽りがなけりゃもう少し気分良く進めたんだが」
時短君が溜息を吐きながらこちらを見やる。
煽り? なんともけしからんことをする奴もいるもんだ。
私は周囲をきょろきょろ見回して下手人を探した。
【お前だよ!】
【後ろにゃ誰も居ねーよ!】
【居たとしても空飛べるプレイヤーのみ】
【現状アキカゼさんぐらいだろ】
【空飛べるプレイヤーは基本的にここに居ないんだよな】
【どうして?】
【混むって分かってるところ来るか?】
【確かに】
おっと私でしたか、失敬。
この程度でげんなりしてたらスズキさんのテンションについていけないよ?
あの子は普段からジキンさんと探偵さんを振り回してるからね。
「さて、そろそろ地上1000メートル地点だよ。休憩を挟むかい?」
「もう少し行きましょう。少しづつ慣れてきました」
この中ではスタミナの燃費が一番悪いランディス君が声をあげる。
「他のみんなはどうかな?」
「余裕だぜ」
「食事バフが効いてるうちに進んでしまいましょう」
「さんせー!」
「俺もそれでいいぜ」
時短君、ハーノス君、キウイさん、ギン君が順に声を上げた。
「ならば少しお手伝いしてあげよう」
「手伝いだぁ?」
「そう。もし手を滑らせても真下から追い風を打って元の場所に戻してあげるよ」
「それを移動に使うって手は?」
「ズルはダメだよ?」
それをしていいのは一の試練を乗り越えた者だけだ。
なんだったら赤の禁忌でオクト君からスクロールを買う方が早いまである。
【優しいんだか厳しいんだか】
【十分優しいだろ】
【落ちたらLP全損を考えたら優しいよ】
【そっか、落ちると即死なんだっけ】
【地上1000メートルから落下することを想定しないもんな】
【でも輸送使ってる限り重力無視なんだろ?】
【そもそも重力無視が何かさえわかってないんだが】
「重力無視は落下ダメージ無視、風の影響大のパッシヴスキルだね」
【ちょ、ズルじゃん!】
【落ちても死なない件】
【待てよ、距離の関係がある!】
【あ、そうか。距離が離れると落ちるのか】
【上手い話ばっかじゃねーのな】
「ちなみに移送は単体向けだけどスキル複合で二人までなら同時にかけられるよ。こっちは距離が関係なくて、私のスタミナが切れるまで永続的にかかるね」
【輸送もそうだけど移送の重ねがけもヤバいな】
【あれ? もしかして輸送を重ねがけすれば2パーティー行けたんじゃない?】
【天才か!】
【その手があったか!】
「それは無理でしょ。私くらいスタミナ軽減を重ねがけしてても五分で半分になるんだよ? 現実的じゃない」
【輸送だけでもスタミナ消費がアホみたいにかかるのか】
【それは流石にお願いできないな】
【妄想だけで適当言ってすいません】
「良いんだよ。一見してすごそうに聞こえるけど、使い勝手はあまり良くないからね」
そもそもスタミナゲージそのものがないことは明かさないほうがいいかな。
それくらいこのゲームにおけるスタミナの維持は重要だ。
そして頂上まで登り切ると大きな分岐点が見えてくる。
パーティーメンバーは休まずに頂上にたどり着き、いくつかのスキルが変化を遂げ、又は新しい派生先が生まれたことを表情で物語っていた。
「ここが、頂上……本当に雲しかないんですね」
「見晴らしのいい場所だろう?」
「コレがマスターやムッコロさんの見た景色……感動しました!」
「スキルの派生を確認したわ。呼吸系、確かに」
「お、俺も生えたわ」
「残念、俺は生えなかった。けど変化したスキルがいくつかある。コレがスタミナ系ってやつか」
どうやら時短君はスキル派生がなかったらしい。
ただ景色を堪能しているランディス君にキウイさん。
スキルの確認をしたハーノス君にギン君。
それぞれがそれぞれの目的を持って雲の先を見た。
「じゃあ先に青の禁忌に行くよ。着いておいで」
「え、このまま最後まで連れていってくれるんですか?」
ランディス君が雲の足場を前に怖気付く。
「そもそも今回の配信がそういう企画だからね。君たちは運が良い。ぜひ最後まで付き合ってくれ」
「俺はありがたくその話に乗らせてもらうぜ」
「私も先行視察のためにもお供いたします」
