3 / 9
第二話~side莉那~
しおりを挟む
私は身体も洗い終わって、湯船に口まで沈めて浸かっていた。
ブクブクブクブクブク。
空気を吐き出して遊びながら、先ほどのお兄ちゃんの話を振り返る。
「レンタル彼氏、かぁ」
はぁ、と大きな溜息。
正直に言う。私は、お兄ちゃんが好きだ。もちろん、私のお兄ちゃんとしても好きだが、そうではなく。
異性として、一人の男性として、私はお兄ちゃんが好きだ。
だって、しょうがない。私達が幼いころに亡くなった両親に変わって、お兄ちゃんは私の面倒をずっと見てくれたのだ。本当に、ずっと一緒だった。それを他の、同年代の男子と比べたら、比べるのもおこがましいくらいに、お兄ちゃんは魅力的に映る。映ってしまう。
お兄ちゃんは私に、幸せに暮らしてほしいとか思ってるのかもしれないが、私にとっては一緒に居れる今こそ、幸せなのだ。
「はぁ。お兄ちゃんって、謎に昔からモテるからなぁ」
実を言うと、今のお兄ちゃんが出来上がった背景には、私の影響が少なからず、否多分に含まれている。
お兄ちゃんは、小学生の頃はもっと活発、それもクラスの中心グループでワイワイやっているようなキャラだったのだ。
小学生の女子とは、そういうキラキラとした人間に、虫のように惹き寄せられる。お兄ちゃんはまさに、悪い虫を惹き寄せる街灯だったのだ。
そして、モテるという事は。バレンタインデーになると、チョコやらクッキーやらをたくさん貰ってくる。
私はそれを見て、思った。
「お兄ちゃんが取られてしまう⁉」と。
私たちは別に、両親が死んで二人で生きていかないといけないから、仲良くなったわけではない。それよりも前から、私たちは仲良しだった。
今思えば。既に、それこそ幼稚園児の頃から、私はお兄ちゃん一筋なのだ。それを、最近になって自覚しただけの事。
ともあれ、そんなわけで。私は危機感を持った。
なので、私は妹特権を発動した。つまりは、ひたすら甘えた。こうすれば、私というバリアができて悪い女どもが近寄らないと、子供ながらの独占欲で実行したのだ。
結果は、成功だった。お兄ちゃんに女が近寄ることは無かった。お兄ちゃんはそれを特に気にした様子もなく、そのまま平穏無事に時は流れた。そして、そんな平穏が数年前、両親の死という形で破られて、以降お兄ちゃんはあんな感じ。
私の事を優先する、良いお兄ちゃんになってしまった。
もしも、両親が死んだ頃にお兄ちゃんに彼女がいたら、変わっていたのだろうか? そう考えた事もあるが、私が現れた程度で諦める女なら、お兄ちゃんの彼女にはふさわしくない。それに関しては、私は一切の後悔をしていない。
「むぅ、計画は上手く行っていたのに」
そして、これまで。お兄ちゃんに彼女が一人として出来なかったのは、私にとってはとては都合がよかった。
もしもこれからもお兄ちゃんがモテず、ずっと独り身のままなら。
「一人暮らしなんてお金がもったいないし、これからも一緒に住もうよ」
そう言って、法的には兄妹が結婚できずとも、実質的な同棲生活が続けられる。
それこそが、私の計画。
だったのに。
「レンタル彼氏……」
思考が一周回って、開始地点に帰結した。
私はもう一度、よく考える。
今はデメリットについて考えた。だから、今度はお兄ちゃんがレンタル彼氏になった際の、私のメリットについて。
まず、レンタルとはいえ彼氏になるのだ。つまり、お兄ちゃんも彼氏っぽくしなくてはいけないはず。だが、お兄ちゃんはオシャレができない。というか、しているところを見たことが無い。
お兄ちゃん、実は隠れイケメンだから、「オシャレしないの?」とか私からは言わなかったが、バイトをするならしないわけにはいかない。つまり、それ用に服や髪を、整えないといけない。
「お兄ちゃんの服を選んであげるっていう名目で、二人で買い物行ったり? 後は、お兄ちゃんの髪型を、私が弄ってあげたり……。ふひ、ふふふ……」
イケない。想像したら涎が垂れてきた。
……お兄ちゃん、私の事を妹としてしか見てくれないからなぁ。
まぁ、それは仕方のない事だから、今更どうこうしようとは思わない。だからこそ、あんな計画まで立てていたのだから。
でも、うん。レンタル彼氏になるお兄ちゃんをサポートするという事で、兄妹デートが合法的にできるのなら、それは私にとっては大きなメリットになる。レンタル彼氏を始めた後も、「私に手伝わせて」と言えば、お兄ちゃんも断らないはず。
「うん、行ける!」
後、やはり問題になるとすれば、お兄ちゃんがどこの馬の骨とも知れない女と、レンタルとはいえ彼氏彼女の関係になるという事だが。
「所詮は、レンタルだもんね。レンタルで本気になるとか、そんなの二次元でしか聞いたことないし」
つまり、お兄ちゃんが取られる可能性は低い。
結論が出た。
……お兄ちゃんのレンタル彼氏、許可しよう!
