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第二章 孤高のヤンキー先輩はチョロすぎる
第34話 たぶんこうして終わる恋もある
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《南嶋柚香視点》
どうしてこうなった?
ニャンニャンモール内のベンチに腰掛け、ソフトクリームをチビチビと食べながら、撃ちはもの思う。
ちらりと隣を見ると、隣には燐斗か座り、同じようにソフトクリームを食べている。
半ば一方的に楓が行ってしまい、残されたウチ達は2人で行動する運びとなった。
たぶん、気を遣ってくれた……のだと思う。
そうでなければ、ウチと燐斗を一緒にしておく理由がない。
あとは若いお二人で、などと自分の方が若いくせに思っていても何らおかしくはないのだ。
だから、ここは楓に感謝しなければいけない。
だけど……それはきっと、昨日までの自分なら、という話だ。
ウチは、改めて燐斗の――好きであったはずの人の横顔を見る。
すらっとした鼻筋に、愛嬌のある二重の瞼。細身ながら運動部らしく引き締まった身体をしていて――おまけに性格だって悪くない、と思う。
さっきだって、楓が行ってしまってどうしていいかわからないウチに、「とりあえず、何か話でもしないか? あそこでアイス売ってるみたいだし」と誘ってくれた。
良い奴だ。
たぶん、コイツに恋をしてしまったのは、間違いじゃなかった。
でも、それならなんで……ウチは、目の前にいる男ではなく、あんな生意気な後輩に惹かれていってしまったのだろう?
「どうした? アイス、溶けるぞ」
「っ! あ、ああ」
ふと気付いたら、燐斗がウチの顔を覗き込んで小首を傾げていた。
どうやら、思案に耽っているうちにぼーっとしてしまっていたらしい。
慌てて溶けかけのアイスにかぶりつく。
「ははっ」
「な、なに……?」
不意に、燐斗が笑っていることに気付いて、ウチは少し恥ずかしくなる。
何か、変なコトしただろうか?
「いや……お前も、そういう顔するんだなと思って」
「……え?」
「寂しそうな顔だよ」
「なっ!?」
嘘!? まさか、顔に出ていた?
頬を引きつらせるウチに対し、やはり燐斗は可笑しそうに含み笑いをしながら続けた。
「さっきの子、弟じゃないだろ?」
「えっ、あ……うん。気付いてたのか?」
「そりゃまあ、あんま似てないし。そりゃ、彼氏って言うにしてはちょっと違う感じはするけど……今の柚香の反応見てればわかるよ。それなりに、気になってるヤツなんだろ?」
かつて好きだった人からの、そんな言葉。
でも私は、不思議とその言葉が腑に落ちていた。
「……うん」
「だろうな。まあ、何にせよよかったよ」
「よかった?」
その言葉に、ウチは首を傾げる。
すると、燐斗は気恥ずかしげに頬を掻きながら、ぽつぽつと呟いた。
「お前、学校ではわりと一匹狼みたいなとこあるだろ? 悪い奴じゃないのに、寄せ付けないてゆーか……それでいろいろ損してるなと思ってたんだ。だからさ、どういう経緯かは知らないけど、素のお前と真正面から接して受け入れてくれる、アイツみたいなヤツがいて、よかったと思ってる」
「……あ」
そのとき、ウチはそれに気付いた。
どうして、あんな生意気な後輩に惹かれてしまったのか。もう一つの決定的な理由を。
ウチを見てくれて、素の自分を見せられる相手で、無理して自分を飾らなくてもその場にいることを許してくれる、そんな素朴で普通な安心感に惹かれていたんだ。
そして、それを気付かせてくれた燐斗が、初恋の相手でよかったと――心からそう思った。
「このあと、どうするんだ?」
アイスのコーンを口に放り込みながら、燐斗が聞いてくる。
「アイツのとこに戻る、かな。それで、姉を放り出すとは何事だ! って、怒鳴ってやる」
ウチは、白い歯を見せて笑いながら、燐斗に告げる。
「そうだな。……ああ、それと一応忠告しておくけど」
燐斗は不意に人の悪い笑みを浮かべると、
「アイツ……一見地味だけど、人との関わりを嫌うお前が気に入るくらいだ。ぼやぼやしてると、他のヤツにとられるぞ」
「そ、そそ、そんなわけないだろう? あのクソ生意気なヤツだぞ……アレに限ってそんな……」
胸の奥底から浮かんでくる動揺を覆い隠すように、ウチは答えて、そのとき脳裏にフラッシュバックする。
そういえば、アイツのいる文芸部には、メチャクチャ美人な1年生がいて、楓といかにも親しげにしていたことを。
「あ」
ごしゃっ。
思わず手に力が入り、ソフトクリームのコーンがワッフルコーンスリーブ(※コーンを包む紙)の中で粉々に砕けた。
どうしてこうなった?
