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第二章
さざ波 3
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【R18】
「ほら、こんなになっている」
「やっ……め…ろ」
着物の上から信二郎の大きな手のひらで胸を撫でまわされているうちに、ぞくぞくしたものが駆け上がって来た。
信二郎の指が忙しなく動き、すぐに布越しに俺の胸の尖りを見つけた。そこを痛い位ぎゅっと摘まれると、躰に感じるピリリとした刺激が堪らなく良かった。
「あうっ」
あぁ……俺は何故……こんな淫乱な躰になってしまったのか。男なのに……男に触られて疼くなんてありえなかったはずだ。
「夕凪はここ好きだったろう?」
「離せっ。君に……抱かれるわけにはいかない」
「くそっ! 何故そんなことを言う? 夕凪の初めてをもらったのは私なのに」
「……初めて」
「そうだよ。私が開いた躰だ。まさか……他の奴に許したのか」
やっぱり俺は以前君に抱かれたのか。やりきれない想いで見上げると、信二郎も切なく苦し気な表情を浮かべていた。
「確かめてやるっ」
それから一気に袂を割られて信二郎の手が乱暴に太腿に伸びて来た。もう片方の手は袷から地肌に這うように入り込んできて、尖り切った突起をきゅっと痛い位抓ねってきたので、腰がビクンっと跳びはねた。
「うっ」
それと同時に袂から侵入してきた指を、いきなり後ろの窄まりに入れられて、大きな呻き声をあげてしまった。
「あうっ、痛っ……くっ……駄目だ! 嫌だ! 」
「……こんなに綻んで……これはまるで昨日まで誰かに抱かれ続けた様な柔らかさじゃないか。まさか薫なのか。お前を抱いたのは……」
「何……?」
「くそっ! 他の男の痕跡なんて私が消してやる」
「あうっ」
一瞬、律矢さんのことが頭を過って行く。俺は一体どうしたらいいのだろう。
戸惑う中、信二郎の手は乱暴に着物をはぎ取っていく。その手には優しさが感じられず、まるで物のように扱われているようで、悲しみが込み上げてくる。
もう嫌だ。こんな風に自分の躰を勝手に奪われるのは! そう思って、必死に抵抗した。
「夕凪……思い出してくれよ、私が開かせた躰だったのに……何故なんだよ」
そのまま強引に足を左右に広げられ、その中央の恐怖で縮こまったものに信二郎が被り付いて来た途端、羞恥に躰が染まった。必死に信二郎の肩を押して逃げようともがくが、屈強な躰はびくともしない。
「嫌だっ! やめろっ」
「こんなに色づいて……いやらしい躰になったな」
ひどい言い方だ。それでも信二郎が巧みに舐めあげれば、緩やかに立ち上がっていく己の欲望が恥ずかしくて、目をぎゅっとつぶった。一方的に躰を辱しめられることに耐え切れずに、目を閉じて暗黒の世界を彷徨うと、何故か…頭の中に花弁の残像のようなものが浮かんで来た。
以前……桜の花弁が舞う中で、こんなことをされたような……
それは酷く恥ずかしく、ひどく気持ちよく。
揺れる躰、揺れる影。
あの日もそうだ……桜吹雪の中、俺は信二郎に外でこんなことをされていた。
(いやだっ!もう……駄目…で…でちゃう)
俺は、信二郎の肩に手をつき、頭を横に振ってその快楽から逃れようと必死だった。顎を反らせて空を見上げれば、銀色に輝く月のもと、 まるでこれは現実の時間ではないかのように、桜の花びらがふわふわと風に舞っていたではないか。
「はぅ…あ…もぅもぅ…信二郎っ」
(はぅ…あ…もぅもぅ…信二郎っ)
あの日と今の……声が重なる。
あの時と同じように、信二郎の口淫によって極限まで高められた俺は、背中にぞくりとした快楽が走ったかと思うと、 そのまま信二郎の口の中に白濁としたものを放ってしまった。
ゴクリ──
信二郎の喉が鳴った。
「信二郎……馬鹿。飲むなよ。そんなもの……」
もう……もう涙で霞んで信二郎の顔もろくに見えない状態になっていた。
「………信二郎はいつも俺を勝手に抱く……」
「おいっもしかして夕凪、私のことを思い出してくれたのか」
「あぁ……お前はあの日も俺を抱いたな。桜吹雪が舞う路地で……こんな風に」
「うっ……」
はっとした。この男が泣くなんて……信二郎の目には、うっすらと涙が浮かんでいた。そして嬉しそうに慈しむ様に俺を見下ろして、何度も何度も髪をなでてくれた。
「夕凪……良かった。私の夕凪が戻って来たのだな」
「……信二郎。実は……俺は今まで」
「今は余計なことを言うな」
「だが……」
「言うなっ」
告げようとする言葉を聞きたくないのか、遮るように信二郎が唇をちゅっと合わせて来た。仄かに苦い口づけに若干戸惑いながらも、あの日と同じように興奮し脱力した躰を信二郎が抱きしめてくれるのに身を任せた。
俺は……確かに思い出した。
そして今また信二郎に抱かれることになった。
果たして本当にこの胸の中に、戻って来てよかったのか。
あんなに慈しんでくれた律矢さんとのことを、どうしたらいいのか。
