前職キャバ嬢、異世界に来たら悪女になっていた。あんまり変わらないのかな？

見たことのないエレノア

もう一つエレノアの事で気になることがある。


昨日、クロエと一緒にエレノアの様子を見に行った時だった。


ぼんやりとエレノアの目が開いていたのだが、意識は混濁しているようだった。



クロエが心配そうにエレノアの身体にそっと手を触れるとエレノアがクロエを見て笑顔を見せた。



「せなちゃん？どうしたん？来てくれたんや。
久しぶりやねえ。元気しとったん？」


懐かしそうにクロエを見つめながら不思議な訛り（なまり）で喋りだした。


「せなちゃん、ごめんな。何か分からんけど…身体が重くて手話ができへんねん。
私どうしちゃったんやろう。」


いつものエレノアじゃない。

少し幼いような…見たことないエレノアだ。



そして、エレノアの視線は私に向かった。


「あ、せなちゃんのお母さんお久しぶりです。私ルキアです。佐多ルキア。覚えてますか？
あれ？お母さんちょっと日焼けしはったんですか？相変わらず美人ですね。」


サタルキア？


誰だそれは。



あの店で使っていたルキアという名前に関係あるのか？



「すいません、私おかーはんに会いたいんです。
連れて行ってもらえませんか？せなちゃん、おかあはんの居場所知ってる？
手紙書いてたでしょ？私、やっとお金が貯まったんよ。これから大学に行って勉強するの。
そして関西に帰ってまたおかーはんと暮すねん。
恩返し早くしたいわ。」



クロエがどう反応して良いか分からず困惑している。


「せなちゃん、大丈夫？気分悪い？竹彦呼ぼうか？
あ、修也の方がええかな？」



「…あれ？でも、私今違う世界に来ちゃったはず…。あれ？ルキアじゃない、違う名前に…。
結婚して、離婚して、また結婚して…。
え…？私どうしちゃったの？
私はどっちなの？」



明らかにエレノアが混乱し始めている。

これ以上は良くないと感じた。



「ルキアちゃん、会いたい人はちゃんと探しておく。
だからもう少し休もう。」

ルキアが安心できるよう、ルキアが認識している人物として対応する。



「いや、でも…。」



「せなも心配している。大丈夫だから。何も心配いらない。
さあ、もう一度目を閉じて…。」



「そう、ですか…。確かにまだ眠い…。」

エレノアがウトウトし始めた。



クロエも状況を読んだのか優しくエレノアの手を握る。



握られた手が心地よかったのか、そのまままた眠りについてくれた。






さっきのは一体何だったんだ…。


エレノアの魔力がいびつな事に関連していそうだ。


聞いたことない訛り、発音の難しそうな人物名。


クロエをせなという人物に認識していた。




一度、マスターに報告しておいた方が良いかもしれないな。