「私はムッコロ先輩のお誘いでレムリアに行くつもりでーす」
「僕はどうしようかな、取り敢えず行き先は保留で。あ、でも最後までお付き合いします」
「ま、こんな上手い話断る訳ないよな」
「ギン君は自力で行きなよ。金狼君が拗ねるよ?」
「いいのいいの、兄貴は兄貴で俺は俺。兄貴のやり方だけが正解でもないんだわ。それはそれとしてクランとして偵察はしておきたいんだよ。下の連中が情報仕入れろって煩くてな。そいつらを纏めるのもサブマスの仕事なんだよ。兄貴ほど自由にゃできないのさ」
ギン君は片手をブラブラさせながら話をまとめる。
金狼君が生真面目系なら、彼は不真面目系だね。
長男と次男でこうまで変わるか。
まぁウチの長女と次女も気難しい性格してるからね。
人の家族のことまでは口出しできないか。
「取り敢えず最初はおっかなびっくりするけど大丈夫だから体を乗せてみて」
「うっおぉ……なんか不思議な弾力があるな」
「ですね。歩きづらさはありますが、あとは慣れでしょう」
その場で雲に足を取られる時短君。
ジャンプしつつ、最適な動きを見定めるハーノス君。
プレイヤーが変われば行動も変わって見ていて飽きない。
「わぁ、ふわふわのお布団みたいです」
「わっふー、ポヨンポヨンしておもしろーい!」
ランディス君が膝立ちで弾力を確かめ、キウイさんが体全体でポヨンポヨン跳ねていた。
緩みすぎだね、この子は。
ほんの少しだけスズキさんと似たような波動を感じ取ったよ。
そしてそれを遠目で眺めるギン君にそっと近づく。
「なんだよ?」
「いや、ギン君もあの子達に混ざってきたら?」
「嫌だよ。しかもコレ配信してんだろ? 一応サブマスの面目もあるし」
「……本音は?」
「……娘がアキカゼさんのファンでよ、多分試聴するだろうから格好悪いところは見せられないんだよ」
「今頃学校でしょ?」
「これって後でまとめてアーカイブ化されるだろ?」
「されますね」
「なら尚更バカな真似は出来ねぇよ」
「親バカじゃないですか」
「放っとけ。娘は息子と違って目の中に入れても痛くないくらいに可愛いの!」
「わかります。うちも娘が三人居ますからね」
【これ、なんの話?】
【アキカゼさんとこは三姉妹だと?】
【パープルさんにシェリル、あと誰だ?】
「内緒です。あまり有名どころではないクランですからね。本人も恥ずかしがり屋で意地っ張りなので自分から言い出さないうちは私からは明かしません」
【いやいや、アキカゼさん本人が嫌でも有名人だよ】
【別に特定したからって何するわけでもないけどな】
【そりゃそうか】
【でもパープルさんもシェリルも美形だよな? 嫌でも期待が高まるんだが】
「そういうのは私が居ないところでやりなさい。親からしたらみんな可愛い娘ですよ。シェリルは私に似て気難しい性格になってしまいましたが、それでも親からしてみたら自慢の娘なんです」
【さーせん】
【調子に乗りました】
【でも気になる】
【えっ シェリルがアキカゼさん似?】
【似てる場所ある?】
【ストイックなところは似てるといえば似てるのか?】
「それよりも青の禁忌がやって来たよ。先に進んでしまおうか。ちなみに青の禁忌はマナの大木を自力到達した者の前じゃなきゃ姿を見せないから注意ね」
【なるほど】
【そういう仕掛けか】
【助かる】
青の禁忌が到着し、その背から一人飛び立って私たちの前に着地した。その美しい翼を持つ彼女は天空の巫女様だ。
「また貴方か」
「やぁ、天使さん。今日は新しい人を五人連れて来たよ。空導石はあれから順調かい?」
「うむ。其方の導きに感謝してもし足りぬくらいよ。それで、導きの船は出すか?」
「そうしてもらえると助かるな。生憎とあの時に比べて空に不慣れな人が多くてさ」
「船もなく飛んできたのは後にも先にも其方が最初で最後よ」
【天使様美しす】
【同意】
【同意】
【天使様に会いに行くだけでも青の禁忌に需要あるな】
【誰かマナの大木で定期的に店開いてくんねーかな】
【そのうち誰かがやるだろ】
【アキカゼさん以外でやれるようなクランってある?】
【うーん……】
そんなに悩むことだろうか?
