淫愛家族

箕田 悠

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「睦紀、一緒に寝るかい?」
「えっ?」

 驚く睦紀に、俊政が苦笑する。

「寂しそうな顔をしているからね。もちろん何もしないから、私の部屋においで」
「いや……でも……」
「私も不安なんだよ。睦紀がまた突然いなくなろうとしないか、心配なんだ。睦紀に嫌われたくないから、本当に何もしない。ダメかな?」

 ダメ押しされてしまうと、簡単には首を横には振れなくなってしまう。

「……分かりました」

 睦紀は渋々ながら頷く。俊政が約束を破ったことは一度もない。それに嫌われたくないと言っているぐらいなのだから、嫌がるようなことはしてこないように思える。

「ありがとう。寝る準備が出来たら、先に部屋に行っててくれ。少しやり残したことがあるから、片付けたらすぐに行く」
「はい。分かりました」

 俊政が部屋から出て行くと、睦紀はため息を吐き出す。
 昨日話し合ったばかりなのに、春馬がこの事を知ったらどう思うだろうかと考えてしまう。
 やましい事をするわけでなくとも、自分を好きだと言った春馬に申し訳ない気すらした。

「睦紀、ここにいたのか」

 背後から声をかけられ、睦紀は驚いて振り返る。春馬がドアの前に立っていた。

「僕を探していたんですか?」

 睦紀が疑問を顔に出すと、春馬が決まり悪げな顔をした。

「姿が見えなったから、また居なくなったんじゃないかと思ったんだ」

 不安を滲ませた表情に、睦紀もまた居た堪れなくなってしまう。

「すみません……ご心配をおかけしてしまって」
「別に良いんだ。こっちに原因があるんだから、突発的な家出もしたくなるだろ」
「でも心配をかけてしまった事に、変わりはありませんので。それにちゃんと話し合えばこうして、解決もできたのに……軽率でした」

 睦紀が項垂れると、春馬が「睦紀が謝ることはない」と言って目の前に立つ。
 手を伸ばそうとした影が落ち、睦紀は視線をあげる。途端に春馬の手が睦紀に触れることはなく、おろされてしまう。

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