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取材
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貴族専用の重罪犯を収容しているテセス塔の面会室に、ある記者が来ていた。
彼の目的は、イエニー・フラウのインタビューをするためだ。
実は、イエニー自身から出版社に向けて手紙が送られてきていた。
──真実を話すので、それを書き留めて欲しい
そういう内容だった。
そこで出版社は、従業員のこの男を牢獄に派遣することにした。
男の名は、クリント・モーガン。
中肉中背の剥げた頭の冴えない男なのだが、文章を書かせれば出版社の中でもピカイチであることは間違いなかった。
クリントが面会室に入ってから半時ほど経った頃にイエニーは現れた。
先週、裁判に出廷していた時と同じワンピース姿だった。
まだ30半ばのはずなのに、何処か幼さを残した顔立ちは、美しいと言うより愛らしいと言った方が似合っている。
こんなか弱そうな女性が本当に由緒ある侯爵家を破滅に追い込むことが出来るのだろうか?
クリントは疑問に思っていた。
感情が表に表れていたのかもしれない。
「私に質問がおありなのでしょう?なんなりと聞いてくださって結構です。正直にお話しますので」
そう言って話すイエニーは驚くほど冷静で、清々しい表情を見せていた。
まるで、全ての憎しみも恨みも何もかもが洗い流されたような表情を浮かべていたのだ。
「では、貴女の話したい事を私に話してもらえますか?」
「ええ、全てお話ししましょう。最初にお話しします事は真実だという事です。私は二度同じ人生を体験しているのです。気が狂ったと思われるかもしれませんが、私にとっては事実なのです」
「同じ人生を二度生きている…ですか?そんな話は聞いたことがありません」
「そうでしょうね。私も最初は信じられませんでした。ですが一度目の人生で体験したことはあまりにも生々しくて、実際に起きたこととしか言いようがありませんでした」
「夢…ではないのですか?」
「夢だったら良かったのですが、そうではなったのです」
イエニーが突拍子の無いことを言い出したので、クリントは困惑した。
だが、クリントは裁判では語られなかった、彼女の物語を聞く権利を貰えた以上、例え狂っている女の言葉でも聞くより仕方が無かったのだ。
恵まれた貴族の令嬢でありながら、嫁いだ相手が悪かった為に起きた不幸な事件。彼女が言うように神の慈悲によって二度も同じ辛い人生を送っていたのなら、救済は一体どこにあったのだろう。それともこの復讐こそが救済だったのだろうか。
クリントは、静かに彼女の話に耳を傾け、時には相槌を打ち、疑問をぶつけた。その全てに彼女は答えてくれたのだ。
2時間にも及ぶ彼女の一生はとても一言では言い表せなかった。偶然と必然が入り混じった中で起きるべきして起きた事件。
そうとしか思えなかったのである。
牢獄から帰ったクリントは何かに取りつかれたように、彼女が語った話を文章に書き記した。
そして、合間に証人に立った人たちにも確認したのだ。
まず、生家の使用人、結婚の時の司祭、医師や嫁ぎ先の使用人、彼女の友人、学校の教員等その全ての証人の言質を取ることにした。
そして、分かった事は、やはりイエニーの話は真実だったのだ。
彼の目的は、イエニー・フラウのインタビューをするためだ。
実は、イエニー自身から出版社に向けて手紙が送られてきていた。
──真実を話すので、それを書き留めて欲しい
そういう内容だった。
そこで出版社は、従業員のこの男を牢獄に派遣することにした。
男の名は、クリント・モーガン。
中肉中背の剥げた頭の冴えない男なのだが、文章を書かせれば出版社の中でもピカイチであることは間違いなかった。
クリントが面会室に入ってから半時ほど経った頃にイエニーは現れた。
先週、裁判に出廷していた時と同じワンピース姿だった。
まだ30半ばのはずなのに、何処か幼さを残した顔立ちは、美しいと言うより愛らしいと言った方が似合っている。
こんなか弱そうな女性が本当に由緒ある侯爵家を破滅に追い込むことが出来るのだろうか?
クリントは疑問に思っていた。
感情が表に表れていたのかもしれない。
「私に質問がおありなのでしょう?なんなりと聞いてくださって結構です。正直にお話しますので」
そう言って話すイエニーは驚くほど冷静で、清々しい表情を見せていた。
まるで、全ての憎しみも恨みも何もかもが洗い流されたような表情を浮かべていたのだ。
「では、貴女の話したい事を私に話してもらえますか?」
「ええ、全てお話ししましょう。最初にお話しします事は真実だという事です。私は二度同じ人生を体験しているのです。気が狂ったと思われるかもしれませんが、私にとっては事実なのです」
「同じ人生を二度生きている…ですか?そんな話は聞いたことがありません」
「そうでしょうね。私も最初は信じられませんでした。ですが一度目の人生で体験したことはあまりにも生々しくて、実際に起きたこととしか言いようがありませんでした」
「夢…ではないのですか?」
「夢だったら良かったのですが、そうではなったのです」
イエニーが突拍子の無いことを言い出したので、クリントは困惑した。
だが、クリントは裁判では語られなかった、彼女の物語を聞く権利を貰えた以上、例え狂っている女の言葉でも聞くより仕方が無かったのだ。
恵まれた貴族の令嬢でありながら、嫁いだ相手が悪かった為に起きた不幸な事件。彼女が言うように神の慈悲によって二度も同じ辛い人生を送っていたのなら、救済は一体どこにあったのだろう。それともこの復讐こそが救済だったのだろうか。
クリントは、静かに彼女の話に耳を傾け、時には相槌を打ち、疑問をぶつけた。その全てに彼女は答えてくれたのだ。
2時間にも及ぶ彼女の一生はとても一言では言い表せなかった。偶然と必然が入り混じった中で起きるべきして起きた事件。
そうとしか思えなかったのである。
牢獄から帰ったクリントは何かに取りつかれたように、彼女が語った話を文章に書き記した。
そして、合間に証人に立った人たちにも確認したのだ。
まず、生家の使用人、結婚の時の司祭、医師や嫁ぎ先の使用人、彼女の友人、学校の教員等その全ての証人の言質を取ることにした。
そして、分かった事は、やはりイエニーの話は真実だったのだ。
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