どこかで飛空挺を仕入れればそういうことできそうではあるよね。元手が取れるかどうかは別として。
ウチはもう赤の禁忌に店を構えてるからね。今更マナの大木周辺でやるつもりはないよ。
私以外の五人は船に乗り込み、船は不思議な力で上へ上へと羽ばたいていく。
私はそれに着いて行くように空歩を使って空を蹴り上げた。
【アキカゼさん普通に空を飛んでる件】
【何言ってんだ? さっきから飛んでたろ?】
【地上2000メートル一切木に触れずに飛んでたんだよなぁ】
【普通に空を飛んでるのと近くに木があるのとじゃ視覚差がやばい】
【終始おふざけしてたからすっかり忘れてた】
【よくスタミナ持つよな】
【スキルの半分以上がスタミナ軽減系らしいからな】
【パッシヴ極なればこそできる芸当か】
【ツッコミどころは未だに50切ってるところだけどな】
【そういえばそうだった!】
「さて、コレが空導石です。順番にタッチしていってください」
「お、なんかゲージ増えた」
「それが天空ルートで必要不可欠なAPですね。ほぼ称号スキルの為のものですけど、重力無視を覚えたら試練を調整してみるのもいいかもしれませんね」
【APってなんなん?】
【AIR、風の力とか? よくわかんね】
【空ならSkyでSPじゃね?】
【それだとskillのSPと被るだろ】
【それもそうか】
「では天使様、一緒に赤の禁忌まで同伴お願いしますね」
【えっ天使様連れてくの?】
【NPCって動かせるんか】
「うむ。其方の事だから理由があるのであろう?」
「実はウチの妻が新しい洋服を作ったそうで。そのお披露目で呼んできてほしいと頼まれてまして」
「う、む。新作か?」
【めっちゃ目元揺らいでる】
【新作って聞いてから天使様の瞬き多くない?】
【アキカゼさんの奥様って何者?】
【只者じゃないことは確か】
「ええ、天使様に着て貰えたら彼女も喜びますし、天空人にも一目置かれましょう」
「むむ、そうか。あいわかった。姉上にも報告があった故、ついでに賛同しようぞ」
【ええっ】
【めっちゃ個人的理由で動いたぞ、この人】
【それでいいのかNPC】
【絶対お姉さんへの報告はでっち上げだろ】
【ありえる】
「では彼らにも着いて来てもらうので船の準備をお願いします」
「うむ」
【天使様めっちゃソワソワしてる】
【無表情だけど口元緩んでるの可愛い】
【可愛い】
【可愛い】
【可愛い】
「どう、食事バフ乗ると結構楽でしょ?」
「「「「「…………」」」」」
【マナの木をスキップしながら聞くな】
【コレが無自覚な煽りというやつか】
【スキップVS匍匐前進】
【一人自力で羽ばたいてるだろ、いい加減にしろ!】
【平衡感覚どうなってんだ?】
【パーティー組んだ人かわいそう】
【今日仕事で良かったぜ】
おやおや、さっきまではパーティーメンバーを羨ましがってたのに、この手のひら返しの速さは何事です?
「まぁ、冗談はともかく。輸送あるとないとじゃだいぶ違うでしょ?」
「まぁな。初回は三合目も怪しかったが、これのお陰で余裕を持って三合目も超えられた。そして食事バフでスタミナが減る要素も失せた。あとは煽りがなけりゃもう少し気分良く進めたんだが」
時短君が溜息を吐きながらこちらを見やる。
煽り? なんともけしからんことをする奴もいるもんだ。
私は周囲をきょろきょろ見回して下手人を探した。
【お前だよ!】
【後ろにゃ誰も居ねーよ!】
【居たとしても空飛べるプレイヤーのみ】
【現状アキカゼさんぐらいだろ】
【空飛べるプレイヤーは基本的にここに居ないんだよな】
【どうして?】
【混むって分かってるところ来るか?】
【確かに】
おっと私でしたか、失敬。
この程度でげんなりしてたらスズキさんのテンションについていけないよ?
