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変わりたい
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昔から両親は私に甘かった。
特に父は一人娘だった事も関係しているのだろう。盲目的に甘やかしてくれた。
でもそれは本当の意味でのアディーナの成長を妨げている事に気付いていなかった。
デビュタントで、アディーナ自身が王都に住む令嬢達からの洗礼を受けて初めて気付けたのだ。あのまま大人になってもアディーナは、今の様に領地や自分の未来を見出せていたかどうかは分からない。いや、きっと今のままの自分に満足して父や祖父の様に王命による婚姻を受け入れ、国に搾取されるだけの立場に甘んじていただろう。
前向きに未来を見据えれるきっかけをくれたのは彼女だ。
アディーナは、マリアの席に歩いていった。
「ごきげんよう。クラレンス子爵令嬢。学園で顔を会すことが殆ど無いのに、私のことをよくご存じの様ね」
アディーナの声に振り返ったマリアの顔は青くなった。マリアは、アディーナが反撃などしない大人しい令嬢だと思い込んでいた。
この数年、父や近習の者達から剣術だけでなく、船の操舵や海戦術まで叩き込まれ、次期当主として鍛え上げられたアディーナを甘く見ていた。
マリアからすればアディーナはデビュタントで醜態を曝した『ピンクの子豚』という印象しかなかった。
だが、今のアデイーナは堂々とマリア達の前に立ち、自分を非難し者を咎めようとしている。その姿に強張らせた。
「あら、そんな事はありませんわ。少し噂話をしていただけですの。失恋した次の日に別の男性にエスコートされて、パーティーに出席されるなんて、とても淑女のなさることではありませんもの」
「確かに淑女のする事ではないかもしれないわ。でも私は次期侯爵よ。貴女たちに見下されるような立場ではないわ。それに、カイン様とは正式に婚約した訳でもないから、かえってよかったわ」
「強がりですか。あんなに仲がよろしかったのに」
「でも、もう終わった事よ。私は浮気なんてしていないし、そんな暇はないわ。私には自分の領地を守っていかなくてはならない義務があるの。それは貴女たちでも同じでしょう。いずれどこかの貴族に嫁げば、夫と家門の繁栄の為に尽くさなくてはならない。立場は違っても果たすべき責務はあるわ」
「それは…」
「ありがとう。クラレンス子爵令嬢。あのデビュタントの日があったから、今の私があるの感謝しているわ」
「……」
マリアは、何か言い返そうと言葉を探したが、結局見つからず口を閉ざす。
アディーナは「それでは学園で」と言い残して店を出た。
マリアは俯きながらドレスを握りしめ、唇を噛んで悔しそうにしていた。他の令嬢はアディーナから家に抗議の連絡があるのではと心配していたが、アディーナはその後も何もしなかった。
既にアディーナの心は決まっていた。
もう、この国に未練などない。そろそろ、父の言うように領地を国家として独立する手立てを考えていた。
その為にももう一つの産業が必要なのだ。
ジルベスターに出会ったのは偶然なのかそれとも必然なのか、今のアディ―ナに分からない。
アディーナとジルベスターは図書館への道を歩き出すと、アディーナは路地裏に続く道にある人影を見つけた。
──まさかね。あんな所にいるはずないわ。
アディーナはフードを深く被ったアンネローゼの姿を見たような気がしたが、さっきまで算術の先生と一緒にいたのだから見間違いだと思い直した。
特に父は一人娘だった事も関係しているのだろう。盲目的に甘やかしてくれた。
でもそれは本当の意味でのアディーナの成長を妨げている事に気付いていなかった。
デビュタントで、アディーナ自身が王都に住む令嬢達からの洗礼を受けて初めて気付けたのだ。あのまま大人になってもアディーナは、今の様に領地や自分の未来を見出せていたかどうかは分からない。いや、きっと今のままの自分に満足して父や祖父の様に王命による婚姻を受け入れ、国に搾取されるだけの立場に甘んじていただろう。
前向きに未来を見据えれるきっかけをくれたのは彼女だ。
アディーナは、マリアの席に歩いていった。
「ごきげんよう。クラレンス子爵令嬢。学園で顔を会すことが殆ど無いのに、私のことをよくご存じの様ね」
アディーナの声に振り返ったマリアの顔は青くなった。マリアは、アディーナが反撃などしない大人しい令嬢だと思い込んでいた。
この数年、父や近習の者達から剣術だけでなく、船の操舵や海戦術まで叩き込まれ、次期当主として鍛え上げられたアディーナを甘く見ていた。
マリアからすればアディーナはデビュタントで醜態を曝した『ピンクの子豚』という印象しかなかった。
だが、今のアデイーナは堂々とマリア達の前に立ち、自分を非難し者を咎めようとしている。その姿に強張らせた。
「あら、そんな事はありませんわ。少し噂話をしていただけですの。失恋した次の日に別の男性にエスコートされて、パーティーに出席されるなんて、とても淑女のなさることではありませんもの」
「確かに淑女のする事ではないかもしれないわ。でも私は次期侯爵よ。貴女たちに見下されるような立場ではないわ。それに、カイン様とは正式に婚約した訳でもないから、かえってよかったわ」
「強がりですか。あんなに仲がよろしかったのに」
「でも、もう終わった事よ。私は浮気なんてしていないし、そんな暇はないわ。私には自分の領地を守っていかなくてはならない義務があるの。それは貴女たちでも同じでしょう。いずれどこかの貴族に嫁げば、夫と家門の繁栄の為に尽くさなくてはならない。立場は違っても果たすべき責務はあるわ」
「それは…」
「ありがとう。クラレンス子爵令嬢。あのデビュタントの日があったから、今の私があるの感謝しているわ」
「……」
マリアは、何か言い返そうと言葉を探したが、結局見つからず口を閉ざす。
アディーナは「それでは学園で」と言い残して店を出た。
マリアは俯きながらドレスを握りしめ、唇を噛んで悔しそうにしていた。他の令嬢はアディーナから家に抗議の連絡があるのではと心配していたが、アディーナはその後も何もしなかった。
既にアディーナの心は決まっていた。
もう、この国に未練などない。そろそろ、父の言うように領地を国家として独立する手立てを考えていた。
その為にももう一つの産業が必要なのだ。
ジルベスターに出会ったのは偶然なのかそれとも必然なのか、今のアディ―ナに分からない。
アディーナとジルベスターは図書館への道を歩き出すと、アディーナは路地裏に続く道にある人影を見つけた。
──まさかね。あんな所にいるはずないわ。
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