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長期休暇の前日
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ダンスパーティーの翌日は休日だ。
今までなら屋敷で寛いでいた。
だが、アディーナは図書館に行くことにした。
休日明けには講義の変更届を出さなくてはいけない。早めに試験に備えて勉強しようと考えていたからだ。
侯爵領は海辺にあり、小さな大小の島が多くある場所。問題なのは、漁業は盛んでも農業が著しくない事だ。
作付け面積が足りない。だから、小麦は他所から購入している。そのことを考えても地質学を学ぶことは意味があると考えていた。
それにこの国との関係をいつの時代の当主も頭を悩ませてきたことでもある。
力関係も以前は国の方が強かったが、今は侯爵家の方が強くなりつつある。でも独立するには今一つ決定打となるものが欲しい。
領の財政は豊富な鉱物資源に頼っているが、何時かは掘り尽くされて採掘できなくなるだろう。
それが何時かは分からないが、代々の侯爵は次の為の用意を怠ってはいけないというのが家訓となっている。
だから、アディーナもその家訓に習っている。
絶え間ないその努力が何時の日か領民の為になる。そう信じているからだ。
アディーナは、今までの占星術の講義の復習とこれから提出しないといけないレポートの内容を調べる為に専門の書棚に向かった。
アディーナは書棚から目当ての本を持ってきて、部屋の隅の机に向かって本を広げて、読み漁っていた。
どのくらい経ったのか分からないくらい時間が立っていて。
図書館の中も初めに来た時よりも利用者が増えている。
丁度、昼時の教会の鐘が鳴り出して、多くの利用者は隣接してあるカフェへと足を運んでいた。
ここは飲食喫煙禁止となっている。
昼食の用意をしていなかったアディーナは、悩んだ末に一旦、図書館を出て、近くの飲食店で食事を摂ることにした。
前に従兄弟が図書館の近くの大衆食堂が美味しいと言っていたことを思い出した。
その場所は、図書館から50メートルほどの目と鼻の先の様な場所なのだが、少し大通りからは外れている。
アディーナは侍女と護衛騎士に行先を告げると真っ直ぐにその道へ向かおうとした。
だが、途中で迷子の平民の子供に出会い声を掛けると、
「あなたのお母さんはどこ?」
「グスッ…わからない…グスン」
グスグスと泣きながら事情を話す小さな少年は、繋いでいた母親の手を振り払って、気になった露店の方へ走ってしまいそのまま、うろうろとしている内に、何処に来たのか分からなくなったようだった。
子供の涙を拭おうとハンカチを取り出して、
「一緒に探してあげるわ」
「うん」
そう言って子供の手を引いて歩き出す。
すると、後ろから知った声が聞こえてきた。
「何をしているの?」
急に声を掛けられ驚いたアディ―ナは慌てて後ろを振り向いた。バランスを崩してふらついたところを支えてくれたのはジルベスターだった。
──どうしてここに…?
不審そうな表情を浮かべていたのかもしれない。ジルベスターは慌てて、
「図書館へ行こうとしたら君を見かけたから声を掛けただけだよ。後を付けていた訳ではないよ。驚かせてわるかったよ。悪気はなかったんだ」
「ごめんなさい。急に声を掛けられたから…慌ててしまって、でもありがとう。おかげで転ばずにすんだわ」
「うん、でも昼時で人が多いね。これじゃあ、中々探すのは難しそうだ」
「そうね」
「いい方法がある」
そう言ってジルベスターは、子供を肩車すると、
「大声でお母さんを呼んでごらん。ここなら見えるし、声も聞こえるかもしれない」
「うん、わかった」
そう言って子供は声を張り上げて、母親を呼んだ。
少し遠くの方から手を振って、子供の名前を呼ぶ声が聞こえてきた。護衛騎士がその人物を連れてきて、身元を確認した。間違いなく子供母親の様だった。
ジルベスターの肩から子供を降ろすと、こちらも見ることなく母親の方に掛けていく。母親も無事に戻った子供を抱きしめて何度も何度もお礼を言って、元来た道を帰って行った。
「どこに行こうとしていたんだ」
「近くの大衆食堂に行こうかと…」
「確かにあそこは美味しんだけど…貴族の令嬢が入る場所ではないよ。俺がとっておきの所へ案内してやるよ」
「いいの」
「だって俺たちは交際相手だろう。一緒に歩いていたって誰も不思議に思わないさ」
「そうね。それじゃあお願いしてみようかな」
アディーナは、ジルベスターの提案を受け入れた。
二人は、逆方向に向かって歩き出した。その場所は図書館の裏手のいり込んだ場所にあった。
店も普通の民家のようで、とても飲食店の様な雰囲気はない。
──本当にここ飲食店なのかしら?
