【完結】純白のウェディングドレスは二度赤く染まる

春野オカリナ

文字の大きさ
3 / 13

取材

しおりを挟む
 貴族専用の重罪犯を収容しているテセス塔の面会室に、ある記者が来ていた。

 彼の目的は、イエニー・フラウのインタビューをするためだ。

 実は、イエニー自身から出版社に向けて手紙が送られてきていた。

 ──真実を話すので、それを書き留めて欲しい

 そういう内容だった。

 そこで出版社は、従業員のこの男を牢獄に派遣することにした。

 男の名は、クリント・モーガン。

 中肉中背の剥げた頭の冴えない男なのだが、文章を書かせれば出版社の中でもピカイチであることは間違いなかった。

 クリントが面会室に入ってから半時ほど経った頃にイエニーは現れた。

 先週、裁判に出廷していた時と同じワンピース姿だった。

 まだ30半ばのはずなのに、何処か幼さを残した顔立ちは、美しいと言うより愛らしいと言った方が似合っている。

 こんなか弱そうな女性が本当に由緒ある侯爵家を破滅に追い込むことが出来るのだろうか?

 クリントは疑問に思っていた。

 感情が表に表れていたのかもしれない。

 「私に質問がおありなのでしょう?なんなりと聞いてくださって結構です。正直にお話しますので」

 そう言って話すイエニーは驚くほど冷静で、清々しい表情を見せていた。

 まるで、全ての憎しみも恨みも何もかもが洗い流されたような表情を浮かべていたのだ。
 
 「では、貴女の話したい事を私に話してもらえますか?」

 「ええ、全てお話ししましょう。最初にお話しします事は真実だという事です。私は二度同じ人生を体験しているのです。気が狂ったと思われるかもしれませんが、私にとっては事実なのです」

 「同じ人生を二度生きている…ですか?そんな話は聞いたことがありません」

 「そうでしょうね。私も最初は信じられませんでした。ですが一度目の人生で体験したことはあまりにも生々しくて、実際に起きたこととしか言いようがありませんでした」

 「夢…ではないのですか?」

 「夢だったら良かったのですが、そうではなったのです」

 イエニーが突拍子の無いことを言い出したので、クリントは困惑した。

 だが、クリントは裁判では語られなかった、彼女の物語を聞く権利を貰えた以上、例え狂っている女の言葉でも聞くより仕方が無かったのだ。

 恵まれた貴族の令嬢でありながら、嫁いだ相手が悪かった為に起きた不幸な事件。彼女が言うように神の慈悲によって二度も同じ辛い人生を送っていたのなら、救済は一体どこにあったのだろう。それともこの復讐こそが救済だったのだろうか。

 クリントは、静かに彼女の話に耳を傾け、時には相槌を打ち、疑問をぶつけた。その全てに彼女は答えてくれたのだ。

 2時間にも及ぶ彼女の一生はとても一言では言い表せなかった。偶然と必然が入り混じった中で起きるべきして起きた事件。

 そうとしか思えなかったのである。

 牢獄から帰ったクリントは何かに取りつかれたように、彼女が語った話を文章に書き記した。

 そして、合間に証人に立った人たちにも確認したのだ。

 まず、生家の使用人、結婚の時の司祭、医師や嫁ぎ先の使用人、彼女の友人、学校の教員等その全ての証人の言質を取ることにした。

 そして、分かった事は、やはりイエニーの話は真実だったのだ。 
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

元婚約者様へ――あなたは泣き叫んでいるようですが、私はとても幸せです。

有賀冬馬
恋愛
侯爵令嬢の私は、婚約者である騎士アラン様との結婚を夢見ていた。 けれど彼は、「平凡な令嬢は団長の妻にふさわしくない」と、私を捨ててより高位の令嬢を選ぶ。 ​絶望に暮れた私が、旅の道中で出会ったのは、国中から恐れられる魔導王様だった。 「君は決して平凡なんかじゃない」 誰も知らない優しい笑顔で、私を大切に扱ってくれる彼。やがて私たちは夫婦になり、数年後。 ​政争で窮地に陥ったアラン様が、助けを求めて城にやってくる。 玉座の横で微笑む私を見て愕然とする彼に、魔導王様は冷たく一言。 「我が妃を泣かせた罪、覚悟はあるな」 ――ああ、アラン様。あなたに捨てられたおかげで、私はこんなに幸せになりました。心から、どうぞお幸せに。

ねえ、テレジア。君も愛人を囲って構わない。

夏目
恋愛
愛している王子が愛人を連れてきた。私も愛人をつくっていいと言われた。私は、あなたが好きなのに。 (小説家になろう様にも投稿しています)

この結婚には、意味がある?

