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第53話 必勝祈願!猪トンカツ
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明日に向けた準備を済ませると、既に初音とギンレイは焚き火の前に待機しており、今夜の夕食にかける期待の大きさを物語っていた。
今回の料理は少し集中したいので、ギンレイには先に猪の鼻と耳をあげよう。
沖縄ではハナブク、ミミガーと呼び好んで食べられているそうで、その独特の食感をギンレイも気に入ったみたいだ。
「ハトマメムギから作ったフレークが出来ていて助かったよ。これがないと今日の夕食は別の物になってたな」
聞いた事のない言葉に初音が反応を示す。
「ふれーく?それが今日の夕餉かの?」
「いや…そうじゃなくて、これはパン粉の代わりというか…」
どうにも上手い表現が見つからない。
仕方がないのだが初音と話していると、時々カルチャーギャップのような感覚に陥ってしまう。
「兎に角だ、楽しみにしてな」
ハトマメムギは種子の部分である豆を取り出し、ダッチオーブンで炊いて柔らかくした物を潰して練っていく。
最後に薄く伸ばして天日で干すのだが、イメージとしては一枚の大きなコーンフレークと言えば分かりやすいだろうか?
これは保存できるので必要な分だけ砕いて使おう。
まずは採取しておいたヒヨコムギを用意。
これは野生麦の一種で、その名の由来となった黄色の小さい実を付けているが、形が少し歪でヒヨコにギリ見えなくもない。
これを粉末状にして簡易の小麦粉にした。
正直、ふるいにすら掛けていないので通常の物と比べ、クオリティが高いとは言えないが流石にそれは贅沢だろう。
この小麦粉に今朝見つけたミズサシシギの卵と水を加え、猪肉のロースとヒレを浸し、ハトマメムギのフレークを細かく砕いた物をパン粉代わりにまとわせていく。
後はダッチオーブンに猪の脂身を投入して、液状になるまで熱していけば…脂から作った揚げ油の完成!
これで下準備はOKだ。
熱々のダッチオーブンに猪肉を潜らせると、ジュワッという小気味良い音が暗い森に広がり初音の歓声が挙がる。
「おぉ!天ぷらかぁ!ワシの好物じゃよ」
確かに似ているが、これはフライの方。
俺の認識だとパン粉をつけるかどうかの違いなのだが、揚げる食材の種類でも呼び名を分けるらしい。
「肉の天ぷらとな!?
これは…天才の発想じゃ!
日の本ひろしといえど、誰も思いつかんかったわ」
いや、俺が初めての人じゃないから、変に持ち上げられると手元が狂いそうで逆に怖い。
揚げ物をする上で油の温度は重要な要素、とはいえ使っている油が通常の植物性の物ではないので少々不安はある。
「良い色合いに仕上がってるが、ちょっと中を確認させてくれよ~」
揚げたてをナイフで切ると内部は絶妙な火加減で調理され、そこから肉汁が続々と溢れ出る。
「さぁ、猪トンカツの完成だぜ!」
「とん・かつ、とん・かつ!」
ちゃんと分かって言ってるのかな。
それは置いとくとして、最初の一口めは何も付けずに食べてみよう。
豆から作ったフレーク衣はパン粉よりも歯応えがあり、少しだけ不安のあった風味も違和感を感じなかった。
口にした瞬間の揚げ物特有の音、こんな自然の中で親しみのある音に再び出会えた事が素直に嬉しい。
まずはロース肉から味わうと、脂身の持つ甘さと赤身の歯応えがダイレクトに伝わってくる。
トンカツで何も付けずに食べるのが一番だと言う人の気持ちが分かる思いだ。
一方、ヒレ肉は脂身が少ないが赤身自体がきめ細かい肉質で、上質な歯応えと旨味が感じられて、どちらも甲乙つけがたい旨さ。
「ワシはろーすの方が好みかのう」
次は岩塩を付けてみたが、適度な塩分が加わった事で甘味がより一層引き立ち、素材の旨味が存分に活かされているという感じか。
これだけでも十分に旨い。
しかし、俺はここで最高・最強のダメ押し実行を決意する。
今回の料理は少し集中したいので、ギンレイには先に猪の鼻と耳をあげよう。
沖縄ではハナブク、ミミガーと呼び好んで食べられているそうで、その独特の食感をギンレイも気に入ったみたいだ。
「ハトマメムギから作ったフレークが出来ていて助かったよ。これがないと今日の夕食は別の物になってたな」
聞いた事のない言葉に初音が反応を示す。
「ふれーく?それが今日の夕餉かの?」
「いや…そうじゃなくて、これはパン粉の代わりというか…」
どうにも上手い表現が見つからない。
仕方がないのだが初音と話していると、時々カルチャーギャップのような感覚に陥ってしまう。
「兎に角だ、楽しみにしてな」
ハトマメムギは種子の部分である豆を取り出し、ダッチオーブンで炊いて柔らかくした物を潰して練っていく。
最後に薄く伸ばして天日で干すのだが、イメージとしては一枚の大きなコーンフレークと言えば分かりやすいだろうか?