不思議そうに外観を見ているアディーナを面白そうにジルベスターが声を掛ける。
「外は普通の民家でも中に入れば分かるよ」
騙されたと思ってアディーナは中に入ってみることにした。
今までなら屋敷で寛いでいた。
だが、アディーナは図書館に行くことにした。
休日明けには講義の変更届を出さなくてはいけない。早めに試験に備えて勉強しようと考えていたからだ。
侯爵領は海辺にあり、小さな大小の島が多くある場所。問題なのは、漁業は盛んでも農業が著しくない事だ。
作付け面積が足りない。だから、小麦は他所から購入している。そのことを考えても地質学を学ぶことは意味があると考えていた。
それにこの国との関係をいつの時代の当主も頭を悩ませてきたことでもある。
力関係も以前は国の方が強かったが、今は侯爵家の方が強くなりつつある。でも独立するには今一つ決定打となるものが欲しい。
領の財政は豊富な鉱物資源に頼っているが、何時かは掘り尽くされて採掘できなくなるだろう。
それが何時かは分からないが、代々の侯爵は次の為の用意を怠ってはいけないというのが家訓となっている。
だから、アディーナもその家訓に習っている。
絶え間ないその努力が何時の日か領民の為になる。そう信じているからだ。
アディーナは、今までの占星術の講義の復習とこれから提出しないといけないレポートの内容を調べる為に専門の書棚に向かった。
アディーナは書棚から目当ての本を持ってきて、部屋の隅の机に向かって本を広げて、読み漁っていた。
どのくらい経ったのか分からないくらい時間が立っていて。
図書館の中も初めに来た時よりも利用者が増えている。
丁度、昼時の教会の鐘が鳴り出して、多くの利用者は隣接してあるカフェへと足を運んでいた。
ここは飲食喫煙禁止となっている。
昼食の用意をしていなかったアディーナは、悩んだ末に一旦、図書館を出て、近くの飲食店で食事を摂ることにした。
前に従兄弟が図書館の近くの大衆食堂が美味しいと言っていたことを思い出した。
その場所は、図書館から50メートルほどの目と鼻の先の様な場所なのだが、少し大通りからは外れている。
アディーナは侍女と護衛騎士に行先を告げると真っ直ぐにその道へ向かおうとした。
だが、途中で迷子の平民の子供に出会い声を掛けると、
「あなたのお母さんはどこ?」
「グスッ…わからない…グスン」
グスグスと泣きながら事情を話す小さな少年は、繋いでいた母親の手を振り払って、気になった露店の方へ走ってしまいそのまま、うろうろとしている内に、何処に来たのか分からなくなったようだった。
子供の涙を拭おうとハンカチを取り出して、
「一緒に探してあげるわ」
「うん」
そう言って子供の手を引いて歩き出す。
すると、後ろから知った声が聞こえてきた。
「何をしているの?」
急に声を掛けられ驚いたアディ―ナは慌てて後ろを振り向いた。バランスを崩してふらついたところを支えてくれたのはジルベスターだった。
──どうしてここに…?
不審そうな表情を浮かべていたのかもしれない。ジルベスターは慌てて、
「図書館へ行こうとしたら君を見かけたから声を掛けただけだよ。後を付けていた訳ではないよ。驚かせてわるかったよ。悪気はなかったんだ」
「ごめんなさい。急に声を掛けられたから…慌ててしまって、でもありがとう。おかげで転ばずにすんだわ」
「うん、でも昼時で人が多いね。これじゃあ、中々探すのは難しそうだ」
「そうね」
「いい方法がある」
そう言ってジルベスターは、子供を肩車すると、
「大声でお母さんを呼んでごらん。ここなら見えるし、声も聞こえるかもしれない」
「うん、わかった」
そう言って子供は声を張り上げて、母親を呼んだ。
少し遠くの方から手を振って、子供の名前を呼ぶ声が聞こえてきた。護衛騎士がその人物を連れてきて、身元を確認した。間違いなく子供母親の様だった。
ジルベスターの肩から子供を降ろすと、こちらも見ることなく母親の方に掛けていく。母親も無事に戻った子供を抱きしめて何度も何度もお礼を言って、元来た道を帰って行った。
「どこに行こうとしていたんだ」
「近くの大衆食堂に行こうかと…」
「確かにあそこは美味しんだけど…貴族の令嬢が入る場所ではないよ。俺がとっておきの所へ案内してやるよ」
「いいの」
「だって俺たちは交際相手だろう。一緒に歩いていたって誰も不思議に思わないさ」
「そうね。それじゃあお願いしてみようかな」
アディーナは、ジルベスターの提案を受け入れた。
二人は、逆方向に向かって歩き出した。その場所は図書館の裏手のいり込んだ場所にあった。
店も普通の民家のようで、とても飲食店の様な雰囲気はない。
──本当にここ飲食店なのかしら?
不思議そうに外観を見ているアディーナを面白そうにジルベスターが声を掛ける。
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騙されたと思ってアディーナは中に入ってみることにした。
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