【完結】姉の婚約者を奪った私は悪女と呼ばれています

春野オカリナ

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 アルフレッドが控え室に入ると、顔を青くしたエミリーの姿があった。

 「エミリー済まない。君を一人にしてしまった」

 「私は大丈夫ですから、どうぞ会場にお戻り下さい」

 「だが、そんな訳には…」

 「ですから、もう良いのです。これ以上、私を惨めな気持ちにさせないで下さい。私はもう姉の代わりにはなれません。姉とやり直してください。私は伯爵家に帰りたいのです」

 「な、何を言っているんだ。エミリー、エリザベスとは何でもない」

 「そうでしょうか。中庭で密会なさっていたではありませんか」

 中庭でエリザベスといる所をエミリーに見られた事を知ったアルフレッドは何度も誤解だと説明したが、エミリーには届かなかった。

 それは、今までエミリーを知らず知らずに蔑ろにしていた報いだった。

 アルフレッドは自分でも気付かない程、エミリーを深く傷付けていたことを初めて理解した。

 自分の中途半端な態度がエリザベスを増長させ、エミリーを傷付けたのだと、そして第二王子オーガストからの忠告は、この事だったのだ。

 泣きながらエミリーは、意識を失った。

 アルフレッドは医師を呼び、エミリーの容態を尋ねた。

 医師から告げられた言葉に

 「これで、エミリーとの関係も修復できる」

 そう考え、侍女達にエミリーを任せ、護衛に誰も入れないよう指示した。

 アルフレッドは、会場に戻りながらオーガスト殿下にどう報告すべきか考えながら部屋を後にした。

 会場に戻るとオーガストから

 「どうやら、気持ちが固まった様だな」

 「はい、ご迷惑をおかけいたしましたが、もう大丈夫です」

 「そうか、なら安心だ」

 アルフレッドは第二王子オーガストがどれ程優秀な王子なのか改めて実感した。

 もし国が不安定な頃ならこの王子が国王の座につけば良いが、今は平和で国内も安定しているからわざと臣下に下り、兄王子の補佐として、未来の宰相として、公爵家の婿になるのだ。

 アルフレッドは

 「この方には敵わない。きっと一生操り人形にされるかも知れないが、いつかは自分で隣を歩いて見せる」

 と意気込んでいた。

 二人は会場のある場所に向かった。
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