鳥籠の中で僕たちは舞う

箕田 悠

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第四章

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――ただの先輩後輩。

 脩を庇って言った事なのか、それとも秋良は本当にそう思っていたのか。本人に会えない今、真相がわからない。そのことを含めて、本人の口からいろいろと聞きたかった。
 なぜ、恐れていた姉にまで歯向かってまで、脩を助けたのか。
 あんなに怯えていたのに、脩が殺されかけると秋良は身を挺してまで助けてくれた。思い出す度に、脩の胸に熱いものが込み上げてくる。
 このまま永遠に会えないなんて耐えられない。今生で出会えたうえ、命からがら二人はあの場所から逃げ出せたのだ。前世とは違う。前に進めているのだから。

「兄さん……ごめん。やっぱり僕、秋良を追う」

 力強く、清治を見つめる。世良家が決めたことを反故してでも、秋良に会いたい。
 秋良が田端を裏切ったように、自分も秋良の為に世良家を裏切る覚悟だった。

「うん。脩ならそう言うと思ってたよ」

 清治が優しく脩の背に手をあてた。
 脩は驚いて顔をあげると、穴が空くほど清治の顔を見つめる。

「車を回させるから、門の前で待てて」

 清治は優しい表情で告げると、腰をあげた。

「そのまま都内まで送らせるから。その時に、いろいろと昨日の事を聞くといい」

 そう言い残すと、清治が背を向けた。

「兄さん……ありがとう」

 脩は胸を詰まらせ、清治の背を見上げた。思わず涙が溢れ出しそうになってしまう。
 清治は自分の為にいろいろ尽力してくれている。それなのに、自分は何一つ返すことが出来ていない。それが心苦しい。

「いいんだ。僕の大切な弟の為だからね」

 清治が顔だけ後ろに向けると優しく微笑み、再び歩みを進め廊下の角を曲がっていく。
 脩は耐えきれなくなり、涙が止めどなく溢れ出していく。
 清治は養子に貰われていても、ちゃんと家族として思い続けていてくれたのだ。
 それなのに自分は憐れんで同情してそのくせ、手を差し伸べようともしてこなかった。それに加え、恵美子を言い訳に清治を避けていたのだ。
 どんなに残酷な事をしてきたのか、今更ながら気付かされた。
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