あの子は普段からジキンさんと探偵さんを振り回してるからね。
「さて、そろそろ地上1000メートル地点だよ。休憩を挟むかい?」
「もう少し行きましょう。少しづつ慣れてきました」
この中ではスタミナの燃費が一番悪いランディス君が声をあげる。
「他のみんなはどうかな?」
「余裕だぜ」
「食事バフが効いてるうちに進んでしまいましょう」
「さんせー!」
「俺もそれでいいぜ」
時短君、ハーノス君、キウイさん、ギン君が順に声を上げた。
「ならば少しお手伝いしてあげよう」
「手伝いだぁ?」
「そう。もし手を滑らせても真下から追い風を打って元の場所に戻してあげるよ」
「それを移動に使うって手は?」
「ズルはダメだよ?」
それをしていいのは一の試練を乗り越えた者だけだ。
なんだったら赤の禁忌でオクト君からスクロールを買う方が早いまである。
【優しいんだか厳しいんだか】
【十分優しいだろ】
【落ちたらLP全損を考えたら優しいよ】
【そっか、落ちると即死なんだっけ】
【地上1000メートルから落下することを想定しないもんな】
【でも輸送使ってる限り重力無視なんだろ?】
【そもそも重力無視が何かさえわかってないんだが】
「重力無視は落下ダメージ無視、風の影響大のパッシヴスキルだね」
【ちょ、ズルじゃん!】
【落ちても死なない件】
【待てよ、距離の関係がある!】
【あ、そうか。距離が離れると落ちるのか】
【上手い話ばっかじゃねーのな】
「ちなみに移送は単体向けだけどスキル複合で二人までなら同時にかけられるよ。こっちは距離が関係なくて、私のスタミナが切れるまで永続的にかかるね」
【輸送もそうだけど移送の重ねがけもヤバいな】
【あれ? もしかして輸送を重ねがけすれば2パーティー行けたんじゃない?】
【天才か!】
【その手があったか!】
「それは無理でしょ。私くらいスタミナ軽減を重ねがけしてても五分で半分になるんだよ? 現実的じゃない」
【輸送だけでもスタミナ消費がアホみたいにかかるのか】
【それは流石にお願いできないな】
【妄想だけで適当言ってすいません】
「良いんだよ。一見してすごそうに聞こえるけど、使い勝手はあまり良くないからね」
そもそもスタミナゲージそのものがないことは明かさないほうがいいかな。
それくらいこのゲームにおけるスタミナの維持は重要だ。
そして頂上まで登り切ると大きな分岐点が見えてくる。
パーティーメンバーは休まずに頂上にたどり着き、いくつかのスキルが変化を遂げ、又は新しい派生先が生まれたことを表情で物語っていた。
「ここが、頂上……本当に雲しかないんですね」
「見晴らしのいい場所だろう?」
「コレがマスターやムッコロさんの見た景色……感動しました!」
「スキルの派生を確認したわ。呼吸系、確かに」
「お、俺も生えたわ」
「残念、俺は生えなかった。けど変化したスキルがいくつかある。コレがスタミナ系ってやつか」
どうやら時短君はスキル派生がなかったらしい。
ただ景色を堪能しているランディス君にキウイさん。
スキルの確認をしたハーノス君にギン君。
それぞれがそれぞれの目的を持って雲の先を見た。
「じゃあ先に青の禁忌に行くよ。着いておいで」
「え、このまま最後まで連れていってくれるんですか?」
ランディス君が雲の足場を前に怖気付く。
「そもそも今回の配信がそういう企画だからね。君たちは運が良い。ぜひ最後まで付き合ってくれ」
「俺はありがたくその話に乗らせてもらうぜ」
「私も先行視察のためにもお供いたします」
「私はムッコロ先輩のお誘いでレムリアに行くつもりでーす」
「僕はどうしようかな、取り敢えず行き先は保留で。あ、でも最後までお付き合いします」
「ま、こんな上手い話断る訳ないよな」
「ギン君は自力で行きなよ。金狼君が拗ねるよ?」
