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 そして、暫くしても帰って来ない夫を探しに中庭を歩いていると、声が聞こえてきた。

 そこには、夫と姉が密会していた。

 「アル、エミリーと別れて私と結婚して」

 「何を言っているんだ。もうエミリーとは、結婚している。だいたい君との事は終わった事だ」

 「私達は、愛しあっていたじゃない。あの頃に戻りましょうよ」

 「無理だ。あの頃には戻れない」

 突き放そうとしたアルフレッドの手が躊躇っていた。エリザベスは見逃さなかった。すかさず彼の唇に強引にキスをした。アルフレッドは直ぐ様引き離した。

 だが、アルフレッドは知らなかった。この光景をエミリーが見ていたことを…

 エリザベスは、わざとエミリーに見せつけるように仕向けたのだ。

 (ああ、私はやっぱり邪魔者なんだわ)

 エミリーは、一人で広間に戻った。

 それを見ていたのはエミリーだけではなかった。

 「ねえ、大丈夫かい。顔色が悪いけど」

 声をかけて来たのは、第二王子オーガスト殿下だった。

 「大丈夫です。ご心配には及びませ…」

 次の瞬間、エミリーの体がふらついた。

 オーガストは直ぐに侍女や侍従らを呼び、控え室で休ませるよう指示を出した。

 付き添われて部屋に連れて行かれるエミリーを見ながら、

 「全く、あの馬鹿は…」

 呆れながら問題のアルフレッドに忠告した。

 「アルフレッド、誰を探しているの?」

 「えっ」

 「もう一度聞くが、誰を探しているんだ」

 二度目は、強い口調で聞いた。

 「つ、妻のエミリーを探しているのですが?それが何か?」

 訳がわからないと云う顔をオーガストに向けている。

 「この際だから忠告しておく。お前の妻は誰なんだ!言っておくが二度目はない。これが最後の忠告だ。それと彼女は控え室で休んでいる」

 「何処か具合が悪いのですか?」

 「顔色が悪かった。中庭から帰って来てからな」

 その言葉にはっとなったアルフレッドは、急いで控え室に向かった。

 その後ろ姿を見送りながらオーガストは

 (これが最後の忠告だ。もし、違える事があれば、お前を切り捨てる)

 そう心の中で呟きながら、会場の輪の中に入って行った。

 
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