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Ωのジレンマ
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「賢志は従兄弟だよ。
父さんの妹の息子。僕と同級生で、今は他県に住んでるけど元々大学はこっちに来る予定だったんだ」
ひとつひとつ説明していく。
「うちはΩに対しては過保護なんだけど、αやβだと割と自由に出来てその中でも叔母さんは本当に自由なんだよ。うちの父や茉希さん見てたからαやΩは大変ね~、なんて言いながら大学生の時に知り合ったβの先輩とさっさと結婚して旦那さんの地元に行っちゃうような人」
僕の言葉に胡桃が驚く。自分の家庭環境と比べてカルチャーショックを受けているのかもしれない。
「もちろん、祖父は止めたみたいだよ。結婚は良いけどせめて近くに。どうせなら系列の会社に就職して欲しいって言ったのに話に来た時には旦那さんの就職先も決まった後でね。
〈娘さんの環境に惹かれたわけでは無いと、僕なりのケジメです〉なんて言われたら反対できないよね。
それでさ、叔母さんは短期大学だったから旦那さんと自分の卒業と同時に結婚。
旦那さんの就職先が地元だったからそのまま向こうに嫁いじゃってさ。
不仲とかじゃなくて、自分達はβだからαとかΩとか理解はしててもわかってあげられない部分があるから、それなら離れた方が良い関係でいられるんじゃ無いかって。
自分の身内のαやΩに偏見はないけどコンプレックが無いわけじゃない。だからいい関係でいるためにもって。
だから何かあれば遊びにも来るし、賢志やその妹とはそれなりに連絡取り合ったりもしてるしね」
僕の長い説明を胡桃は黙って聞いてくれる。
「だから賢志はこっちの事情も全部知ってて、自分の母親の実家の事情も全部知ってて、その上でこっちに進学したいってずっと言ってたんだ。
賢志はβなんだけど勉強好きみたいで本当は護君の行った学校に行くつもりだったんだよね…。でも万が一にも会ったりしたくないからって志望校変えて、それでどうせならってうちの学校に決めたって」
「その辺の事情も知ってるんだ?」
「うん、全部知ってる。
なんなら会ったことも、一緒に遊んだこともあるし。賢志も慕ってたから…」
言ってて少し淋しくなる。
いつまでも引きずっていたくないのに、それなのに事あるごとに思い出させられる。
「賢志がαだったらきっと賢志が婚約者だったんだろうけどね…。
で、その賢志が同じ学校だから一緒に過ごすことが多くなるはずなんだ」
「……じゃあ、安心だね」
少し考えてから胡桃が答える。
「ヤキモチ妬きたいけど、私からも姫をお願いしたいような人だった。近くにいないのに寄り添ってくれる人なんだね」
そう言ってニコリと笑う。
「叔母さまのことも、賢志さんのことも、好き?憧れ?ちょっと羨ましいんだね、姫は」
「何で?」
胡桃の言葉に驚く。何でそうなるんだろう??
「凄く、自由なことが羨ましいって聞こえる。自分もβだったらって思ってるでしょ?
本当、Ωって生きにくいよね…」
胡桃の心からの言葉。
「私だって、彼のことは大好きだしこの先の事にも後悔はないけどもしも自分がΩじゃなかったらって考えることあるし。
兄さんみたいに自由にできるΩって希少よ?私は守られないと無理だと思ってる。姫もそうよね?
だからこそ叔母さまみたいに、賢志さんみたいに選択できる事に憧れるんじゃないかな?
私達ってさ、選択肢がないことが多くない?良かれと思ってやってくれてる事だってわかってても、それが息苦しいこともある。
それでも自分を守るためにはそれに甘んじるしかない。
そう思うとαって自由よね~。
αにはαの不自由さがあるんだろうけど、αに守られてる私たちが言うのも何だけど、う~ら~や~ま~しぃ~!」
Ωだから守られる僕達が、Ωだからと守られることを厭う、考えれば考えるほどにジレンマに陥っていく。
それでもΩである事は放棄できないのだ。
「でさ、いつ会わせてくれるの?