「いいのいいの、兄貴は兄貴で俺は俺。兄貴のやり方だけが正解でもないんだわ。それはそれとしてクランとして偵察はしておきたいんだよ。下の連中が情報仕入れろって煩くてな。そいつらを纏めるのもサブマスの仕事なんだよ。兄貴ほど自由にゃできないのさ」
ギン君は片手をブラブラさせながら話をまとめる。
金狼君が生真面目系なら、彼は不真面目系だね。
長男と次男でこうまで変わるか。
まぁウチの長女と次女も気難しい性格してるからね。
人の家族のことまでは口出しできないか。
「取り敢えず最初はおっかなびっくりするけど大丈夫だから体を乗せてみて」
「うっおぉ……なんか不思議な弾力があるな」
「ですね。歩きづらさはありますが、あとは慣れでしょう」
その場で雲に足を取られる時短君。
ジャンプしつつ、最適な動きを見定めるハーノス君。
プレイヤーが変われば行動も変わって見ていて飽きない。
「わぁ、ふわふわのお布団みたいです」
「わっふー、ポヨンポヨンしておもしろーい!」
ランディス君が膝立ちで弾力を確かめ、キウイさんが体全体でポヨンポヨン跳ねていた。
緩みすぎだね、この子は。
ほんの少しだけスズキさんと似たような波動を感じ取ったよ。
そしてそれを遠目で眺めるギン君にそっと近づく。
「なんだよ?」
「いや、ギン君もあの子達に混ざってきたら?」
「嫌だよ。しかもコレ配信してんだろ? 一応サブマスの面目もあるし」
「……本音は?」
「……娘がアキカゼさんのファンでよ、多分試聴するだろうから格好悪いところは見せられないんだよ」
「今頃学校でしょ?」
「これって後でまとめてアーカイブ化されるだろ?」
「されますね」
「なら尚更バカな真似は出来ねぇよ」
「親バカじゃないですか」
「放っとけ。娘は息子と違って目の中に入れても痛くないくらいに可愛いの!」
「わかります。うちも娘が三人居ますからね」
【これ、なんの話?】
【アキカゼさんとこは三姉妹だと?】
【パープルさんにシェリル、あと誰だ?】
「内緒です。あまり有名どころではないクランですからね。本人も恥ずかしがり屋で意地っ張りなので自分から言い出さないうちは私からは明かしません」
【いやいや、アキカゼさん本人が嫌でも有名人だよ】
【別に特定したからって何するわけでもないけどな】
【そりゃそうか】
【でもパープルさんもシェリルも美形だよな? 嫌でも期待が高まるんだが】
「そういうのは私が居ないところでやりなさい。親からしたらみんな可愛い娘ですよ。シェリルは私に似て気難しい性格になってしまいましたが、それでも親からしてみたら自慢の娘なんです」
【さーせん】
【調子に乗りました】
【でも気になる】
【えっ シェリルがアキカゼさん似?】
【似てる場所ある?】
【ストイックなところは似てるといえば似てるのか?】
「それよりも青の禁忌がやって来たよ。先に進んでしまおうか。ちなみに青の禁忌はマナの大木を自力到達した者の前じゃなきゃ姿を見せないから注意ね」
【なるほど】
【そういう仕掛けか】
【助かる】
青の禁忌が到着し、その背から一人飛び立って私たちの前に着地した。その美しい翼を持つ彼女は天空の巫女様だ。
「また貴方か」
「やぁ、天使さん。今日は新しい人を五人連れて来たよ。空導石はあれから順調かい?」
「うむ。其方の導きに感謝してもし足りぬくらいよ。それで、導きの船は出すか?」
「そうしてもらえると助かるな。生憎とあの時に比べて空に不慣れな人が多くてさ」
「船もなく飛んできたのは後にも先にも其方が最初で最後よ」
【天使様美しす】
【同意】
【同意】
【天使様に会いに行くだけでも青の禁忌に需要あるな】
【誰かマナの大木で定期的に店開いてくんねーかな】
【そのうち誰かがやるだろ】
【アキカゼさん以外でやれるようなクランってある?】
【うーん……】
そんなに悩むことだろうか?
