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第二章 孤高のヤンキー先輩はチョロすぎる
第30話 偶然(?)の邂逅
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――世の中には、偶然というものがあるらしい。
もっとも、これは昨日知った偶然ではあるが。
「やー偶然ダネ。あは、あはは……」
「うん、そうだね」
ちょっとばかし頬を引きつらせている美少女、朝比奈梨子を目の前にして、僕はそんなことを思っていた。
彼女がニャンニャンモールにやって来ていることは、昨日彼女とPINEしたときから知っていた。
話すことのネタがないのか、もじもじしている彼女の服装は、ふんわりしたスカートに、普段は見ない可愛らしいヘアピンで髪型を変えている。
奇しくも、南嶋先輩と同じ清楚系ファッションといった感じだ。
「……ど、どうしたの? もしかして、私の格好おかしい?」
黙っていることに耐えられなくなったのか、梨子が不安そうに聞いてくる。
「あ、いや。そういうわけじゃないんだ」
「じゃあ、どういうわけ?」
「それは――」
どうしよう。見とれていました、なんて恥ずかしくて言えない。
けど、嘘をつくのは嘘をつくので気が引ける。
こういうとき、世の中の女性慣れしている男達は歯の浮くような台詞の一つでも吐けるのだろうが、生憎と僕にはそこまでの器量は無い。
悩んだ末、なんとか言葉を絞り出した。
「その……なんか、すごいオシャレだね。家族で来てるって言ってたけど、服装に手を抜かないのが梨子さんらしいよ」
「えっ、そ、それは……はう」
なぜか、梨子はそっぽを向いてしまった。
「(ど、どうしよう。楓くんに見せるために気合い入れてきましたなんて、そんなこと言えないぃ)」
「梨子さん? 今何か言った?」
「な、なんでもにゃい!」
そのわりには顔が真っ赤だし、噛みまくっている気がするのだが。
「そ、それより楓くん、もうお昼は食べた?」
「え? そういえばまだだな……」
何気なくスマホをポケットから取り出すと、時刻はお昼の12時を回っている。
めんどくさがりの自分には珍しく、日曜日だというのに朝ご飯を食べてきたのだが、いろいろ緊張する展開が多かったせいかすっかりお腹が空いている。
と、スマホから顔を上げた僕は、梨子がじっとこちらを見つめているのに気付いた。
「梨子さん、どうしたの?」
「あ、あのさ。楓くん」
梨子は、人差し指の先をちょんちょんと突き合わせながら、恐る恐るといった様子で話しかけてくる。
「もし、楓くんがよければなんだけどさ……一緒にご飯食べない?」
「え?」
「ほ、ほら。たまに学校でも私達、一緒にお弁当食べてるでしょ? せっかく会ったし、どうかなって」
迷惑だったら大丈夫なんだけどね、と梨子は付け足す。
迷惑だなんてとんでもない。
むしろ、嬉しいくらいだ。僕みたいな人間がお呼ばれしてしまっていいのか、不安になるくらいには。
しかし……少しばかりハードルがある。
確かに僕は梨子と一緒に何度か昼ご飯を食べたことがあるが、それは人気の無い部室だけだ。つまり、誰にも見られることのない場所なのである。
しかし、ここは休日のショッピングモール。
食事するとなれば、十中八九フードコートへ行くことになるのだろうが、つまり人が多いのだ。
だから――
「お呼ばれしたいんだけど、その……梨子さんは大丈夫? 梨子さん美人だから、目立つし……恋人とかに間違われたりしないかなって」
「び、美人……こ、こ、恋人!?」
梨子は、さっと顔を赤くしてしまう。
さっきまでは南嶋先輩と僕の関係は姉弟に見えたみたいだからセーフだが、梨子とならカップルに見えてしまう可能性がある。
もしそうなれば、梨子にとってもあまり好ましい事態ではないのではなかろうか? 僕なんかと噂が立つのは。
「もう、楓くんてたまに平気でそういうこと言うよね……(まあ、嫌ってわけじゃないけどさ)」
「ご、ごめん」
確かに、僕ばっかり恋人と疑われるんじゃ? みたいに思っているのは、意識してるみたいでキモいか。
「私から誘ってるんだから、楓くんは気にしなくていいんだよ。むしろ……」
「むしろ?」
「私が、楓くんと一緒に過ごしたいだけ……なんて」
「っ!」
僕は、不覚にもドキッとしてしまった。
が、自分が何を言っているのか気付いたのだろう。笑顔で固まったまま、梨子はみるみる顔を沸騰させていき。
「ご、ごめん! 今のなし! なしだから!」