ニャンニャンモール内のベンチに腰掛け、ソフトクリームをチビチビと食べながら、撃ちはもの思う。
ちらりと隣を見ると、隣には燐斗か座り、同じようにソフトクリームを食べている。
半ば一方的に楓が行ってしまい、残されたウチ達は2人で行動する運びとなった。
たぶん、気を遣ってくれた……のだと思う。
そうでなければ、ウチと燐斗を一緒にしておく理由がない。
あとは若いお二人で、などと自分の方が若いくせに思っていても何らおかしくはないのだ。
だから、ここは楓に感謝しなければいけない。
だけど……それはきっと、昨日までの自分なら、という話だ。
ウチは、改めて燐斗の――好きであったはずの人の横顔を見る。
すらっとした鼻筋に、愛嬌のある二重の瞼。細身ながら運動部らしく引き締まった身体をしていて――おまけに性格だって悪くない、と思う。
さっきだって、楓が行ってしまってどうしていいかわからないウチに、「とりあえず、何か話でもしないか? あそこでアイス売ってるみたいだし」と誘ってくれた。
良い奴だ。
たぶん、コイツに恋をしてしまったのは、間違いじゃなかった。
でも、それならなんで……ウチは、目の前にいる男ではなく、あんな生意気な後輩に惹かれていってしまったのだろう?
「どうした? アイス、溶けるぞ」
「っ! あ、ああ」
ふと気付いたら、燐斗がウチの顔を覗き込んで小首を傾げていた。
どうやら、思案に耽っているうちにぼーっとしてしまっていたらしい。
慌てて溶けかけのアイスにかぶりつく。
「ははっ」
「な、なに……?」
不意に、燐斗が笑っていることに気付いて、ウチは少し恥ずかしくなる。
何か、変なコトしただろうか?
「いや……お前も、そういう顔するんだなと思って」
「……え?」
「寂しそうな顔だよ」
「なっ!?」
嘘!? まさか、顔に出ていた?
頬を引きつらせるウチに対し、やはり燐斗は可笑しそうに含み笑いをしながら続けた。
「さっきの子、弟じゃないだろ?」
「えっ、あ……うん。気付いてたのか?」
「そりゃまあ、あんま似てないし。そりゃ、彼氏って言うにしてはちょっと違う感じはするけど……今の柚香の反応見てればわかるよ。それなりに、気になってるヤツなんだろ?」
かつて好きだった人からの、そんな言葉。
でも私は、不思議とその言葉が腑に落ちていた。
「……うん」
「だろうな。まあ、何にせよよかったよ」
「よかった?」
その言葉に、ウチは首を傾げる。
すると、燐斗は気恥ずかしげに頬を掻きながら、ぽつぽつと呟いた。
「お前、学校ではわりと一匹狼みたいなとこあるだろ? 悪い奴じゃないのに、寄せ付けないてゆーか……それでいろいろ損してるなと思ってたんだ。だからさ、どういう経緯かは知らないけど、素のお前と真正面から接して受け入れてくれる、アイツみたいなヤツがいて、よかったと思ってる」
「……あ」
そのとき、ウチはそれに気付いた。
どうして、あんな生意気な後輩に惹かれてしまったのか。もう一つの決定的な理由を。
ウチを見てくれて、素の自分を見せられる相手で、無理して自分を飾らなくてもその場にいることを許してくれる、そんな素朴で普通な安心感に惹かれていたんだ。
そして、それを気付かせてくれた燐斗が、初恋の相手でよかったと――心からそう思った。
「このあと、どうするんだ?」
アイスのコーンを口に放り込みながら、燐斗が聞いてくる。
「アイツのとこに戻る、かな。それで、姉を放り出すとは何事だ! って、怒鳴ってやる」
ウチは、白い歯を見せて笑いながら、燐斗に告げる。
「そうだな。……ああ、それと一応忠告しておくけど」
燐斗は不意に人の悪い笑みを浮かべると、
「アイツ……一見地味だけど、人との関わりを嫌うお前が気に入るくらいだ。ぼやぼやしてると、他のヤツにとられるぞ」
「そ、そそ、そんなわけないだろう? あのクソ生意気なヤツだぞ……アレに限ってそんな……」
胸の奥底から浮かんでくる動揺を覆い隠すように、ウチは答えて、そのとき脳裏にフラッシュバックする。
そういえば、アイツのいる文芸部には、メチャクチャ美人な1年生がいて、楓といかにも親しげにしていたことを。
「あ」
ごしゃっ。
思わず手に力が入り、ソフトクリームのコーンがワッフルコーンスリーブ(※コーンを包む紙)の中で粉々に砕けた。
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