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【三十三】宝田劇団の舞台合わせ稽古が始まった!

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 徳田康代は、静女を引き連れて織畑、姫乃、和泉と学園地下玄関で落ちあった。

『姫乃さん、おはよう御座います』
徳田と織畑は、上級生の姫乃に挨拶した。

「水景でいいから、おはよう」
「康代、今日も一日よろしくね」

 天女の静女と四人は大講堂に繋がる地下通路を歩いていると劇団員の人たちと遭遇した。
主役と助演の役者は、昨夜遅く空中浮遊タクシーで宿泊施設にチェックインしていた。

「姫乃さん、和泉さん、織畑さん、徳田さん、紹介するわ、宝田劇団の大スターよ」

「姫乃です、よろしくお願いします」
姫乃に続いて、和泉、織畑、徳田が挨拶した。

「主役の赤城麗華よ、よろしくね」
「助演役の大河原百合よ、よろしく」

 康代たちは、大スターの挨拶に緊張している。

「じゃあ、みなさん、今日は大ホールでリハーサルをします。
ーー今日を含めて、練習は二日のみです。
ーー明日が無いと思ってお願いしますね」

「赤城さんと、大河原さんは、劇団本部でリハしていますから、
ーー今日が合わせ稽古になります」

「じゃあ、みなさん、大ホールに移動しましょう。
ーー赤城さんと大河原さん以外は、楽屋亀になります。
ーー赤城さんと大河原さんは、楽屋鶴をお使いください」

 楽屋亀は、大部屋で、鶴はスター専用の個室だった。
神聖女学園大講堂は舞台公演も多く大ホールの楽屋がプロ使用になっている。
康代たちは、劇団員と同じ楽屋を共有した。

「徳田さん、織畑さん、舞台への協力をありがとうございます。
ーーお仕事がお忙しいのにこちらの都合で申し訳ない」
宝田劇団責任者が康代たちに詫びた。

『元々は、政府の幸せ政策の都合でのお願いですから
ーーお気になされないでください』
「そう言って頂けると助かります」

『今回は、臨時公演ですが、
ーー宝田劇団の舞台を全国の皆さんに配信して伝えたい。
ーー国民の疲弊した心に見る喜びを与えたいのです』

『たとえ短い時間であってもワクワクする時間は無駄にならないと思うの』
「徳田大統領は、国民思いだから、
ーー支援する私たちにもやり甲斐があります」

「あと僅かな日程ですが、ご一緒に頑張りましょう。
ーー招待席を残して本番当日の前売り券はすべて完売しています」

 招待席には、神聖女学園関係者が招待されている。


 学園理事長、陰陽師安晴美先生、田沼光博士、若宮咲苗助手ほかと神聖女学園の生徒だった。
本番公演は、三部制だったため、生徒たちは、三度入れ替えになる手筈となっている。

 康代、信美、水景、姫呼は、初めての大ホールでの舞台稽古に緊張した。
舞台では、赤城麗華と大河原百合の舞台稽古が始まっていた。


「みなさん、そろそろ、お昼よ、食堂に行きましょう」

 宝田劇団の団員と康代たちは、地下通路から校舎の学園食堂に向かった。
「徳田さん、お世話になりますね」

『いいえ、こちらがお世話になっていますから、当たり前ですわ』
『今日は、生徒会のゲストとしてご利用下さい』
「ありがとうございます」

 食堂の席は、豊下秀美が確保していた。
「康代さん、こちらです。みなさんも、こちらに、どうぞ」
『秀美、いつもありがとうね』

さすがに目立つ顔触れで女子高生たちが気付き始めた。

「ザワザワ・・・・・・」
「キャー」

「ええええええ・・・・・・」
「ねえ、ねえ、あの人、宝田の赤城さんじゃない」

「大河原さんもいるよ」
「すごいよね」

『赤城さん、うちの生徒たちが騒いですみません』
「徳田大統領、慣れているから構いませんわ」

 赤城は、その場で席の横に立ち上がった。

「宝田の赤城麗華です。
ーー神聖女学園の生徒さん、今日はリハーサルでお邪魔しています」

「七月五日に大講堂で公演しますので応援よろしくお願いします」
[パチ、パチ、パチ・・・・・・]

「大河原百合です。応援よろしくお願いしますね」
[パチ、パチ、パチ・・・・・・]

 女子高生たちは、突然の出来事に大騒ぎとなっていた。

明里光夏がサポートした。
「大統領補佐官の明里光夏です」
食堂は、拍手に包まれていた。
[パチ、パチ、パチ・・・・・・]

「赤城さん、大河原さん、ありがとうございます。
ーーお食事をお邪魔して申し訳ありません」

[パチ、パチ、パチ・・・・・・]


 康代たちが食堂を出ようとしていた頃、他のテーブルでインターネットニュースが話題になっていた。

「なんかニュース配信が電波ジャックされたみたいなのよ」
「私のも見れないわ・・・・・・」

「と言うより、画面が切り変わるのよ」
「そうそう、切り替わって黒猫の画像が表示されるの」

「毛並みがピカピカしていて滅茶苦茶可愛いのね」
「そしてさ、只今、メンテナンスしています。
ーーご迷惑をお掛けしますが表示されるだけなの」

秀美が、その女子生徒に近寄って尋ねた。

「お食事中、すみません。
ーーそのお話は、いつからですか」

「いつからかは、分かりませんが、さっき見たら見れ無かったの」
「ニュース全部ですか」

「いいえ、ほら、あのブラックストンのニュースよ」
「今、その画面を見せてもらえますか」
「いいわよ」

 秀美と康代は顔を見合わせた。
まさかとは、思っていたが、その黒猫は神使のセリエ様自身だった。

「お邪魔してありがとうね」
「まさかは起こるのでござるのよ」

『まぁ、神さまも茶目っけがあるのね初めて知ったわ』

 康代たち政府幹部のホログラム携帯ニュースは通常通り配信されている。
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