彼女いない歴=年齢 デート経験0の俺ですが、レンタル彼氏始めました!~一緒に《特別》作りませんか~

夜月桜

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第二話~side莉那~  

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 私は身体も洗い終わって、湯船に口まで沈めて浸かっていた。
 ブクブクブクブクブク。
 空気を吐き出して遊びながら、先ほどのお兄ちゃんの話を振り返る。
「レンタル彼氏、かぁ」
 はぁ、と大きな溜息。
 正直に言う。私は、お兄ちゃんが好きだ。もちろん、私のお兄ちゃんとしても好きだが、そうではなく。
異性として、一人の男性として、私はお兄ちゃんが好きだ。
 だって、しょうがない。私達が幼いころに亡くなった両親に変わって、お兄ちゃんは私の面倒をずっと見てくれたのだ。本当に、ずっと一緒だった。それを他の、同年代の男子と比べたら、比べるのもおこがましいくらいに、お兄ちゃんは魅力的に映る。映ってしまう。
 お兄ちゃんは私に、幸せに暮らしてほしいとか思ってるのかもしれないが、私にとっては一緒に居れる今こそ、幸せなのだ。
「はぁ。お兄ちゃんって、謎に昔からモテるからなぁ」
 実を言うと、今のお兄ちゃんが出来上がった背景には、私の影響が少なからず、否多分に含まれている。
 お兄ちゃんは、小学生の頃はもっと活発、それもクラスの中心グループでワイワイやっているようなキャラだったのだ。
 小学生の女子とは、そういうキラキラとした人間に、虫のように惹き寄せられる。お兄ちゃんはまさに、悪い虫を惹き寄せる街灯だったのだ。
 そして、モテるという事は。バレンタインデーになると、チョコやらクッキーやらをたくさん貰ってくる。
私はそれを見て、思った。
「お兄ちゃんが取られてしまう⁉」と。
 私たちは別に、両親が死んで二人で生きていかないといけないから、仲良くなったわけではない。それよりも前から、私たちは仲良しだった。
 今思えば。既に、それこそ幼稚園児の頃から、私はお兄ちゃん一筋なのだ。それを、最近になって自覚しただけの事。
 ともあれ、そんなわけで。私は危機感を持った。
なので、私は妹特権を発動した。つまりは、ひたすら甘えた。こうすれば、私というバリアができて悪い女どもが近寄らないと、子供ながらの独占欲で実行したのだ。
 結果は、成功だった。お兄ちゃんに女が近寄ることは無かった。お兄ちゃんはそれを特に気にした様子もなく、そのまま平穏無事に時は流れた。そして、そんな平穏が数年前、両親の死という形で破られて、以降お兄ちゃんはあんな感じ。
私の事を優先する、良いお兄ちゃんになってしまった。
 もしも、両親が死んだ頃にお兄ちゃんに彼女がいたら、変わっていたのだろうか? そう考えた事もあるが、私が現れた程度で諦める女なら、お兄ちゃんの彼女にはふさわしくない。それに関しては、私は一切の後悔をしていない。
「むぅ、計画は上手く行っていたのに」
 そして、これまで。お兄ちゃんに彼女が一人として出来なかったのは、私にとってはとては都合がよかった。
 もしもこれからもお兄ちゃんがモテず、ずっと独り身のままなら。
「一人暮らしなんてお金がもったいないし、これからも一緒に住もうよ」
そう言って、法的には兄妹が結婚できずとも、実質的な同棲生活が続けられる。
それこそが、私の計画。
だったのに。
「レンタル彼氏……」
 思考が一周回って、開始地点に帰結した。
 私はもう一度、よく考える。
今はデメリットについて考えた。だから、今度はお兄ちゃんがレンタル彼氏になった際の、私のメリットについて。
 まず、レンタルとはいえ彼氏になるのだ。つまり、お兄ちゃんも彼氏っぽくしなくてはいけないはず。だが、お兄ちゃんはオシャレができない。というか、しているところを見たことが無い。
 お兄ちゃん、実は隠れイケメンだから、「オシャレしないの?」とか私からは言わなかったが、バイトをするならしないわけにはいかない。つまり、それ用に服や髪を、整えないといけない。
「お兄ちゃんの服を選んであげるっていう名目で、二人で買い物行ったり? 後は、お兄ちゃんの髪型を、私が弄ってあげたり……。ふひ、ふふふ……」
 イケない。想像したら涎が垂れてきた。
……お兄ちゃん、私の事を妹としてしか見てくれないからなぁ。
 まぁ、それは仕方のない事だから、今更どうこうしようとは思わない。だからこそ、あんな計画まで立てていたのだから。
 でも、うん。レンタル彼氏になるお兄ちゃんをサポートするという事で、兄妹デートが合法的にできるのなら、それは私にとっては大きなメリットになる。レンタル彼氏を始めた後も、「私に手伝わせて」と言えば、お兄ちゃんも断らないはず。
「うん、行ける!」
 後、やはり問題になるとすれば、お兄ちゃんがどこの馬の骨とも知れない女と、レンタルとはいえ彼氏彼女の関係になるという事だが。
「所詮は、レンタルだもんね。レンタルで本気になるとか、そんなの二次元でしか聞いたことないし」
 つまり、お兄ちゃんが取られる可能性は低い。
 結論が出た。

……お兄ちゃんのレンタル彼氏、許可しよう!

 そう決めて、私は早速お兄ちゃんとのデートのプランを考え始めるのだった――
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