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オリヴァーの昔話
オリヴァーとミレーの夜中会話・1
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「……ん……」
暗い部屋で目を覚まして見上げた天井は、いつもの天井ではなかった。
自分が身を預けている布団も、硬い粗末なものではなく、ふかふかとしていて、洗濯したての清潔感に溢れた香りがミレーの鼻に届く。
ここはクローバー家のミレーの部屋ではなく、グランディア家がミレーに与えた部屋だと思い出すまで少し時間を要し、その間しばらく困惑していた。
「……そうだった。グラン……じゃなかった。オリヴァーに、今日からここで暮らせって言われて……」
眠る前の日のことを思い出す。
下町に向かう途中の並木通りで暴漢に襲われていたところを、オリヴァーが助けてくれた。そして彼に保護をされ、暴漢にミレーを襲わせるよう指示を出したのが義妹のアリサ・クローバーではないかという疑いがあるため、その義妹の下に帰ることを懸念したオリヴァーが、ミレーの身柄をグランディア邸で預かると言ったのだ。
(そして……アリサと婚約を破棄して、私と婚姻を結ぶ……)
本当にそんなことが許されるのだろうか。自分もしっかりと義妹や父親と話をしたほうがいいのではないか、と意見をしたが「話が通じる相手なのか?」と訊ねられれば、ミレーはもう言い返すことが出来なくなってしまった。
話を聞く人たちであれば、ミレーはここまで追い詰められていないからだ。
ため息を吐いて、ミレーはゆっくりとベッドから降りた。
「いたっ……」
オリヴァーがぐるぐる巻きにしてくれた足が、わずかに傷んで顔をゆがめる。
日中はなんだかんだオリヴァーやカミラたちが支えてくれたおかげでそこまで痛くなかったのだと知った。一人の力で立とうとすると、こんなに痛い。
(思ったより……怪我していたんだ)
他人事のように思ってしまう。
いきなり普段の生活と、なにもかもかけ離れた生活をしているせいか、丸一日も経っていないのに気持ちは対岸の火事だ。
周囲を見渡す。
あたりはまだ夜のようだが、眠る前のことを思い出しているうちに、闇夜に眼が慣れてきた。
「……オリヴァーも、もう寝ているかな」
そもそも、どこがオリヴァーの部屋かも分からない。日中入った部屋すら、廊下に出てしまえばわからないほど部屋がたくさんあるのに、夜間ともなると、もう混乱しかないのではないだろうか。
危惧しながらも、ミレーは音をたてぬよう気をつけながら部屋を出た。
廊下は日中見るより広く感じられた。
その理由は。
「……キレイ」
外に面している大きな窓ガラスの数々から差し込む月光が、廊下の装飾品を照らしてキラキラと輝いていたのだ。
「わ、わッ……! まるで海中にいるみたい……ッ!」
つい、音をたてないように気をつけていたことも忘れて声を上げてしまった。
海中のような廊下に驚いていると、背後から「ぷっ」と吹き出すような声が聞こえた。
そちらにもひどく驚いて、しばらく反応できずにいた。
「オレもこの景色は好きだよ」
その声で、笑った主の正体がわかったから安堵できた。
暗い部屋で目を覚まして見上げた天井は、いつもの天井ではなかった。
自分が身を預けている布団も、硬い粗末なものではなく、ふかふかとしていて、洗濯したての清潔感に溢れた香りがミレーの鼻に届く。
ここはクローバー家のミレーの部屋ではなく、グランディア家がミレーに与えた部屋だと思い出すまで少し時間を要し、その間しばらく困惑していた。
「……そうだった。グラン……じゃなかった。オリヴァーに、今日からここで暮らせって言われて……」
眠る前の日のことを思い出す。
下町に向かう途中の並木通りで暴漢に襲われていたところを、オリヴァーが助けてくれた。そして彼に保護をされ、暴漢にミレーを襲わせるよう指示を出したのが義妹のアリサ・クローバーではないかという疑いがあるため、その義妹の下に帰ることを懸念したオリヴァーが、ミレーの身柄をグランディア邸で預かると言ったのだ。
(そして……アリサと婚約を破棄して、私と婚姻を結ぶ……)
本当にそんなことが許されるのだろうか。自分もしっかりと義妹や父親と話をしたほうがいいのではないか、と意見をしたが「話が通じる相手なのか?」と訊ねられれば、ミレーはもう言い返すことが出来なくなってしまった。
話を聞く人たちであれば、ミレーはここまで追い詰められていないからだ。
ため息を吐いて、ミレーはゆっくりとベッドから降りた。
「いたっ……」
オリヴァーがぐるぐる巻きにしてくれた足が、わずかに傷んで顔をゆがめる。
日中はなんだかんだオリヴァーやカミラたちが支えてくれたおかげでそこまで痛くなかったのだと知った。一人の力で立とうとすると、こんなに痛い。
(思ったより……怪我していたんだ)
他人事のように思ってしまう。
いきなり普段の生活と、なにもかもかけ離れた生活をしているせいか、丸一日も経っていないのに気持ちは対岸の火事だ。
周囲を見渡す。
あたりはまだ夜のようだが、眠る前のことを思い出しているうちに、闇夜に眼が慣れてきた。
「……オリヴァーも、もう寝ているかな」
そもそも、どこがオリヴァーの部屋かも分からない。日中入った部屋すら、廊下に出てしまえばわからないほど部屋がたくさんあるのに、夜間ともなると、もう混乱しかないのではないだろうか。
危惧しながらも、ミレーは音をたてぬよう気をつけながら部屋を出た。
廊下は日中見るより広く感じられた。
その理由は。
「……キレイ」
外に面している大きな窓ガラスの数々から差し込む月光が、廊下の装飾品を照らしてキラキラと輝いていたのだ。
「わ、わッ……! まるで海中にいるみたい……ッ!」
つい、音をたてないように気をつけていたことも忘れて声を上げてしまった。
海中のような廊下に驚いていると、背後から「ぷっ」と吹き出すような声が聞こえた。
そちらにもひどく驚いて、しばらく反応できずにいた。
「オレもこの景色は好きだよ」
その声で、笑った主の正体がわかったから安堵できた。
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