そう決めて、私は早速お兄ちゃんとのデートのプランを考え始めるのだった――
ブクブクブクブクブク。
空気を吐き出して遊びながら、先ほどのお兄ちゃんの話を振り返る。
「レンタル彼氏、かぁ」
はぁ、と大きな溜息。
正直に言う。私は、お兄ちゃんが好きだ。もちろん、私のお兄ちゃんとしても好きだが、そうではなく。
異性として、一人の男性として、私はお兄ちゃんが好きだ。
だって、しょうがない。私達が幼いころに亡くなった両親に変わって、お兄ちゃんは私の面倒をずっと見てくれたのだ。本当に、ずっと一緒だった。それを他の、同年代の男子と比べたら、比べるのもおこがましいくらいに、お兄ちゃんは魅力的に映る。映ってしまう。
お兄ちゃんは私に、幸せに暮らしてほしいとか思ってるのかもしれないが、私にとっては一緒に居れる今こそ、幸せなのだ。
「はぁ。お兄ちゃんって、謎に昔からモテるからなぁ」
実を言うと、今のお兄ちゃんが出来上がった背景には、私の影響が少なからず、否多分に含まれている。
お兄ちゃんは、小学生の頃はもっと活発、それもクラスの中心グループでワイワイやっているようなキャラだったのだ。
小学生の女子とは、そういうキラキラとした人間に、虫のように惹き寄せられる。お兄ちゃんはまさに、悪い虫を惹き寄せる街灯だったのだ。
そして、モテるという事は。バレンタインデーになると、チョコやらクッキーやらをたくさん貰ってくる。
私はそれを見て、思った。
「お兄ちゃんが取られてしまう⁉」と。
私たちは別に、両親が死んで二人で生きていかないといけないから、仲良くなったわけではない。それよりも前から、私たちは仲良しだった。
今思えば。既に、それこそ幼稚園児の頃から、私はお兄ちゃん一筋なのだ。それを、最近になって自覚しただけの事。
ともあれ、そんなわけで。私は危機感を持った。
なので、私は妹特権を発動した。つまりは、ひたすら甘えた。こうすれば、私というバリアができて悪い女どもが近寄らないと、子供ながらの独占欲で実行したのだ。
結果は、成功だった。お兄ちゃんに女が近寄ることは無かった。お兄ちゃんはそれを特に気にした様子もなく、そのまま平穏無事に時は流れた。そして、そんな平穏が数年前、両親の死という形で破られて、以降お兄ちゃんはあんな感じ。
私の事を優先する、良いお兄ちゃんになってしまった。
もしも、両親が死んだ頃にお兄ちゃんに彼女がいたら、変わっていたのだろうか? そう考えた事もあるが、私が現れた程度で諦める女なら、お兄ちゃんの彼女にはふさわしくない。それに関しては、私は一切の後悔をしていない。
「むぅ、計画は上手く行っていたのに」
そして、これまで。お兄ちゃんに彼女が一人として出来なかったのは、私にとってはとては都合がよかった。
もしもこれからもお兄ちゃんがモテず、ずっと独り身のままなら。
「一人暮らしなんてお金がもったいないし、これからも一緒に住もうよ」
そう言って、法的には兄妹が結婚できずとも、実質的な同棲生活が続けられる。
それこそが、私の計画。
だったのに。
「レンタル彼氏……」
思考が一周回って、開始地点に帰結した。
私はもう一度、よく考える。
今はデメリットについて考えた。だから、今度はお兄ちゃんがレンタル彼氏になった際の、私のメリットについて。
まず、レンタルとはいえ彼氏になるのだ。つまり、お兄ちゃんも彼氏っぽくしなくてはいけないはず。だが、お兄ちゃんはオシャレができない。というか、しているところを見たことが無い。
お兄ちゃん、実は隠れイケメンだから、「オシャレしないの?」とか私からは言わなかったが、バイトをするならしないわけにはいかない。つまり、それ用に服や髪を、整えないといけない。
「お兄ちゃんの服を選んであげるっていう名目で、二人で買い物行ったり? 後は、お兄ちゃんの髪型を、私が弄ってあげたり……。ふひ、ふふふ……」
イケない。想像したら涎が垂れてきた。
……お兄ちゃん、私の事を妹としてしか見てくれないからなぁ。
まぁ、それは仕方のない事だから、今更どうこうしようとは思わない。だからこそ、あんな計画まで立てていたのだから。
でも、うん。レンタル彼氏になるお兄ちゃんをサポートするという事で、兄妹デートが合法的にできるのなら、それは私にとっては大きなメリットになる。レンタル彼氏を始めた後も、「私に手伝わせて」と言えば、お兄ちゃんも断らないはず。
「うん、行ける!」
後、やはり問題になるとすれば、お兄ちゃんがどこの馬の骨とも知れない女と、レンタルとはいえ彼氏彼女の関係になるという事だが。
「所詮は、レンタルだもんね。レンタルで本気になるとか、そんなの二次元でしか聞いたことないし」
つまり、お兄ちゃんが取られる可能性は低い。
結論が出た。
……お兄ちゃんのレンタル彼氏、許可しよう!