姉としてご挨拶しないとね」
艶やかな笑みを浮かべた胡桃は綺麗だった。
父さんの妹の息子。僕と同級生で、今は他県に住んでるけど元々大学はこっちに来る予定だったんだ」
ひとつひとつ説明していく。
「うちはΩに対しては過保護なんだけど、αやβだと割と自由に出来てその中でも叔母さんは本当に自由なんだよ。うちの父や茉希さん見てたからαやΩは大変ね~、なんて言いながら大学生の時に知り合ったβの先輩とさっさと結婚して旦那さんの地元に行っちゃうような人」
僕の言葉に胡桃が驚く。自分の家庭環境と比べてカルチャーショックを受けているのかもしれない。
「もちろん、祖父は止めたみたいだよ。結婚は良いけどせめて近くに。どうせなら系列の会社に就職して欲しいって言ったのに話に来た時には旦那さんの就職先も決まった後でね。
〈娘さんの環境に惹かれたわけでは無いと、僕なりのケジメです〉なんて言われたら反対できないよね。
それでさ、叔母さんは短期大学だったから旦那さんと自分の卒業と同時に結婚。
旦那さんの就職先が地元だったからそのまま向こうに嫁いじゃってさ。
不仲とかじゃなくて、自分達はβだからαとかΩとか理解はしててもわかってあげられない部分があるから、それなら離れた方が良い関係でいられるんじゃ無いかって。
自分の身内のαやΩに偏見はないけどコンプレックが無いわけじゃない。だからいい関係でいるためにもって。
だから何かあれば遊びにも来るし、賢志やその妹とはそれなりに連絡取り合ったりもしてるしね」
僕の長い説明を胡桃は黙って聞いてくれる。
「だから賢志はこっちの事情も全部知ってて、自分の母親の実家の事情も全部知ってて、その上でこっちに進学したいってずっと言ってたんだ。
賢志はβなんだけど勉強好きみたいで本当は護君の行った学校に行くつもりだったんだよね…。でも万が一にも会ったりしたくないからって志望校変えて、それでどうせならってうちの学校に決めたって」
「その辺の事情も知ってるんだ?」
「うん、全部知ってる。
なんなら会ったことも、一緒に遊んだこともあるし。賢志も慕ってたから…」
言ってて少し淋しくなる。
いつまでも引きずっていたくないのに、それなのに事あるごとに思い出させられる。
「賢志がαだったらきっと賢志が婚約者だったんだろうけどね…。
で、その賢志が同じ学校だから一緒に過ごすことが多くなるはずなんだ」
「……じゃあ、安心だね」
少し考えてから胡桃が答える。
「ヤキモチ妬きたいけど、私からも姫をお願いしたいような人だった。近くにいないのに寄り添ってくれる人なんだね」
そう言ってニコリと笑う。
「叔母さまのことも、賢志さんのことも、好き?憧れ?ちょっと羨ましいんだね、姫は」
「何で?」
胡桃の言葉に驚く。何でそうなるんだろう??
「凄く、自由なことが羨ましいって聞こえる。自分もβだったらって思ってるでしょ?
本当、Ωって生きにくいよね…」
胡桃の心からの言葉。
「私だって、彼のことは大好きだしこの先の事にも後悔はないけどもしも自分がΩじゃなかったらって考えることあるし。
兄さんみたいに自由にできるΩって希少よ?私は守られないと無理だと思ってる。姫もそうよね?
だからこそ叔母さまみたいに、賢志さんみたいに選択できる事に憧れるんじゃないかな?
私達ってさ、選択肢がないことが多くない?良かれと思ってやってくれてる事だってわかってても、それが息苦しいこともある。
それでも自分を守るためにはそれに甘んじるしかない。
そう思うとαって自由よね~。
αにはαの不自由さがあるんだろうけど、αに守られてる私たちが言うのも何だけど、う~ら~や~ま~しぃ~!」
Ωだから守られる僕達が、Ωだからと守られることを厭う、考えれば考えるほどにジレンマに陥っていく。
それでもΩである事は放棄できないのだ。
「でさ、いつ会わせてくれるの?
姉としてご挨拶しないとね」
艶やかな笑みを浮かべた胡桃は綺麗だった。
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