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第二章 孤高のヤンキー先輩はチョロすぎる
第31話 モブ陰キャにラブコメ主人公は務まらない
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「うわ、人多いな」
フードコートに移動した僕は、思わずそうぼやいていた。
恋人と間違われるかも? とかそれ以前の問題だ。日曜日のお昼時、3桁近い席があるというのに、ほぼ全て満席だ。しかも、まだ昼ご飯に手を付けていない人々が、飢えた狼のごとくテーブルが空くのを待っている。
陰キャにはハードルの高い、イス取りゲームだ。
やはり休日はポテチ食べながらラノベを読むに限るな。
「あ、あそこ空いたよ!」
そんなことを考えていると、梨子が声を上げる。見れば、窓際の二人席が丁度空いたところだった。
僕達の場所からはおよそ5メートル。
しかし、急がなければ先を越されてしまうだろう。
「はやく! 急がないと先を越されて――」
早足でそちらへ向かう梨子。
しかし、そのせいで周りへの配慮がおろそかになっていたらしい。
不意に、すぐ横の大柄の男性がイスをひいて立ち上がり――大きな背中に梨子の身体ガぶつかった。
「ひゃっ!」
大柄な男性にぶつかった勢いで弾かれた梨子の身体ガ、ぐらりと傾ぐ。
「っ! 梨子ッ!」
僕は慌てて、梨子に手を伸ばす。
倒れそうになっていた梨子の手を掴み――そこでガッチリ体幹を維持して、引き上げられるのがラブコメ主人公だ。
が、根本的に陰キャでモブ属性。しかも家でラノベを読むか裁縫をするかしかしない僕には、ハードルが高すぎた。
「うわっ!」
梨子が倒れる勢いを一瞬殺しただけで、僕の身体は斜め下に引っ張られ、バンッと鼻から地面に衝突した。
「ぐえっ!」
あまつさえ、情けない潰れた声を上げてしまう。
ああ、カッコ悪いな。何もかもが、ラブコメ主人公とはほど遠い。
まあ、僕のことはどうでもいいのだ。
「いってて……ケガはなかった? 梨子さん」
僕は、鼻をさすりながら横に倒れ込んだ梨子へ声をかける。
「え、あ……うん」
だが、どうにも歯切れが悪い。
もしかして、倒れ込んだ拍子に頭を打ったとか!?
「梨子さん、大丈夫」
「み、見ないで!」
慌てて彼女の方を向いた拍子に、焦ったような梨子の声が耳に届く。
が、「見ないで」と言われた頃には、僕はもう梨子の方を向いていて――
「……あ」
梨子と目が合う。
なぜか、梨子の顔は茹で上がったように真っ赤になっていて――
「ど、どうしたの? どっか、痛む?」
「ううん、そんなんじゃない。そんなんじゃないから……!」
そう言う梨子は、真っ赤な顔を手で押さえる。
一体、どうしたと言うんだろう。どこかをぶつけたわけではないなら、恥ずかしがってる……?
いやでも、倒れた拍子に胸を触ったとか、そういうラッキースケベを起こしたわけでもないし。
終始謎のままだったが、その場はとりあえずぶつかった男性と頭を下げあい、一件落着となった。
――ちなみに。
「ああ、やっぱ席とられちゃったか」
この間に、空いた席は男子2人組に占領されてしまっていた。
「ご、ごめん。私がヘマしたせいで」
「いや、梨子さんのせいじゃないよ。また探そう」
落ち込む梨子を励ますように、そう告げる。
「う、うん」
梨子は、まだ少し赤い顔で頷く。
……ほんと、一体どうしたんだ。
首を傾げながら、僕は梨子と共に席を探す。
雑踏の中、空いた席を見逃さないように、真剣に。
「(いきなり呼び捨てなんて……うぅ。し、心臓に悪いよう)」
だから。
梨子の消え入るような声は、僕の耳に届かなかった。
フードコートに移動した僕は、思わずそうぼやいていた。
恋人と間違われるかも? とかそれ以前の問題だ。日曜日のお昼時、3桁近い席があるというのに、ほぼ全て満席だ。しかも、まだ昼ご飯に手を付けていない人々が、飢えた狼のごとくテーブルが空くのを待っている。
陰キャにはハードルの高い、イス取りゲームだ。
やはり休日はポテチ食べながらラノベを読むに限るな。
「あ、あそこ空いたよ!」
そんなことを考えていると、梨子が声を上げる。見れば、窓際の二人席が丁度空いたところだった。
僕達の場所からはおよそ5メートル。
しかし、急がなければ先を越されてしまうだろう。
「はやく! 急がないと先を越されて――」
早足でそちらへ向かう梨子。
しかし、そのせいで周りへの配慮がおろそかになっていたらしい。
不意に、すぐ横の大柄の男性がイスをひいて立ち上がり――大きな背中に梨子の身体ガぶつかった。
「ひゃっ!」
大柄な男性にぶつかった勢いで弾かれた梨子の身体ガ、ぐらりと傾ぐ。
「っ! 梨子ッ!」
僕は慌てて、梨子に手を伸ばす。
倒れそうになっていた梨子の手を掴み――そこでガッチリ体幹を維持して、引き上げられるのがラブコメ主人公だ。
が、根本的に陰キャでモブ属性。しかも家でラノベを読むか裁縫をするかしかしない僕には、ハードルが高すぎた。
「うわっ!」
梨子が倒れる勢いを一瞬殺しただけで、僕の身体は斜め下に引っ張られ、バンッと鼻から地面に衝突した。
「ぐえっ!」
あまつさえ、情けない潰れた声を上げてしまう。
ああ、カッコ悪いな。何もかもが、ラブコメ主人公とはほど遠い。
まあ、僕のことはどうでもいいのだ。
「いってて……ケガはなかった? 梨子さん」
僕は、鼻をさすりながら横に倒れ込んだ梨子へ声をかける。
「え、あ……うん」
だが、どうにも歯切れが悪い。
もしかして、倒れ込んだ拍子に頭を打ったとか!?
「梨子さん、大丈夫」
「み、見ないで!」
慌てて彼女の方を向いた拍子に、焦ったような梨子の声が耳に届く。
が、「見ないで」と言われた頃には、僕はもう梨子の方を向いていて――
「……あ」
梨子と目が合う。
なぜか、梨子の顔は茹で上がったように真っ赤になっていて――
「ど、どうしたの? どっか、痛む?」
「ううん、そんなんじゃない。そんなんじゃないから……!」
そう言う梨子は、真っ赤な顔を手で押さえる。
一体、どうしたと言うんだろう。どこかをぶつけたわけではないなら、恥ずかしがってる……?
いやでも、倒れた拍子に胸を触ったとか、そういうラッキースケベを起こしたわけでもないし。
終始謎のままだったが、その場はとりあえずぶつかった男性と頭を下げあい、一件落着となった。
――ちなみに。
「ああ、やっぱ席とられちゃったか」
この間に、空いた席は男子2人組に占領されてしまっていた。
「ご、ごめん。私がヘマしたせいで」
「いや、梨子さんのせいじゃないよ。また探そう」
落ち込む梨子を励ますように、そう告げる。
「う、うん」
梨子は、まだ少し赤い顔で頷く。
……ほんと、一体どうしたんだ。
首を傾げながら、僕は梨子と共に席を探す。
雑踏の中、空いた席を見逃さないように、真剣に。
「(いきなり呼び捨てなんて……うぅ。し、心臓に悪いよう)」
だから。
梨子の消え入るような声は、僕の耳に届かなかった。
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