どこかで飛空挺を仕入れればそういうことできそうではあるよね。元手が取れるかどうかは別として。
ウチはもう赤の禁忌に店を構えてるからね。今更マナの大木周辺でやるつもりはないよ。
私以外の五人は船に乗り込み、船は不思議な力で上へ上へと羽ばたいていく。
私はそれに着いて行くように空歩を使って空を蹴り上げた。
【アキカゼさん普通に空を飛んでる件】
【何言ってんだ? さっきから飛んでたろ?】
【地上2000メートル一切木に触れずに飛んでたんだよなぁ】
【普通に空を飛んでるのと近くに木があるのとじゃ視覚差がやばい】
【終始おふざけしてたからすっかり忘れてた】
【よくスタミナ持つよな】
【スキルの半分以上がスタミナ軽減系らしいからな】
【パッシヴ極なればこそできる芸当か】
【ツッコミどころは未だに50切ってるところだけどな】
【そういえばそうだった!】
「さて、コレが空導石です。順番にタッチしていってください」
「お、なんかゲージ増えた」
「それが天空ルートで必要不可欠なAPですね。ほぼ称号スキルの為のものですけど、重力無視を覚えたら試練を調整してみるのもいいかもしれませんね」
【APってなんなん?】
【AIR、風の力とか? よくわかんね】
【空ならSkyでSPじゃね?】
【それだとskillのSPと被るだろ】
【それもそうか】
「では天使様、一緒に赤の禁忌まで同伴お願いしますね」
【えっ天使様連れてくの?】
【NPCって動かせるんか】
「うむ。其方の事だから理由があるのであろう?」
「実はウチの妻が新しい洋服を作ったそうで。そのお披露目で呼んできてほしいと頼まれてまして」
「う、む。新作か?」
【めっちゃ目元揺らいでる】
【新作って聞いてから天使様の瞬き多くない?】
【アキカゼさんの奥様って何者?】
【只者じゃないことは確か】
「ええ、天使様に着て貰えたら彼女も喜びますし、天空人にも一目置かれましょう」
「むむ、そうか。あいわかった。姉上にも報告があった故、ついでに賛同しようぞ」
【ええっ】
【めっちゃ個人的理由で動いたぞ、この人】
【それでいいのかNPC】
【絶対お姉さんへの報告はでっち上げだろ】
【ありえる】
「では彼らにも着いて来てもらうので船の準備をお願いします」
「うむ」
【天使様めっちゃソワソワしてる】
【無表情だけど口元緩んでるの可愛い】
【可愛い】
【可愛い】
【可愛い】
1
あなたにおすすめの小説
もふもふと味わうVRグルメ冒険記 〜遅れて始めたけど、料理だけは最前線でした〜
きっこ
ファンタジー
五感完全再現のフルダイブVRMMO《リアルコード・アース》。
遅れてゲームを始めた童顔ちびっ子キャラの主人公・蓮は、戦うことより“料理”を選んだ。
作るたびに懐いてくるもふもふ、微笑むNPC、ほっこりする食卓――
今日も炊事場でクッキーを焼けば、なぜか神様にまで目をつけられて!?
ただ料理しているだけなのに、気づけば伝説級。
癒しと美味しさが詰まった、もふもふ×グルメなスローゲームライフ、ここに開幕!
異世界ママ、今日も元気に無双中!
チャチャ
ファンタジー
> 地球で5人の子どもを育てていた明るく元気な主婦・春子。
ある日、建設現場の事故で命を落としたと思ったら――なんと剣と魔法の異世界に転生!?
目が覚めたら村の片隅、魔法も戦闘知識もゼロ……でも家事スキルは超一流!
「洗濯魔法? お掃除召喚? いえいえ、ただの生活の知恵です!」
おせっかい上等! お節介で世界を変える異世界ママ、今日も笑顔で大奮闘!
魔法も剣もぶっ飛ばせ♪ ほんわかテンポの“無双系ほんわかファンタジー”開幕!
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
公爵家の末っ子娘は嘲笑う
たくみ
ファンタジー
圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。
アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。
ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?
それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。
自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。
このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。
それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。
※小説家になろうさんで投稿始めました
俺得リターン!異世界から地球に戻っても魔法使えるし?アイテムボックスあるし?地球が大変な事になっても俺得なんですが!
くまの香
ファンタジー
鹿野香(かのかおる)男49歳未婚の派遣が、ある日突然仕事中に異世界へ飛ばされた。(←前作)
異世界でようやく平和な日常を掴んだが、今度は地球へ戻る事に。隕石落下で大混乱中の地球でも相変わらず呑気に頑張るおじさんの日常。「大丈夫、俺、ラッキーだから」
一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました
しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、
「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。
――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。
試験会場を間違え、隣の建物で行われていた
特級厨師試験に合格してしまったのだ。
気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの
“超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。
一方、学院首席で一級魔法使いとなった
ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに――
「なんで料理で一番になってるのよ!?
あの女、魔法より料理の方が強くない!?」
すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、
天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。
そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、
少しずつ距離を縮めていく。
魔法で国を守る最強魔術師。
料理で国を救う特級厨師。
――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、
ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。
すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚!
笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。
人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―
ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」
前世、15歳で人生を終えたぼく。
目が覚めたら異世界の、5歳の王子様!
けど、人質として大国に送られた危ない身分。
そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。
「ぼく、このお話知ってる!!」
生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!?
このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!!
「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」
生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。
とにかく周りに気を使いまくって!
王子様たちは全力尊重!
侍女さんたちには迷惑かけない!
ひたすら頑張れ、ぼく!
――猶予は後10年。
原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない!
お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。
それでも、ぼくは諦めない。
だって、絶対の絶対に死にたくないからっ!
原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。
健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。
どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。
(全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる