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オリヴァーの昔話
オリヴァーがグランになった日・8
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オリヴァーがマルクを連れて、また下町の広場に駆けだして行ったのを見送りながら、部屋に残ってもらったアンドロに問いかけた。
「私とオリヴァーが、ここで暮らすことは出来るかしら」
そう問われたアンドロは、当然驚くと思っていた。
だが、先ほどのオリヴァーとのやりとりから。そんな相談をされるとなんとなく分かっていたのだろうアンドロは、冷静な口調で返してくれた。
「失礼ながら、それが、オリヴァー様のためになるとお思いですか?」
「……わからないわ。わからないからこそ、この目で確かめてみたいのです。オリヴァーにとって、どちらが良いのかを」
「…………」
「難しいこととは思います。そして、これが本当にオリヴァーであるかも、わかりません。もしかしたら、ほんの一時の珍しさに目を輝かせていただけかもしれません。だからこそ、それが知りたいのです」
「……仮に、ここでの生活がオリヴァー様にあっているとしたら、どうされるおつもりですか」
「…………」
「グランディア公爵閣下のお許しが得られるとも、思えません」
「……あの人には、アルバートがいます」
その時、自分がどんな目をしていたか、ロザリーは知らなった。
ただ、その眼が、アンドロの気持ちを動かすことになったらしい。
「……グランディア公爵閣下には、どうお伝えするつもりですか?」
「伝えないわ。……あの人がオリヴァーを追い出したのに、それなのに連れ戻すときまで勝手にするなんて……私は許さないわ」
息子に関する問題の許す許さないを、ロザリーが勝手に決めることではないだろう。そう、アンドロも言いたかったのだろ。
しかし、彼は言わなかった。
しばらく黙っていたが、やがて諦めたように項垂れて言った。
「とりあえず、何日様子を見るおつもりですか……?」
「……一週間……いえ、三日で良い。三日で良いから、あの子が自由を与えられた姿を、見てみたいの」
アンドロは何も言わないまま、頷いた。
これ以上他人の家の事情に立ち入るべきではないと判断したのか、単に諦めたのか、同意してくれたのか、ロザリーにはわからない。
だが、そのために協力をしてくれると申し出てくれたアンドロの提案を素直に感謝して、受け入れた。
***
三日のつもりであった、とロザリーは言うが、アンドロはそうはならないだろうと予感していた。
オリヴァーのこの町への馴染み方が、貴族とは思えないほど自然なものだった。
そしてそんなオリヴァーの様子を見て、『あのような表情を見せた』ロザリーが、素直にここを去ろうとはしないだろうとも、察したのだ。
それでも、やはり伝えないわけにはいかない。
他人の家庭の事情とは言うが、知っていてみすみす見逃すほどアンドロも無責任ではない。
ロザリーの気持ちを慮ってやりたい気持ちより、自分がすべきと考えたことをアンドロは優先し、事の仔細をグランディア公爵家に赴き伝えた。
クラウドはアンドロの話を聞き、ロザリーとオリヴァーの無事を知って安堵していた。
そして、三日だけ下町にとどまりたいと云う妻の気持ちを汲んでくれた。
三日分の滞在費をアンドロに託し、様子を見てはくれないかと頼まれた。
その様子と言葉に、クラウドは決してロザリーとオリヴァーを見捨てたわけではないということを知り、安堵した。
だから、その旨をロザリーに伝えてはどうかと提案したが、アンドロに裏切り行為をさせたと思わせても悪いと、クラウドはその提案を丁重に断った。
「ですが、あの様子では、夫人が素直に帰られるとは思いません」
そう伝えたが、クラウドはただひと言「妻の判断を信じる」とだけ返した。
「私とオリヴァーが、ここで暮らすことは出来るかしら」
そう問われたアンドロは、当然驚くと思っていた。
だが、先ほどのオリヴァーとのやりとりから。そんな相談をされるとなんとなく分かっていたのだろうアンドロは、冷静な口調で返してくれた。
「失礼ながら、それが、オリヴァー様のためになるとお思いですか?」
「……わからないわ。わからないからこそ、この目で確かめてみたいのです。オリヴァーにとって、どちらが良いのかを」
「…………」
「難しいこととは思います。そして、これが本当にオリヴァーであるかも、わかりません。もしかしたら、ほんの一時の珍しさに目を輝かせていただけかもしれません。だからこそ、それが知りたいのです」
「……仮に、ここでの生活がオリヴァー様にあっているとしたら、どうされるおつもりですか」
「…………」
「グランディア公爵閣下のお許しが得られるとも、思えません」
「……あの人には、アルバートがいます」
その時、自分がどんな目をしていたか、ロザリーは知らなった。
ただ、その眼が、アンドロの気持ちを動かすことになったらしい。
「……グランディア公爵閣下には、どうお伝えするつもりですか?」
「伝えないわ。……あの人がオリヴァーを追い出したのに、それなのに連れ戻すときまで勝手にするなんて……私は許さないわ」
息子に関する問題の許す許さないを、ロザリーが勝手に決めることではないだろう。そう、アンドロも言いたかったのだろ。
しかし、彼は言わなかった。
しばらく黙っていたが、やがて諦めたように項垂れて言った。
「とりあえず、何日様子を見るおつもりですか……?」
「……一週間……いえ、三日で良い。三日で良いから、あの子が自由を与えられた姿を、見てみたいの」
アンドロは何も言わないまま、頷いた。
これ以上他人の家の事情に立ち入るべきではないと判断したのか、単に諦めたのか、同意してくれたのか、ロザリーにはわからない。
だが、そのために協力をしてくれると申し出てくれたアンドロの提案を素直に感謝して、受け入れた。
***
三日のつもりであった、とロザリーは言うが、アンドロはそうはならないだろうと予感していた。
オリヴァーのこの町への馴染み方が、貴族とは思えないほど自然なものだった。
そしてそんなオリヴァーの様子を見て、『あのような表情を見せた』ロザリーが、素直にここを去ろうとはしないだろうとも、察したのだ。
それでも、やはり伝えないわけにはいかない。
他人の家庭の事情とは言うが、知っていてみすみす見逃すほどアンドロも無責任ではない。
ロザリーの気持ちを慮ってやりたい気持ちより、自分がすべきと考えたことをアンドロは優先し、事の仔細をグランディア公爵家に赴き伝えた。
クラウドはアンドロの話を聞き、ロザリーとオリヴァーの無事を知って安堵していた。
そして、三日だけ下町にとどまりたいと云う妻の気持ちを汲んでくれた。
三日分の滞在費をアンドロに託し、様子を見てはくれないかと頼まれた。
その様子と言葉に、クラウドは決してロザリーとオリヴァーを見捨てたわけではないということを知り、安堵した。
だから、その旨をロザリーに伝えてはどうかと提案したが、アンドロに裏切り行為をさせたと思わせても悪いと、クラウドはその提案を丁重に断った。
「ですが、あの様子では、夫人が素直に帰られるとは思いません」
そう伝えたが、クラウドはただひと言「妻の判断を信じる」とだけ返した。
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