これは保存できるので必要な分だけ砕いて使おう。
まずは採取しておいたヒヨコムギを用意。
これは野生麦の一種で、その名の由来となった黄色の小さい実を付けているが、形が少し歪でヒヨコにギリ見えなくもない。
これを粉末状にして簡易の小麦粉にした。
正直、ふるいにすら掛けていないので通常の物と比べ、クオリティが高いとは言えないが流石にそれは贅沢だろう。
この小麦粉に今朝見つけたミズサシシギの卵と水を加え、猪肉のロースとヒレを浸し、ハトマメムギのフレークを細かく砕いた物をパン粉代わりにまとわせていく。
後はダッチオーブンに猪の脂身を投入して、液状になるまで熱していけば…脂から作った揚げ油の完成!
これで下準備はOKだ。
熱々のダッチオーブンに猪肉を潜らせると、ジュワッという小気味良い音が暗い森に広がり初音の歓声が挙がる。
「おぉ!天ぷらかぁ!ワシの好物じゃよ」
確かに似ているが、これはフライの方。
俺の認識だとパン粉をつけるかどうかの違いなのだが、揚げる食材の種類でも呼び名を分けるらしい。
「肉の天ぷらとな!?
これは…天才の発想じゃ!
日の本ひろしといえど、誰も思いつかんかったわ」
いや、俺が初めての人じゃないから、変に持ち上げられると手元が狂いそうで逆に怖い。
揚げ物をする上で油の温度は重要な要素、とはいえ使っている油が通常の植物性の物ではないので少々不安はある。
「良い色合いに仕上がってるが、ちょっと中を確認させてくれよ~」
揚げたてをナイフで切ると内部は絶妙な火加減で調理され、そこから肉汁が続々と溢れ出る。
「さぁ、猪トンカツの完成だぜ!」
「とん・かつ、とん・かつ!」
ちゃんと分かって言ってるのかな。
それは置いとくとして、最初の一口めは何も付けずに食べてみよう。
豆から作ったフレーク衣はパン粉よりも歯応えがあり、少しだけ不安のあった風味も違和感を感じなかった。
口にした瞬間の揚げ物特有の音、こんな自然の中で親しみのある音に再び出会えた事が素直に嬉しい。
まずはロース肉から味わうと、脂身の持つ甘さと赤身の歯応えがダイレクトに伝わってくる。
トンカツで何も付けずに食べるのが一番だと言う人の気持ちが分かる思いだ。
一方、ヒレ肉は脂身が少ないが赤身自体がきめ細かい肉質で、上質な歯応えと旨味が感じられて、どちらも甲乙つけがたい旨さ。
「ワシはろーすの方が好みかのう」
次は岩塩を付けてみたが、適度な塩分が加わった事で甘味がより一層引き立ち、素材の旨味が存分に活かされているという感じか。
これだけでも十分に旨い。
しかし、俺はここで最高・最強のダメ押し実行を決意する。
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