「あ、うん。わかっ、た」
目をグルグル回して両手をブンブンと振る梨子を見ながら、僕はしどろもどろに答えるのだった。
もっとも、これは昨日知った偶然ではあるが。
「やー偶然ダネ。あは、あはは……」
「うん、そうだね」
ちょっとばかし頬を引きつらせている美少女、朝比奈梨子を目の前にして、僕はそんなことを思っていた。
彼女がニャンニャンモールにやって来ていることは、昨日彼女とPINEしたときから知っていた。
話すことのネタがないのか、もじもじしている彼女の服装は、ふんわりしたスカートに、普段は見ない可愛らしいヘアピンで髪型を変えている。
奇しくも、南嶋先輩と同じ清楚系ファッションといった感じだ。
「……ど、どうしたの? もしかして、私の格好おかしい?」
黙っていることに耐えられなくなったのか、梨子が不安そうに聞いてくる。
「あ、いや。そういうわけじゃないんだ」
「じゃあ、どういうわけ?」
「それは――」
どうしよう。見とれていました、なんて恥ずかしくて言えない。
けど、嘘をつくのは嘘をつくので気が引ける。
こういうとき、世の中の女性慣れしている男達は歯の浮くような台詞の一つでも吐けるのだろうが、生憎と僕にはそこまでの器量は無い。
悩んだ末、なんとか言葉を絞り出した。
「その……なんか、すごいオシャレだね。家族で来てるって言ってたけど、服装に手を抜かないのが梨子さんらしいよ」
「えっ、そ、それは……はう」
なぜか、梨子はそっぽを向いてしまった。
「(ど、どうしよう。楓くんに見せるために気合い入れてきましたなんて、そんなこと言えないぃ)」
「梨子さん? 今何か言った?」
「な、なんでもにゃい!」
そのわりには顔が真っ赤だし、噛みまくっている気がするのだが。
「そ、それより楓くん、もうお昼は食べた?」
「え? そういえばまだだな……」
何気なくスマホをポケットから取り出すと、時刻はお昼の12時を回っている。
めんどくさがりの自分には珍しく、日曜日だというのに朝ご飯を食べてきたのだが、いろいろ緊張する展開が多かったせいかすっかりお腹が空いている。
と、スマホから顔を上げた僕は、梨子がじっとこちらを見つめているのに気付いた。
「梨子さん、どうしたの?」
「あ、あのさ。楓くん」
梨子は、人差し指の先をちょんちょんと突き合わせながら、恐る恐るといった様子で話しかけてくる。
「もし、楓くんがよければなんだけどさ……一緒にご飯食べない?」
「え?」
「ほ、ほら。たまに学校でも私達、一緒にお弁当食べてるでしょ? せっかく会ったし、どうかなって」
迷惑だったら大丈夫なんだけどね、と梨子は付け足す。
迷惑だなんてとんでもない。
むしろ、嬉しいくらいだ。僕みたいな人間がお呼ばれしてしまっていいのか、不安になるくらいには。
しかし……少しばかりハードルがある。
確かに僕は梨子と一緒に何度か昼ご飯を食べたことがあるが、それは人気の無い部室だけだ。つまり、誰にも見られることのない場所なのである。
しかし、ここは休日のショッピングモール。
食事するとなれば、十中八九フードコートへ行くことになるのだろうが、つまり人が多いのだ。
だから――
「お呼ばれしたいんだけど、その……梨子さんは大丈夫? 梨子さん美人だから、目立つし……恋人とかに間違われたりしないかなって」
「び、美人……こ、こ、恋人!?」
梨子は、さっと顔を赤くしてしまう。
さっきまでは南嶋先輩と僕の関係は姉弟に見えたみたいだからセーフだが、梨子とならカップルに見えてしまう可能性がある。
もしそうなれば、梨子にとってもあまり好ましい事態ではないのではなかろうか? 僕なんかと噂が立つのは。
「もう、楓くんてたまに平気でそういうこと言うよね……(まあ、嫌ってわけじゃないけどさ)」
「ご、ごめん」
確かに、僕ばっかり恋人と疑われるんじゃ? みたいに思っているのは、意識してるみたいでキモいか。
「私から誘ってるんだから、楓くんは気にしなくていいんだよ。むしろ……」
「むしろ?」
「私が、楓くんと一緒に過ごしたいだけ……なんて」
「っ!」
僕は、不覚にもドキッとしてしまった。
が、自分が何を言っているのか気付いたのだろう。笑顔で固まったまま、梨子はみるみる顔を沸騰させていき。
「ご、ごめん! 今のなし! なしだから!」
「あ、うん。わかっ、た」
目をグルグル回して両手をブンブンと振る梨子を見ながら、僕はしどろもどろに答えるのだった。
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