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【五十八】宝田劇団の移転計画でござるよー

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 徳田康代と夜神紫依は、ロビーの大きな白いソファに腰掛けていた。
傍には、豊下秀美とあとから来た、織畑信美がいる。

『移転の件は、豊下から昨夜知らされていますが』

「こちらの無理なお願いなので、電話だけじゃあと思って・・・・・・。
ーー この稲葉旅館に寄らせて頂きました」

「夜神さん、先日は、大変お世話になりました」
「織畑さん、元気そうで何よりですわ」

「それで、転居のスケジュールですが」

豊下が、明里のホログラム携帯に連絡した。
「夜神さん、そっちは明里が詳しいので、もうすぐ来ますから」
「豊下さん、悪いわね」

「こちらとしては・・・・・・。
ーー 生徒たちと団員を何回に分けて引っ越しを考えています」

『夜神さん、神聖学園都市には大きな発着滑走路もあって
ーー 転居は問題ありませんわ』
「徳田さんにそう言われると安心します」

「夜神さん、ご無沙汰してます。明里です」
「明里さん、その節は何かとお世話になりました」

「いいえ、頭を上げてください」

『明里さん、スケジュールですが夜神さんと話あってもらえますか』
「はい、じゃあ、夜神さん、スケジュールをお知らせ頂けますか」

「朝川は、七月中と言っていますが、多人数なので八月にズレ込みそうです」
「宝田劇団の生徒と劇団員の半分くらいを想定しています」

「生徒八十名と劇団員二組で百六十名を三回に分けてと考えています」
「なるほど、八十名ずつですね」

「残りの三組の二百四十名は箱物が完成するまで宝田の支部と考えていますが」
「じゃあ、全部で何人くらいですか」
「言いにくいのですが四百八十名とスタッフや幹部になります」

『明里、学園寮の空きは、どれくらいありますか』
「全部なら、ギリギリくらいになりそうですが・・・・・・」

「五棟目の茶色の棟は七百名が定員で運良く空いています」

『神聖女学園は、全部受け入れても問題ないわ。
ーー 明里、生徒から優先して、八十名を先ね』

「物があるとなると最低でも四日が必要ですが」

『生徒は七月中には間に合いそうね。
ーー でも残りの四百名には二十日が必要な計算ね』

「徳田さんのおっしゃる通りで八月二十日頃にズレ込みそうです」

『夜神さん、赤城さんと大河原さんの組を優先してください』
「朝川も、そのように申しています。
ーー 徳田さん、全部でいいんですか」

『宝田劇団が問題無ければですが、
ーー 但し、男子禁制ですが』

「徳田さん、宝田には、男性は一人もいませんから、ご安心ください」
『夜神さん、こちらに本部移転した後、支部は残されますか』

「今後の未来を考えれば、まだまだ必要な気がしますので」

『その辺は、夜神さんと朝川さんで決めてください。
ーー それより、お腹空きませんか?大浴場もありますし?』
「そうですが、私は、予約していませんし」

『大丈夫ですよ一名くらい。
ーー 私の部屋もありますし』
「徳田さんの好意に甘えさせて頂きますね」

『じゃ先ず宿の温泉に行きましょう』

 織畑信美、豊下秀美、明里光夏もうなずき温泉に向かった。



 前畑利恵と天女の天宮静女は喫茶室でお茶をしている。

「康代殿は、来ないでござるな」
「夜神さんと移転の打ち合わせらしいよ」
「忙しい方でござるな」

 豊下秀美が前畑を呼びに来た。
「前畑さん、お風呂ですよ」

「秀美、もうそんな時間なの」
「そうよ、そんな時間よ」

「拙者は、お風呂は苦手でござるよー」
「静女は必要ないわよね」

「お風呂は、必要ないでござるが、食事はるでござるよー」



 稲葉旅館の廊下では女子高生警備が徳田康代大統領の身辺を警護していた。
それとは別に、水戸藩、紀州藩、尾張藩の女子高生支部も応援部隊として警備している。
水戸藩の水上泉と尾張藩の尾上ゆかり、そして紀州藩の紀戸茜が警備に指示を出している。
徳田幕府の要請が優先されていた。

 安甲晴美臨時顧問が女子生徒を連れて大広間に向かう。
廊下の途中で康代たちとすれ違う。

「徳田さん、私たちは、先に大広間に行くわよ」
『先生、今夜は、宝田劇団の夜神さんとご一緒しますので、
ーー よろしくお願いします』

「分かったわ。じゃあ後でね」



 徳田、静女、織畑、前畑、豊下、明里、そして夜神は、遅れて大広間に入った。
『安甲先生、遅くなりました』
「徳田さん、こっちよ」
「夜神さんですね。こちらの席にどうぞ」

 仲居さんたちがお膳を整えて食事が並べられた。
「今夜は海老でござるよー」

 静女の薄い紫色の浴衣姿と紫色の長い髪が妖艶さを増している。
『静女の紫色の瞳がいつもよりキラキラしていない』
「康代殿、天女を揶揄からかうとばちが当たるでござるよー」

静女が笑う。

『そうね。静女の言う通りね』

 安甲晴美が急に立ち上がり話出した。
この大広間には神聖女学園の生徒と関係者しかいない。

「みんな聞いて、明日は朝から個人戦よ。
ーー 出る人は、今日はよく食べたら、寝ること。
ーー 出ない人は、勉強と思って自分のレベルの会場を見て学習してください。
ーー 先生からは、以上だけど食べ合わせに注意して自己管理してください」

 夜神が徳田に話掛ける。
「徳田さんも、出られるの」
『はい、B級の個人戦です』

「競技かるたは分からないけど、上もあるの」
『はいB級で優勝するとA級の大会に出場できます』

「優勝じゃないとダメなの」
『いいえ、準優勝を二回でも昇段できるから出れます』

「安甲先生は、高校生じゃないけど出れるの」
『今回の公式大会はちょっとだけ特殊なので問題ありませんわ』

「徳田さん、私も見学してもよろしいかしら」
『夜神さん、喜んで』
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