そう決めて、私は早速お兄ちゃんとのデートのプランを考え始めるのだった――
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
バイト先の先輩ギャルが実はクラスメイトで、しかも推しが一緒だった件
沢田美
恋愛
「きょ、今日からお世話になります。有馬蓮です……!」
高校二年の有馬蓮は、人生初のアルバイトで緊張しっぱなし。
そんな彼の前に現れたのは、銀髪ピアスのギャル系先輩――白瀬紗良だった。
見た目は派手だけど、話してみるとアニメもゲームも好きな“同類”。
意外な共通点から意気投合する二人。
だけどその日の帰り際、店長から知らされたのは――
> 「白瀬さん、今日で最後のシフトなんだよね」
一期一会の出会い。もう会えないと思っていた。
……翌日、学校で再会するまでは。
実は同じクラスの“白瀬さん”だった――!?
オタクな少年とギャルな少女の、距離ゼロから始まる青春ラブコメ。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
S級ハッカーの俺がSNSで炎上する完璧ヒロインを助けたら、俺にだけめちゃくちゃ甘えてくる秘密の関係になったんだが…
senko
恋愛
「一緒に、しよ?」完璧ヒロインが俺にだけベタ甘えしてくる。
地味高校生の俺は裏ではS級ハッカー。炎上するクラスの完璧ヒロインを救ったら、秘密のイチャラブ共闘関係が始まってしまった!リアルではただのモブなのに…。
クラスの隅でPCを触るだけが生きがいの陰キャプログラマー、黒瀬和人。
彼にとってクラスの中心で太陽のように笑う完璧ヒロイン・天野光は決して交わることのない別世界の住人だった。
しかしある日、和人は光を襲う匿名の「裏アカウント」を発見してしまう。
悪意に満ちた誹謗中傷で完璧な彼女がひとり涙を流していることを知り彼は決意する。
――正体を隠したまま彼女を救い出す、と。
謎の天才ハッカー『null』として光に接触した和人。
ネットでは唯一頼れる相棒として彼女に甘えられる一方、現実では目も合わせられないただのクラスメイト。
この秘密の二重生活はもどかしくて、だけど最高に甘い。
陰キャ男子と完璧ヒロインの秘密の二重生活ラブコメ、ここに開幕!
罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語
ノン・タロー
恋愛
高校2年の夏……友達同士で行った小テストの点を競う勝負に負けた僕、御堂 彼方(みどう かなた)は、罰ゲームとしてクラスで人気のある女子・風原 亜希(かざはら あき)に告白する。
だが亜希は、彼方が特に好みでもなく、それをあっさりと振る。
それで終わるはずだった――なのに。
ひょんな事情で、彼方は亜希と共に"同居”することに。
さらに新しく出来た、甘えん坊な義妹・由奈(ゆな)。
そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。
由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。
一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。
そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。
罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。
ツンデレな同居人、甘えたがりな義妹、寡黙な同クラ女子、恋愛に不器用な生徒会長、ギャル気質な同クラ女子……。
そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。
これは、恋と居場所と感情の距離をめぐる、ちょっと不器用で、でも確かな青春の物語。
クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について
沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。
かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。
しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。
現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。
その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。
「今日から私、あなたのメイドになります!」
なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!?
謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける!
カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる