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【三十七】転生女子高生〜宝田劇団と鷲尾山観光

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 徳田康代大統領の【幸せ政策】の企画である、宝田劇団の臨時公演が無事に終えた翌日。
徳田康代、織畑信美、姫乃水景、和泉姫呼は、舞台監督の夜神紫依やがみしよりと鷲尾山に訪れていた。

 神聖女学園に隣接する神聖ショッピングセンターのリニアモノレール駅から僅かの時間で移動出来た。
時代は二十二世紀後半、百五十年前にあったケーブルカーの写真が鷲尾山駅のロビーに飾られている。


 赤城麗華と大河原百合は、先にモノレールで駅に到着して待っていた。

夜神が声を掛けた。
「赤城さん、お待たせしましたね」

「夜神さん、モノレールが空いていたので先に移動しました」
「麗華は、昔から変わらないのよ」
「百合だって、言える立場じゃないでしょう」

「おいおい、その辺にして、移動しようか」

「ここらも、近年、整備されて、山頂の展望がよくなったとか。
ーーしばらく、坂道が続くが、みんな大丈夫か?
ーーこの辺は、野鳥が多く気を引き締めてね。
ーームササビも多いからな」

「まあ、大丈夫よ」
「さすがに今日は暑いから熱中症に注意ね」

「明日は、七夕祭りだけど短冊を準備していないわ」
「七夕でござるな」

「今日、綺麗な空気をしこたま吸収して美容に役立てくれ」
『夜神監督、まるで学校の引率の先生ですね』
康代。

「徳田さん、ツアーガイドと言ってくれ」
宝田劇団の団員たちが笑った。

「昨日の舞台の大成功は、みんなのお陰で私も嬉しい」
「夜神さんは、お稽古とプライベートでは別人ですからね」

「赤城さん、私に別人はいませんよ」
「麗華に賛成です」

「でしょう、百合もそう思うわよね」


 宝田劇団の後方には、秀美と明里が手配したプロの撮影班が同行していた。
次のプロモーションビデオの映像の準備を後方と前方から撮影しいる。

 女学生の修学旅行の団体が頂上へ通じる狭い山道ですれ違う。

「ねえ、ねえ、あれ、赤城麗華よね」
「人違いじゃない」

「でも、撮影しているよ」
「サングラスと帽子でよく見えないわ」

「でもさ、隣にいる人、大河原百合だよ」
「あっ、本当だ!」

 大河原もサングラスと帽子だったが、華麗に見える淡いグリーンのワンピース姿が目立ってしまった。
宝田劇団の団員が慌てて左右前後を囲んだ。

 徳田康代大統領と織畑信美首相にも幕府の女子高生警備が付き添っている。
側近の天宮静女あまみやしずめは康代の隣にいた。


 康代たちが鷲尾山の展望台に到着した頃、
ーー明里光夏と豊下秀美は、インターネット配信の最終チェックを終えた。

 前畑利恵副大統領は、生徒会執務室で留守を受け持っていた。
ーー青い大きなソファに腰掛けてカーテン越しに窓の外を眺めていた。

 陰陽師の安甲晴美は、
ーー神聖神社の社務所で田沼博士と若宮咲苗助手と雑談している。


 五月以来、永畑町の火山は小康状態を維持しているが、時より大穴から蒸気を高く噴出していた。
ゴーストタウン化した街に人影はない。
街の主要機関の移転は六月中に移転完了していた。

「康代、展望台でござるな」
『静女、嬉しそうね』

「康代の側近でござるから仕事でござるよー」
『そうね、仕事よね』

「康代、あれは、何でござるかな」
『何か変ね』

「徳田さん、元の都心方向かしら、白い煙が上がっていますね」
夜神だった。

『夜神さん、ここは大丈夫ですから心配ないわ』

『ただ、お帰りになる時は、元都心部に近寄らないようにお願いしますね。
ーー東都は、元都心部を行政区域から既に除外しています』
「徳田さん、ありがとうございます」


『夜神さんたちは、あとどれくらい、
ーー神聖学園都市に滞在されますか?』
「予定では、今日を含めて三日ですから、
ーー七月九日に東都を離れたいと思います」

『みなさんも、ご一緒ですか』
「劇団員も同じ予定ですが、
ーー赤城と大河原は、八日に戻るそうです」

『じゃあ、全員がいる最後の夜に宿泊棟の食堂で夕食会をしませんか』
「はい、徳田さんのお言葉に甘えて、よろしくお願いします」

『いえーー私からの感謝です』

『私は、ちょっと仕事を思い出して先に離れますが・・・・・・。
ーー織畑、姫乃、和泉は残しますので、
ーー分からないことがあれば聞いてください。
ーーでは、学園でお会いしましょう』

「徳田さん、ありがとうございます」

『じゃあ、信美、水景、姫呼、あとは、よろしくね』
「じゃあ、康代、あとでね」

 徳田康代大統領は、女子高生警備の半分の五名と静女を引き連れて学園の生徒会執務室に帰って行った。

「康代、もう帰るでござるか」
『静女がいたいのなら、いいのよ』

「静女は、康代の側近でござるからお供するでござるよ」
『じゃあ、用事済ませたら、カフェに行きましょうね』

「賛成でござる」


 織畑信美首相には、女子高生警備の半分の五名が付き添っていた。

「織畑さん、警備の半分が付き添っていますから、ご安心ください」
「いつも警備のみなさんには、お世話になります。申し訳ありません」

 真夏の日差しが強さを増していた。
残った宝田劇団の女優たちは日傘で身を隠した。

「夜神さん、暑くなったので、レストハウスで休憩しませんか」
「織畑さん、ありがとうございます。
ーーでも、この人数では」

「大丈夫ですよ。
ーースタッフが予約してありますので」
「本当に何から何までお世話になります」

「お世話になっているのは、
ーー私たち神聖女学園生徒会ですから心配ありませんわ」

「赤城さん、大河原さんもクリームソーダね」
「コーヒーフロートもいいわね。迷う」

 鷲尾山から、神聖学園都市に伸びるリニアモノレールと田園風景が見渡せた。

 織畑は、鷲尾山にも空中浮遊自動車の発着滑走路があるといいかなと考えた。
陽は、まだ高く夕方には遠い時間だった。
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