みこと。
恋愛
公爵家に降嫁した王女アリアは、初夜に夫から「オープンマリッジ」を提案される。 婚姻関係を維持しながら、他の異性との遊戯を認めろ、という要求を、アリアはどう解釈するのか? 王宮で冷遇されていた王女アリアの、密かな目的とは。 この結婚は、アリアにとってどんな意味がある? ※他のサイトにも掲載しています。 ※他タイトル『沈黙の聖女は、ある日すべてを暴露する』も収録。←まったく別のお話です

「美しい女性(ヒト)、貴女は一体、誰なのですか?」・・・って、オメエの嫁だよ

猫枕
恋愛
家の事情で12才でウェスペル家に嫁いだイリス。 当時20才だった旦那ラドヤードは子供のイリスをまったく相手にせず、田舎の領地に閉じ込めてしまった。 それから4年、イリスの実家ルーチェンス家はウェスペル家への借金を返済し、負い目のなくなったイリスは婚姻の無効を訴える準備を着々と整えていた。 そんなある日、領地に視察にやってきた形だけの夫ラドヤードとばったり出くわしてしまう。 美しく成長した妻を目にしたラドヤードは一目でイリスに恋をする。 「美しいひとよ、貴女は一体誰なのですか?」 『・・・・オメエの嫁だよ』 執着されたらかなわんと、逃げるイリスの運命は?

【完結済み】婚約破棄したのはあなたでしょう

水垣するめ
恋愛
公爵令嬢のマリア・クレイヤは第一王子のマティス・ジェレミーと婚約していた。 しかしある日マティスは「真実の愛に目覚めた」と一方的にマリアとの婚約を破棄した。 マティスの新しい婚約者は庶民の娘のアンリエットだった。 マティスは最初こそ上機嫌だったが、段々とアンリエットは顔こそ良いが、頭は悪くなんの取り柄もないことに気づいていく。 そしてアンリエットに辟易したマティスはマリアとの婚約を結び直そうとする。 しかしマリアは第二王子のロマン・ジェレミーと新しく婚約を結び直していた。 怒り狂ったマティスはマリアに罵詈雑言を投げかける。 そんなマティスに怒ったロマンは国王からの書状を叩きつける。 そこに書かれていた内容にマティスは顔を青ざめさせ……

政略結婚のルールくらい守って下さい

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。

〖完結〗愛しているから、あなたを愛していないフリをします。

藍川みいな
恋愛
ずっと大好きだった幼なじみの侯爵令息、ウォルシュ様。そんなウォルシュ様から、結婚をして欲しいと言われました。 但し、条件付きで。 「子を産めれば誰でもよかったのだが、やっぱり俺の事を分かってくれている君に頼みたい。愛のない結婚をしてくれ。」 彼は、私の気持ちを知りません。もしも、私が彼を愛している事を知られてしまったら捨てられてしまう。 だから、私は全力であなたを愛していないフリをします。 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 全7話で完結になります。

(完)貴女は私の全てを奪う妹のふりをする他人ですよね?

青空一夏
恋愛
公爵令嬢の私は婚約者の王太子殿下と優しい家族に、気の合う親友に囲まれ充実した生活を送っていた。それは完璧なバランスがとれた幸せな世界。 けれど、それは一人の女のせいで歪んだ世界になっていくのだった。なぜ私がこんな思いをしなければならないの? 中世ヨーロッパ風異世界。魔道具使用により現代文明のような便利さが普通仕様になっている異世界です。

処理中です...