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しおりを挟むふと、自慰をしないとやる気が出ない依存症があると、目にしたことを思い出す。
かつて学生時代に、鬱屈とした気持ちを晴らす為に自慰することに夢中なっていた睦紀は、さすがにおかしいとネットで調べたことがあった。
そこで確か、そういう依存症があると目にしたのだ。恐怖を覚えて控えなきゃと思っても、一度ついた癖はなかなか治らない。
そのせいか、女性との行為が上手くいかないことが増えてしまっていた。
実際のところ、涼華とも数回しか寝ていない。それを考えると、涼華との夫婦生活はいずれは破綻していたように思えてしまう。
それに二人に抱かれて覚えた快楽は、きっと涼華では満足することができないはずだ。
一人になった途端、どれだけ二人の存在が大きかったか実感させられた。
衣食住や職業だけにとどまらず、性欲まで二人に甘えてしまっているように思える。
やや昂っていた熱が冷めたことで、睦紀は諦めてベッドに横たわる。
荷物はいつ取りに行こうかと考え、クローゼットの奥に眠るパンドラの箱をどう処理しようかと思い悩む。
土日は二人がいる可能性が高いから、平日に処分した方が良いはずだ。その時にでも必要最低限の荷物をまとめておけば、すぐにでも家を出れそうだった。
ただ、何一つとして、篠山家に恩を返せなかったのが申し訳ないとも思う。
せめて謝罪の置き手紙は残そうと決めて、ベッドに備え付けられている時計を見る。とっくに夜の十時を過ぎていて、さすがに俊政達も帰って来ているはずだった。
スマホをジャケットに入れっぱなしだったことを思い出し、睦紀は身体を起こす。ポケットからスマホを取り出すし、画面を見るなり呆気に取られる。
画面には何十件にも及ぶ着信履歴。嫌な予感に恐る恐る表示を開くと、俊政と春馬の名前がずらりと並んでいた。
折り返すべきか否か。血の気の引く思いで画面を凝視していると、ドアをノックする音がした。
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