この先のことを考えると胸が塞がる想いで、唇を噛みしめた。
「ほら、こんなになっている」
「やっ……め…ろ」
着物の上から信二郎の大きな手のひらで胸を撫でまわされているうちに、ぞくぞくしたものが駆け上がって来た。
信二郎の指が忙しなく動き、すぐに布越しに俺の胸の尖りを見つけた。そこを痛い位ぎゅっと摘まれると、躰に感じるピリリとした刺激が堪らなく良かった。
「あうっ」
あぁ……俺は何故……こんな淫乱な躰になってしまったのか。男なのに……男に触られて疼くなんてありえなかったはずだ。
「夕凪はここ好きだったろう?」
「離せっ。君に……抱かれるわけにはいかない」
「くそっ! 何故そんなことを言う? 夕凪の初めてをもらったのは私なのに」
「……初めて」
「そうだよ。私が開いた躰だ。まさか……他の奴に許したのか」
やっぱり俺は以前君に抱かれたのか。やりきれない想いで見上げると、信二郎も切なく苦し気な表情を浮かべていた。
「確かめてやるっ」
それから一気に袂を割られて信二郎の手が乱暴に太腿に伸びて来た。もう片方の手は袷から地肌に這うように入り込んできて、尖り切った突起をきゅっと痛い位抓ねってきたので、腰がビクンっと跳びはねた。
「うっ」
それと同時に袂から侵入してきた指を、いきなり後ろの窄まりに入れられて、大きな呻き声をあげてしまった。
「あうっ、痛っ……くっ……駄目だ! 嫌だ! 」
「……こんなに綻んで……これはまるで昨日まで誰かに抱かれ続けた様な柔らかさじゃないか。まさか薫なのか。お前を抱いたのは……」
「何……?」
「くそっ! 他の男の痕跡なんて私が消してやる」
「あうっ」
一瞬、律矢さんのことが頭を過って行く。俺は一体どうしたらいいのだろう。
戸惑う中、信二郎の手は乱暴に着物をはぎ取っていく。その手には優しさが感じられず、まるで物のように扱われているようで、悲しみが込み上げてくる。
もう嫌だ。こんな風に自分の躰を勝手に奪われるのは! そう思って、必死に抵抗した。
「夕凪……思い出してくれよ、私が開かせた躰だったのに……何故なんだよ」
そのまま強引に足を左右に広げられ、その中央の恐怖で縮こまったものに信二郎が被り付いて来た途端、羞恥に躰が染まった。必死に信二郎の肩を押して逃げようともがくが、屈強な躰はびくともしない。
「嫌だっ! やめろっ」
「こんなに色づいて……いやらしい躰になったな」
ひどい言い方だ。それでも信二郎が巧みに舐めあげれば、緩やかに立ち上がっていく己の欲望が恥ずかしくて、目をぎゅっとつぶった。一方的に躰を辱しめられることに耐え切れずに、目を閉じて暗黒の世界を彷徨うと、何故か…頭の中に花弁の残像のようなものが浮かんで来た。
以前……桜の花弁が舞う中で、こんなことをされたような……
それは酷く恥ずかしく、ひどく気持ちよく。
揺れる躰、揺れる影。
あの日もそうだ……桜吹雪の中、俺は信二郎に外でこんなことをされていた。
(いやだっ!もう……駄目…で…でちゃう)
俺は、信二郎の肩に手をつき、頭を横に振ってその快楽から逃れようと必死だった。顎を反らせて空を見上げれば、銀色に輝く月のもと、 まるでこれは現実の時間ではないかのように、桜の花びらがふわふわと風に舞っていたではないか。
「はぅ…あ…もぅもぅ…信二郎っ」
(はぅ…あ…もぅもぅ…信二郎っ)
あの日と今の……声が重なる。
あの時と同じように、信二郎の口淫によって極限まで高められた俺は、背中にぞくりとした快楽が走ったかと思うと、 そのまま信二郎の口の中に白濁としたものを放ってしまった。
ゴクリ──
信二郎の喉が鳴った。
「信二郎……馬鹿。飲むなよ。そんなもの……」
もう……もう涙で霞んで信二郎の顔もろくに見えない状態になっていた。
「………信二郎はいつも俺を勝手に抱く……」
「おいっもしかして夕凪、私のことを思い出してくれたのか」
「あぁ……お前はあの日も俺を抱いたな。桜吹雪が舞う路地で……こんな風に」
「うっ……」
はっとした。この男が泣くなんて……信二郎の目には、うっすらと涙が浮かんでいた。そして嬉しそうに慈しむ様に俺を見下ろして、何度も何度も髪をなでてくれた。
「夕凪……良かった。私の夕凪が戻って来たのだな」
「……信二郎。実は……俺は今まで」
「今は余計なことを言うな」
「だが……」
「言うなっ」
告げようとする言葉を聞きたくないのか、遮るように信二郎が唇をちゅっと合わせて来た。仄かに苦い口づけに若干戸惑いながらも、あの日と同じように興奮し脱力した躰を信二郎が抱きしめてくれるのに身を任せた。
俺は……確かに思い出した。
そして今また信二郎に抱かれることになった。
果たして本当にこの胸の中に、戻って来てよかったのか。
あんなに慈しんでくれた律矢さんとのことを、どうしたらいいのか。
この先のことを考えると胸が塞がる想いで、唇を噛みしめた。
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